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#375【ゲスト/編集者】雑誌「キネマ旬報」編集者から書籍編集者への転身

このnoteは2022年4月19日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。


老舗雑誌編集者から書籍編集者への経緯

土屋:フォレスト出版のパーソナリティを務める、土屋芳輝です。本日は編集部の森上さんと共にお伝えします。森上さん、どうぞよろしくお願いします。
 
森上:よろしくお願いします。
 
土屋:本日も素敵なスペシャルゲストをお招きしているのですが、フォレスト出版ではなく、他の出版社の編集者がゲストに来てくださっているということなんですよね?
 
森上:そうなんです。他の出版社で書籍の編集をされていて、ビジネス書とか、我々と同じようなジャンルもやられている、総合出版社と言っていいと思うんですが。お忙しいにも関わらずゲストにお越しいただきました。ありがとうございます。
 
土屋:ということで、本日のゲストはSBクリエイティブ学芸書籍・編集部の小倉碧さんです。小倉さん、本日はどうぞよろしくお願いします。
 
小倉:どうぞよろしくお願いいたします。SBクリエイティブの小倉です。
 
森上:よろしくお願いします。
 
土屋:さっそくなんですけれども、小倉さんのほうから簡単な自己紹介をお願いできますでしょうか。
 
小倉:はい。SBクリエイティブというソフトバンクグループの出版社で、フォレストさんでも出されているようなビジネス書、自己啓発書と、あとは新書を編集しております。今は新書をメインに軸足を置いていまして、年間に出す本の8割ぐらいは新書で、たまに単行本でビジネス書、自己啓発書を出すっていうかたちでやっております。SBクリエイティブに移籍して5年半ぐらい経つんですけど、その前はキネマ旬報社という、映画雑誌をやっていまして、元々は雑誌上がりの人間で、今作っているような新書とかビジネス書とか、いわゆる一般書と言われるような書籍を手がけるようになったのは、この会社に移籍してからなので、まだ5年ぐらいというかたちです。

土屋:ありがとうございます。さっそくいろいろと聞いていきたいなと思うんですけれども、まず森上さんは小倉さんとはどのようにお知り合いになったんでしょうか?
 
森上:そうですね。小倉さん、あれはお酒の席でしたよね?
 
小倉:そうでしたね。懐かしい(笑)。
 
森上:実はついこの前も久々に小倉さんに会ったんですけど、確か最初に会ったのは5年半ぐらい前ですかね?
 
小倉:5年半ぐらい前です。私がSBクリエイティブに入って間もない頃だったと思うんですけど。
 
森上:そうだ、そうだ。ある共通の著者さんの会合で小倉さんにはじめてお目目にかかって、そこからメッセンジャーとかでいろいろとやりとりはしていて、この前は結構久々でしたもんね?
 
小倉:本当に久しぶりでした。5年なんて、過ぎるのはあっという間だなって思いました。
 
森上:そうですよね。いやー、小倉さんはどんどんきれいになっているのに、僕は体の横幅がどんどん増えていったっていう感じで。
 
小倉:何をおっしゃいますか(笑)。
 
森上:先ほどおっしゃっていたことで、ちゃんと聞いたことがなかったんですけど、キネマ旬報さんって結構古い会社さんであり、雑誌じゃないですか。
 
小倉:そうですね。
 
森上:そうですよね。これ、映画館ファンなら誰でも知っているような……。僕も学生時代は毎月買ってチェックしていて、志らくさんの連載とかも昔はやっていたと思うんですけど、今もやっているのかな?
 
小倉:熱心な映画好きですね、森上さん。
 
森上:そうなんですよ。本当にそういう感じで、めっちゃ面白かったっていうのを記憶していて、僕も学生時代はあの会社に行きたいなと思っていたんですけど、誰もが入れるような出版社じゃないイメージがあるんですけど、どういう感じで小倉さんは入社されたんですか?
 
小倉:普通に正面玄関から入って新卒入社をしたんですけども、森上さんがおっしゃるように、出版業界って、特に編集職って新卒採用はあんまり業界全体としてはしていないじゃないですか。キネマ旬報社もご多分に漏れず、そんな感じだったんですけど、私の一つ前の代で入社した方が当時40代でしたので、20年ぶりの新卒採用だったのかな? で、運よく拾っていただくことができて。
 
森上:すごいな! そうですよね。あそこは新卒はずっと取ってなくて……。じゃあ、小倉さんのときにちょうど新卒を採用されていて。
 
小倉:そうだったんですよ。
 
森上:新卒採用は小倉さん1人ですか?
 
小倉:いえ。私の他に同期の女性が2人いました。
 
森上:じゃあ、3人ですか?
 
小倉:はい。
 
森上:そうだったんですね。かなり応募者はいたんじゃないかな? それは差し支えなければ何年になるんですかね?
 
小倉:2012年でした。で、約4年間おりました。
 
森上:そうですか。あそこの会社は雑誌がメインで、別冊とかを出しているイメージで、単行本もたまに出しているイメージで。
 
小倉:おっしゃるとおりです。そうです。
 
森上:小倉さんは雑誌メインでやっていたんですか?
 
小倉:私は雑誌を中心にやっていまして、4年いたうちの半分強は、レンタルビデオ屋さんが毎月自分のお店に新しいタイトルで何を仕入れるかを考えるときに参考にしている業界紙みたいなものがありまして、カタログみたいな業界紙なんですけど、それをやっていました。編集者と言いながら、記者みたいな。自分で取材もするし、原稿書きもするし、広告営業の窓口でもあるみたいな。あまり編集じゃないかもしれないですね。
 
森上:すごい。そんなことをやっていたんだ。
 
小倉:そうですね。やっていました。今でも誤字脱字にはすごく過敏に反応してしまうんですけど。カタログ誌の品番とか、お店さんが仕入れるときに絶対に間違いは許されないようなところがいっぱいあるような雑誌をやっていたので、それですごく肝を冷やす思い出もいろいろとあったりして、今でもトラウマとなって続いていますね。
 
森上:(笑)。いや、でもそれで校正力が鍛えられたというか。
 
小倉:もう気になってしょうがないみたいな。
 
森上:やばいな。俺が作った本なんてボロボロだからな(笑)。そうでしたか。
 
小倉:それを2年ちょっとやって、残りは「キネマ旬報」の編集でしたね。
 
森上:いわゆる本誌の編集。
 
小倉:そうです、そうです。ずっと雑誌をやっておりました。

「キネマ旬報」編集者時代の仕事内容

森上:本誌の編集って、それこそ名だたる映画評論家さんたちが映画のレビューとかを載せていますけど、それは原稿を依頼してっていう感じなんですか? それでいただいたものを編集していくというか。
 
小倉:そうですね。依頼をして書いていただいて編集するっていうのは、基本的にはそうなんですけど、ずっと「キネマ旬報」で書き続けてくださっている評論家の方とかもいらっしゃって、新規開拓というよりも、ルート営業的な仕事が中心だったと思っています。
 
森上:なるほど。いわゆる執筆者もだいたい決まっていて。
 
小倉:そうですね。
 
森上:なるほど。個人的な興味なんですけど、この映画についてはこの方にというのは、こっちがお願いできるものなのか、その評論家さんがご自身でこれをやりたいっておっしゃるのか、どっちの場合が多いんですか?
 
小倉:両方ありましたね。でもやっぱりずっと「キネマ旬報」で書いてくださっている方は「自分の看板はこれである」っていうのは、強く持っていらっしゃる方は多いと思いますので、その辺は結構気を遣うところはありました。
 
森上:そうですよね。めちゃめちゃ気を遣いそう。
 
小倉:この特集であの人に声をかけないことはあり得ないよねっていう。
 
森上:そうですよね。外せないというか、外したら粗相というか。読者をも裏切ってしまうような責任感というかね。
 
小倉:ですね。
 
森上:そうだったんですね。
 
小倉:なので、今のこの会社に移籍して、ビジネス書とか新書を作らせていただいて、いわゆる実用書と言われるような本を中心に手掛けていて、実用書の他社の編集の方とお会いして、お話したりするんですけど、実用書じゃない版元から移籍してっていう人はいらっしゃらなくて、珍しがられますね。
 
森上:そうですか。でも、著者さんというか寄稿者に対しての依頼とか、コミュニケーションというのは、著者の開拓とか、そういったところにも同じ様につながりますよね。ノウハウはね。
 
小倉:そうですね。そうかもしれません。
 
森上:でも、雑誌だとどうしても編集長の本というイメージだけど、単行本になると1冊1冊の編集長は自分だから。
 
小倉:まさにそうですね。

SBクリエイティブの編集体制と企画決定プロセス

森上:そこはまたいいですよね。そしてSBクリエイティブさんの話に移っていきたいんですけど、小倉さんが所属している学芸の編集部は何人ぐらいいらっしゃるんですか?
 
小倉:学芸書籍編集部という、すごく厳めしい名前の部署なんですけど。
 
森上:厳めしい(笑)。
 
小倉:厳めしいんですけど、あんまり学芸感のある本は作っていなくて、さっき申し上げたビジネス書と新書を作っているチームです。全体で今15人強おりまして、その中で主に新書を中心に作るメンバーが半分ぐらいと、主にビジネス書とか単行本をメインに作る人たちが残り半分という、ゆるやかな2チーム体制みたいな感じになっております。
 
森上:学芸編集部の中で、2つのチームがあるっていう感じなんですね。
 
小倉:そうなんです。
 
森上:じゃあ、逆に学芸編集部以外の○○編集部というのも別にあったりするんですか?
 
小倉:はい。いろいろとありまして、うちが元から得意にしているIT系とかPC関連の本を作っている編集部ですとか。
 
森上:そうだ! 専門書がありますもんね。
 
小倉:はい。それはうちが長らく作っているジャンルの本で。あとは、ライトノベルの編集部とかもあります。
 
森上:ライトノベルもやっているんだ。
 
小倉:そうなんです。GA文庫っていうレーベルがありまして、それはうちから出させていただいています。
 
森上:じゃあ、大きく分けてだいたい3つって感じですか?
 
小倉:大きくはそうですね。
 
森上:そうですか。先ほどチラッとお話がありましたが新書とかがメインとなると、だいたい年間で何冊ぐらいやっているんですか?
 
小倉:年間で8冊ぐらいでしょうか?
 
森上:そうですか。そのうちの6、7割が新書で?
 
小倉:そうですね。
 
森上:なるほどね。例えば、この企画は新書のほうがいいとか、この企画は単行本のほうがいいとかって何か基準があったりするんですか?
 
小倉:基準はあると思っていまして、大雑把に言うと、単行本は目的買いのお客様が多い。新書は衝動的にドキッとした本を買うっていう感じかなと思っています。なので、新書の方がより読者が内心思っていることを代弁したりだ、フラストレーションに感じていることに対してすっきり感を与えたり、危機感を強く持ってもらえるようなタイトルとか、カバー周り、表1の成形は重要かなと思っていますね。
 
森上:なるほどね。うちも新書のレーベルは持っているんですけど、御社のようにたくさんは出していないんですけど、新書ってどちらかといえば、本の寿命が短いイメージなんですけど、そんな感じはあります?
 
小倉:それはそうですね。今タイムリーのトピックっていうのはやっぱり新書らしい代表的なテーマになってくると思います。
 
森上:やっぱりそうですよね。そういう傾向ってありますよね。単行本より新書のほうがトピック的にいいよねっていう。
 
小倉:そうですね。

企画会議は毎週開催

森上:なるほどね。企画ってどうやって決まったりするんですか?
 
小倉:企画の決まり方っていうのは、どんなふうにお答えするといいでしょうか?
 
森上:会議とかあります?
 
小倉:会議はありますね。二段階の会議を経て、決済というかたちになるんですけども、一回目はそれぞれのチーム、単行本チーム、新書チームでの編集会議がありまして、OKとなれば二段階目の弊社の社長だとか部門長だとかが集まっている中でプレゼンをして、そこでOKをもらうことができたら、うちの会社として決済が下りたと。
 
森上:なるほど。
 
小倉:結構他社さんのお話を聞いているともっと回数が多い会社さんもありますから、三回とか四回とか聞くとすごく大変だなと、うちは割と回数が少ないのかもしれません。
 
森上:なるほど、なるほど。一回目から二回目に上げるかどうかって、だいたいはその場で決まる感じなんですか?
 
小倉:そうですね。
 
森上:なるほどね。そういう感じなんだ。うちの場合はこのVoicyでも何回かはお話をしているんですけど、三回あって、一回目が編集者同士で、これはどっちかというと建設的な会議で、落とす、落とさないじゃなくて、こうした方がよくなるというような会議で、二次会議が営業との会議なんですよ。そこが一番バチバチになるんですよ。
 
小倉:営業の方との会議もあるんですね。
 
森上:そうなんです。そこが一番の山という感じで。だから、一次から二次は楽なんだけど、二次が一番大変で、三次は経営会議で、どちらかというともう二次が通っているので、三次は承認会議ではありますね。まあ、各社いろいろとありますよね。
 
小倉:なるほど。さまざまですね。
 
森上:この会議は頻繁にやられるんですか?
 
小倉:会議の回数は多い方だと思っていて。今、申し上げた二段階の会議は、それぞれ毎週やっています。結構月に一回の版元さんのお話も聞くので……。
 
森上:そうですよね。うちは月に二回なんですけど、毎回企画を提出しないといけないんですか?
 
小倉:それはないんですよ。
 
森上:よかった。それはないんだ。なるほど。
 
小倉:そうなんですよ。おそらく月に一回とか二回だったりすると、必ず全員出さなきゃいけないとかだと思うんですけど、うちはないんです。
 
森上:そうですか。逆に企画が通っていない人はずっと出していないと……、なかなか企画が通らないときついですもんね。
 
小倉:そうですね。

企画立案で心掛けていること

森上:あと、お聞きしたいのが、企画って人から考えるか、テーマから考えるか、大きく分けると二つのパターンがあったりするじゃないですか。小倉さんはどっちから考えることが多いですか?
 
小倉:私は、本来は企画を先に発想する人間なんです。テーマを考えて、表1を考えて、それを実際に具現化させるために、一番いい著者の先生は誰かなっていう順番で考える方なんですけど、今は新書をメインで担当させていただいておりまして、新書って全部が全部じゃないんですけど、おそらく単行本よりも誰が言っている意見なのか、著者が誰で、誰が言っているのかっていうところが単行本よりも比重が大きいと思っていまして。なので、新書をずっとやっていると、とある著者の方の本を担当させていただいて、この人の意見っていう色が強いので、必然的に次の企画を考える時は前にやらせていただいた同じ著者の方で、次の新刊の企画をやらせていただくとしたらどういうのがいいかなっていう。著者の方ありきでテーマを考えるっていうことが多くなるんですけど。ですが、自分がやっていて、落ち着くのは企画を先に考えるほうですね。
 
森上:そうですか。なるほどね。発想が雑誌っぽい感じがしますね。
 
小倉:そうかもしれないですね。

タイトルの決め方

森上:なるほどね。勉強になるな。タイトルに関してはタイトル会議とかあるんですか?
 
小倉:タイトル会議はございますね。編集長と担当編集で、一対一でミーティングをします。
 
森上:そうなんだ。営業が絡まないで決まっちゃうんですね。
 
小倉:営業にも相談をするプロセスもあるんですけど、まずデザインのラフがあがってきて、編集担当と編集長との間ですり合わせて、どういう方向で行くのかという大きな方向性を決めると。で、その後にデザイナーさんとのやりとりの中でラフを微調整していくと。その調整の段階で、営業部とかの意見も聞いて、最終形態にしていくっていう。
 
森上:すごい。じゃあ、カバーラフはめちゃめちゃ早く作っちゃう感じですか?
 
小倉:いや、そうでもないんですよ。それはもう必死な想いをしているんです(笑)。
 
森上:(笑)。
 
小倉:今、申し上げたやり方の割には遅いです。
 
森上:そうなんですね(笑)。バタバタとやる感じなんですね。
 
小倉:速いに越したことはないと思っているんですけど……。
 
森上:そうなんですよね。毎回、僕もそうです。
 
小倉:結局、最後の最後になりますよね(笑)。
 
森上:バタバタでね(笑)。一番大事なのにね。いやー、その感覚はわかります。どこも一緒なんだな……。土屋さん、こんな感じなんですけど。
 
土屋:はい。ありがとうございます。本当に社外秘レベルの貴重なお話までいろいろ聞けて、とても勉強になりました。小倉さんが担当されたおすすめの本として、『会社四季報の達人が教える 誰も知らない超優良企業』『アメリカの高校生が学んでいる経済の教室』の二冊があるということなんですよね。

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小倉:はい。
 
森上:そうなんですよね。これについていろいろとお聞きしたいんですけど、これは両方とも単行本ですか?
 
小倉:『会社四季報の達人が教える 誰も知らない超優良企業』は新書で、『アメリカの高校生が学んでいる経済の教室』は単行本です。
 
森上:そうですか。まだいろいろとお聞きしたいんですけど、お時間が来てしまったので。
 
土屋:そうですね。ちょっとお時間が来てしまったので、この本については明日改めて詳しくお聞きしたいと思います。この本のアマゾンのURLを貼っておきますので、タイトルを聞いただけで気になるという方は明日の放送前までにぜひチェックしてみていただければと思います。ということで、小倉さん、森上さん、本日はありがとうございました。明日もよろしくお願いします。
 
小倉:貴重な機会をありがとうございました。
 
森上:ありがとうございました。
 
(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)

 

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