Frank M

総合商社勤務

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最近の記事

How emotions are madeを再読して(Lisa Feldman Barrett著)

Lisa Feldman Barretの"How emotions are made"を再読。 邦訳版「情動はこうしてつくられる」が日経の書評に取り上げられていて興味を持ち、Kindleで購入できないかチェックしたところ、原書の方がだいぶ安く手に入ることが分かったので、何とかなるかなと思い、ついつい手を出してしまったのが最初に読んだきっかけ。 この写真の通り恐らく脳を模したであろうカラフルな表紙と、冒頭から平易で親しみやすい文体で、専門外にも拘わらずどんどん読み進めるこ

    • アメリカ民主党支持者の苦悩

      アメリカの著名な心理学者、スティーブン・ピンカー氏が今日リツイートしていたAndrew Sullivanさんという方のブログ記事が目を惹いた。今のままでは民主党は選挙に負けてしまうというものである。以下要旨を纏めてみた。今のままでは民主党が選挙に勝つことは難しいという主旨であり、今米国内で起きつつある過激行動や極端な歴史観の見直しの動きに対しては、バイデン陣営は一線を画す姿勢が必要だという意見。 ジョージ・フロイト氏が殺害されたことをきっかけに米国全土に広まったBlack

      • THE IDEA OF THE BRAIN まとめ

        1.The Idea of The Brain。イギリスの動物学者Matthew Cobb氏の最新の著作に三か月ほど掛けて向かい合った。このNoteでは、この本の内容に沿って、脳研究の歴史について時系列的・テーマ別に整理し、脳について分かっていること・分かっていないことを明らかにしたい。 2.本書では、古代ギリシャ時代から現代に至るまで、人が自らの感覚や思考を司るもの(古代はそれが脳ではなく心臓だと思われていた)を、どのように考え理解しようとしてきたかということが、時代

        • The Room Where It Happened(ボルトン回顧録)を読んで

          一か月前に発売されて米国のみならず世界中で話題になった本著作。 ボルトンがこの本を上梓した動機は、ウクライナ疑惑に端を発したトランプ大統領に対する弾劾裁判で証言者として細切れの話をするのではなく、在任期間中に起きたことの全体像を細部に亘って語ることで、現米国大統領がウクライナ疑惑に限らず多くの局面で私利私欲の追求を最優先に考えており、これがいかに国益を損なっているかということを米国民に伝えることだと思われるが、本書全体を通じて、米国の外交はどうあるべきか、また職業外交官はど

        How emotions are madeを再読して(Lisa Feldman Barrett著)

          CRISPR(クリスパー)究極の遺伝子編集技術の発見(ジェニファー・ダウドナ著)を再読し、コロナ後の世界を考える

          究極の遺伝子編集技術として2012年に発表されたCRISPR-Cas9。発表されて間もない頃に一度読んでいたが、今般The Tangled Treeを読む中、人の遺伝子の8%がウイルス由来という件に既視感を覚え、そうだ、ダウドナの本に書いてあったなと思い出し再読してみた。 この技術が開発される前は、無害化したウイルスを運び屋として使う方法、即ち無害化ウイルスに遺伝子を搭載し、ターゲットに向け打ち込むという方法がメジャーだった。いわゆる遺伝子組み換えというものである。商業作物

          CRISPR(クリスパー)究極の遺伝子編集技術の発見(ジェニファー・ダウドナ著)を再読し、コロナ後の世界を考える

          生命の起源について今分かっていること The Tangled Tree - A Radical New History of Life by David Quammen

          邦訳は「生命の<系統樹>はからみあう」。書評などでよく紹介されているのは、「人の遺伝子のうち8%相当がウィルス由来」という衝撃的な一節だが、本書を読み終えるとこれに違和感が無くなる。コロナ危機の今、ウィルスを打倒すというスローガンを掲げる政治家も居るが、歴史的にみると人類とウィルスは共存してきただけではなく、人の進化の過程ではウィルスの遺伝子を取り込んでバージョンアップをしてきたという説が有力となっている(偶々本日の日経朝刊にも胎盤はウイルス由来との説が紹介されていた)。そも

          生命の起源について今分かっていること The Tangled Tree - A Radical New History of Life by David Quammen

          THE IDEA OF THE BRAIN- A HISTORY を読みながらコロナ危機の今に思うこと

          ある道の権威が語った話を、誰もが自明のものとして疑いなく信じる。そしてその考えを基に様々な思考が積み重ねられ、千年紀に亘って人々の思考の基盤となる。しかし、そもそもそのような話を権威本人は語ったのだろうか。前回紹介したように、人類は長い間、人の思考や感覚は脳からではなく、「アリストテレス曰く」心臓から来るものだと信じてきたが、このような誤解をもたらした張本人は、学術界往年の権威アリストテレスではなく、実は日本では全く無名のハリー・アッバスというイスラム世界の医学者ではないかと

          THE IDEA OF THE BRAIN- A HISTORY を読みながらコロナ危機の今に思うこと

          THE IDEA OF THE BRAIN- A HISTORY by Matthew Cobb (1. Heart)

          序章に続き、今回は第一章「Heart」の要旨を紹介する。 歴史上、人類は脳ではなく心臓こそが思考や感情を司る器官と考えてきた。 "Virtually all we know from prehistory and history suggests that for most of our past we have viewed the heart, not the brain, as the fundamental organ of thought and feeling

          THE IDEA OF THE BRAIN- A HISTORY by Matthew Cobb (1. Heart)

          THE HUMAN SWARM: How our societies arise, thrive and fall by Mark W. Moffett (Introduction)

          The Human Swarm、直訳すると「人間の群れ」。「社会」でなく「群れ」という表現を使うところにこの本のエッセンスがある。 冒頭、著者は、人類の歴史を振り返ると、社会に属することで一つの集団としてのイメージを強める一方、集団外の人を違うものとみなし、外国人のことを足で踏みつぶしても構わない虫けらのように蔑んできた("That foreigners might be considered contemptible enough to crush underfoot,

          THE HUMAN SWARM: How our societies arise, thrive and fall by Mark W. Moffett (Introduction)

          THE IDEA OF THE BRAIN- A HISTORY by Matthew Cobb (Introduction)

          冒頭、1669年、デンマークの解剖学者、Niolaus Stenoの引用から始まる。 The Brain being indeed a machine, we must not hope to find its artifice through other ways than those which are used to find the artifice of the other machines. It thus remains to do what we would

          THE IDEA OF THE BRAIN- A HISTORY by Matthew Cobb (Introduction)

          21 Lessons for the 21st Century

          今月発売されたハラリ教授の三作目。 過去二冊と異なり、現代社会が直面する個々の問題を章ごとに取り上げているので、通勤時間に読書の時間が限定される中、ランダムに気になった章を摘まみ読むことにした。 今日、読んだのはImmigration-移民を巡る議論について。 ハラリ教授曰く、移民問題が語られるとき、次の3つの問題が混在しているという。 1.移民の受入は、受入国の義務か、それとも厚意か? 2.受入国で移民は同化することが求められるのか、否か? 3.同化した移民は、いつ

          21 Lessons for the 21st Century

          Homo Deus(ホモ・デウス)要点

          原書を読んだ際に作成した要点メモです。 自分の理解を確かめるために作成したもので厳密なものではありませんが、 この本に興味を持たれた方にとって何らかの参考になれば幸いです。 読書後ですが、トランプ現象やシンギュラリティなど、 次々に世界で起きている不可解なことに対し、心の備えが出来たような気がしています。 1.人類(Homo Sapiens)は新たな課題に直面している。従来は「飢饉・疫病・戦争」が克服すべき課題だったが、科学革命以降、人類がこれらの課題を解決していった結果

          Homo Deus(ホモ・デウス)要点