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農薬を止めると作物は病気にならない!?~野菜は小さい方を選ぶといい(第3回)

こんにちは、フォレスト出版編集部の杉浦です。

前回は、書籍『野菜は小さい方を選びなさい』より、「肥料で野菜が不味くなる」「肥料をやめると作物の病気が減る」「肥料が虫食いの原因になる」というお話を紹介しました。

今回は、

「農薬を止めれば作物は病気にならない」
「葉っぱに水が病気の原因」

というお話です。

これまで当たり前だと思いこんできたことが、どんどんひっくり返っていきますね……。今回も、ポイントの箇所は太字にしています。それでは、詳しく見ていきましょう。

農薬を止めれば、作物は「病気にならない」

 誰でも野山の植物を見渡してみたことがあると思います。どの植物も元気に育ち、病気に罹っているような姿を見たことはほとんどないでしょう。たとえば野菜によくある「うどんこ病」。粉のような白い黴(かび)が生え、葉がどんどん萎れてくる病気です。黴なので、一度発生すると、まわりの植物全体に影響を与えます。そのため、栽培者はうどんこ病になると、慌てて消毒を始めざるを得ません。
 もっと怖いのが、青枯れ病のようなバクテリアによる疫病です。この病気に罹ると、今までどんなに元気に成長し、実をたわわに実らしていても、アッという間に葉が萎れ、枝が変色し、実がしぼんでいきます。この疫病が発生すると、正しい対処をしない限り畑の野菜は全滅することがあり、栽培者は戦々恐々の渦中に放り込まれます。しかし、こうした白い黴の生えた植物や、種を付けずに枯れていく植物は、自然界ではほとんど見かけないのです。これにはちゃんと理由があります。
 何度も書いていますが、植物はエンドファイト、いわゆる内生菌という微生物群と共生関係にあります。このエンドファイトには、黴とバクテリアの2種類があります。黴状のエンドファイトは毒素を作り出し、虫たちからの攻撃に備えます。バクテリア状のエンドファイトは、植物内部で植物の免疫力を高める力を与えています。それだけではなく、生育を促したり、さまざまな環境ストレスに対して耐性を高めたりし、植物の病気と闘ってくれています。
 これは人間が持っている腸内細菌ととても似ています。人間も腸内細菌が豊かであれば、病に罹ることが少なくなります。植物もエンドファイトを多く持つことで、病気から身を守っているのです。そのため、自然界の植物は、そうやすやすと病気に罹ったりはしないものなのです。

 では、なぜ、栽培されている野菜は病気になるのでしょうか。そのおもな原因は、農薬等の化学物質を作物に散布するからだといわれています。農薬はバクテリアも殺しますが、この時、植物と共生関係にあるエンドファイトも一緒に死滅させてしまうことがあります。このエンドファイトの死滅により、作物は病気への抵抗力を失い、弱々しい野菜になってしまうというわけです。つまり農薬をかければかけるほど、野菜は病気になっていくというジレンマに陥ってしまうということです。
 逆に言えば、作物を野山の植物と同じように、農薬も肥料も与えないで育てると、病気になることが減っていきます。作物が病気になってしまったら大変なことになるという思い込みが、病気を防ぐための防除と呼ばれる農薬散布を加速し、その農薬散布によって作物を守っていた微生物群までをも死滅させてしまい、結果的に他の病気を呼び込むことになるということです。
 虫食いに関しても、病気と同様のことが言えます。作物を大きく育てようと肥料を与えるから虫が来る、虫が来るから、虫を寄せ付けないために農薬を撒く、という悪循環に陥ってしまうのです。
 本来、虫と作物は共生関係にあります。虫は意味があって作物に寄ってきます。虫が来るから作物は育ち、だからこそ、本当ならば、虫は作物を全滅させるということはしないのです。全滅させてしまうと、自分たちの生命も危うくなるからです。おって詳しく書きますが、虫食いによって作物が全滅してしまうという思い込みが結果的に病気を増やし、そして本当に全滅への道を突き進んでしまうのです。

「葉っぱに水」が病気の原因

 無肥料栽培でも、作物が病気になることは確かにあります。黴が付いて葉が枯れていく病気や、根や茎が枯れていく病気もあります。それらの原因はさまざまですが、多くは微生物によるものです。ひとつは黴のような糸状菌、もうひとつは細菌、つまりバクテリアでしょう。バクテリアの多くは虫が媒介します。虫が野菜に付けば、疫病に罹ることが稀にあります。
 しかし、これらの病気を誰が作っているのかを考えたことがあるでしょうか。
 僕が無肥料栽培を行ってきた結論のひとつでもあるのですが、こうした病気は栽培者自身が生み出しています。
 そうは言ってもピンと来ないかもしれませんので、人間に置き換えてみます。人間が病気になる理由は、普段からの行動や、食べものが大きく関係します。たとえば風邪を引くのは、寒いところで肌が温まらない状態でいるからという場合が多いでしょう。生活習慣病も、普段から食べている食事や、運動不足等が関係しています。食品添加物の多い食事や、身体が処理しきれないほどの油分を含んだ食事、あるいは身体を冷やす糖分の多い食事をしていることで、病気は作られていきます。発がん性が疑われる食べものを食べ続けることも問題です。つまり、病気は人が作り出しているということです。
 生活スタイルを見直すと、病気になることは極端に減ります。いつも適切な服を着て、食事も適度な量を適度に食べ、食品添加物、糖分、油分をできるだけ減らしていくだけで、病気に罹ることは減ります。適切な運動を行うことも大事でしょう。
 人間の場合、特に、腸内細菌のバランスが狂うことが問題とされています。腸内細菌は食品添加物等の化学物質や農薬、医薬品等で減っていくといわれていますし、腸内を休ませない食べ方をするのも、腸内細菌を減らしてしまう原因です。腸内細菌が健康を守っているのに、その健康の味方を自ら殺してしまっているわけです。
 実は植物もまったく同じです。植物の健康を守っているのは、エンドファイト等の植物と共生している微生物たちであると説明しました。この微生物が減ると植物にバクテリア等が付着した時に、追い払うことができなくなります。このエンドファイトを減らす最大の原因は、農薬等の毒性の高い化学物質であるのも先に書いた通りです。農薬を撒けば撒くほど、植物はエンドファイト等の共生型の微生物が減り、自らの健康を守る術がなくなっていきます。つまり病気を作り出しているのは栽培者なのです。
 できるだけ農薬を使わないで野菜を育てていくと、植物は自らのエンドファイトを増やし、バクテリア等が付着しても追い払うことが可能になります。もちろん、虫も付かなくなります。エンドファイトは、虫食いが起きると、虫に対して効果のある毒物を生み出すことがあります。その毒物が生み出されると、虫たちはその作物を避けるようになり、結果的に虫によるバクテリアの付着が減るわけです。農薬を与えないことが、病気に罹らないために最適な方法であるということです。
 さらに、糸状菌等による、いわゆる黴系の病気もあります。うどんこ病等が代表的な例ですが、これらは何度も言うように、黴なわけです。もし、洋服や畳等を黴させたくないと思えば、ほとんどの人が風通しをよくして、部屋やタンスを乾燥させます。黴は乾燥に弱い微生物です。
 作物を育てる栽培者は、早く野菜を育てたいと思って、しょっちゅう水やりをします。毎日水やりする人もいるでしょう。しかし、本来、日本では雨の日は1年のうちに90~170日、平均でも120日しかありません。1週間のうち2日降るかどうかです。しかもパラッと降って終わりの日も多いものです。
 であるのにもかかわらず、野菜を育てる時、特にプランター等で育てる時は、朝起きるとまず水やりをします。しかもたっぷりと与えます。そうなると、土の表面はいつも濡れている状態です。土の表面が濡れているのですから、当然、その水が徐々に蒸発し、そのまわりは湿度が高まります。この湿度が黴の原因になります。
 もうおわかりかと思いますが、黴系の病気を作っているのは栽培者なのです。水やりを頻繁に行うのが問題なのです。僕らは乾土といって、植物の根は乾く瞬間が必ず必要だと言い続けています。土が乾くことで黴の繁殖を抑えるとともに、植物は水を求めて根を深く張り続けます。土は砂漠地帯でない限りは、30センチも掘れば必ず濡れているものです。植物はその水を求めて深く根を張ろうとしているのに、栽培者が簡単に水をあげてしまうので、根を伸ばすという行為を途中で止めてしまいます。
 よく考えてください。森のなかで雨が降ってくると木の下に逃げ込みますよね。それは、木の下には雨が降らないからです。植物は、根元には多くの水を必要としていません。むしろ、根元に水が多く注ぎ込まれると、その水が跳ね返って、植物の葉っぱの裏側を濡らしてしまいます。その時に、土壌表面に潜んでいた病原菌等のバクテリアが付着し、それが侵入して病気になっていくことがあるのです。
 栽培者が成長を早めようとして行う水やり。この水やりの回数や量が多いと、植物は必ず病気になります。病気の多くは、実は栽培者が作っているというわけです。
 本来は、土というのは裸にはなりません。下草が生えて、土の表面を守るものです。土に直射日光が当たらないように防御し、土の水分も蒸発しすぎないように守っています。適度に湿り気があり、適度に乾いている。そして雨は時々しか降らない状況で生きぬくことを覚えた植物に、水やりをしすぎると、植物は必ず病気になっていくのです。

※本稿は『野菜は小さい方を選びなさい』(岡本よりたか 著)より抜粋、一部編集を加えたものです

(Photo by Joanna Nix-Walkup on Unsplash)

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