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21 Lessons for the 21st Century

今月発売されたハラリ教授の三作目。

過去二冊と異なり、現代社会が直面する個々の問題を章ごとに取り上げているので、通勤時間に読書の時間が限定される中、ランダムに気になった章を摘まみ読むことにした。
今日、読んだのはImmigration-移民を巡る議論について。
ハラリ教授曰く、移民問題が語られるとき、次の3つの問題が混在しているという。

1.移民の受入は、受入国の義務か、それとも厚意か?

2.受入国で移民は同化することが求められるのか、否か?

3.同化した移民は、いつの日か受入国の国民として認められるのか、否か?

そして、最後に4番目の問題として、これら1-3の立場が実際に折り合うのだろうか、という問いである。

移民が問題になるのは、人種の違いではなく実は文化の違いだ、とハラリ教授はいう。人種のような生物学的な違いを強調してしまうと、好き嫌いの問題となり、議論が感情的となって埒が開かなくなるが、文化の違いと考えれば、相容れないところと、うまく共存できるところとを、区別した冷静な議論が出来るであろう、とのこと。

自分自身、アラブ首長国連邦という、民族の坩堝のような世界で駐在生活を送った際、様々な国の出身者と仕事をすることになった。そこでは、お互いの違いにFOCUSするのではなく、お互いに共通するところ、言ってみれば、共通の美学というものを見つけ出し、それを基に信頼関係を築いていくことで、新たな仕事を創り出すということを実体験した。

メディアではナショナリズムに傾く国が増えていることばかりが取り上げられるが、現代はいまだかつて無いほど、世界は一つに繋がり、共通の土台で議論が出来るようになってきている。移民問題が一足飛びに片付くことはないだろうが、ハラリ教授が行っているような問題提起を機に、健全な議論が進み、実行可能な策が次々に提起されていくことに期待したい。



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