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【速報レポート】「第30回北京国際ブックフェア(BIBF)2024」で見えたこと

こんにちは。
フォレスト出版の森上です。
 
2014年以降、弊社では毎年2月に台北(繁体字)5月にソウル(韓国語)8月に北京(簡体字)11月に東京で、それぞれの国際ブックフェアに足を運び(編集部メンバーが各国入れ替わりで担当)、弊社の刊行書籍の翻訳権を販売する商談に臨んでいます。
 
先週、私が「北京国際ブックフェア2024」(BIBF2024)に出向いて商談に臨み、今週日曜(23日)に帰国しました。個人的には2019年以来、5年ぶりの北京国際ブックフェアとなりました(2020年~2022年はコロナ禍で中止/昨年は弊社別メンバーが参加)。
 
今回のnoteでは、速報的に「北京国際ブックフェア2024」(BIBF2024)の状況をレポートしたいと思います。
 
「北京国際ブックフェア2024」の開催概要は下記のとおりです。
 
【ブックフェア名】
第30回北京国際図書博覧会(Beijing International Book Fair 2024)
 
【開催期間】
2024.6.19-6.23
 
【開催場所】
国家会議中心(CHINA NATIONAL CONVENTION CENTER)

「北京国際ブックフェア2024」の会場となった「国家会議中心」

宿泊しているホテル(北京の天安門近くの中心街)からタクシーで40分ほどかけて会場に到着。今回の会場は、5年前とは異なり、2008年に開催された北京オリンピックのメイン会場の近くで、オリンピックのシンボルタワーも見えます。

「北京国際ブックフェア2024」会場入り口付近から撮影

5年前の会場(新國展)は、北京国際空港方面で、北京市中心街からタクシーで1時間以上かかっていたので、今回は少し移動が楽でした。ただ、関係者の話によると、来年はもしかしたら違う会場になるかもとのこと。今回の会場は、5年前の会場に比べて、環境的にも施設的にも良かったので気に入ったのですが………。急な変更や法改正が日常茶飯事の中国という国ならではと言えるかもしれません。

緊急トラブル発生! 商談に使用する書籍見本が届かない!?

急な変更や手続きの大変さといえば、今回は中国ビザの取得に、かなり手間取りました。2019年のときには何事もなくスムーズに行けたのに、今回は、ビザ申請においてかなり細かい申請資料の提出が求められ、取得するのに約1カ月半近くかかりました。現地で会った日本の出版社の知り合いは、出発2日前のギリギリに取れたとのこと。これも、近年の国際情勢が不安定さ、特に米中関係の影響があるのかもしれません。
 
さて、今回の北京出張では、もう1つ大きなトラブルがありました。
 
今回の商談で使用する書籍見本の現物(61点)が中国の税関にひっかかり、宿泊ホテルに届かなかったのです。5年前は大丈夫だったのに……。
 
その原因は、61点の書籍を1梱包で手配したため、どうやら輸入商品としてとらえられてしまい、税関でひっかかってしまったようです。送付状にはしっかり「Sample」と明記していたにもかかわらず……。日本の他の出版社の担当者に聞いたところ、1梱包あたり10点程度にし、複数の梱包で送品すれば問題なく届くとのこと。今回であれば、10冊ずつで、6梱包に分けて発送すれば問題なかったわけです。現地に入ってからも、弊社の事務方のフォローをもらいながら、懸命な税関とのやりとりをしたものの、結局、現地に届くことがありませんでした。商談は、事前に用意していた本文PDFをPCで見せながらの対応となりました。来年以降は注意したいところです。

北京国際ブックフェアのライツセンターで行なわれていること

さて、話を戻します。
 
北京国際ブックフェアの場合、一般公開と出版業界関係者の商談は同時開催です。商談する場所は大きく2つに分かれます。
 
●自社で一般エリアでのブースを出展して、そのブース内で商談するパターン。
●一般来場者が入場できない、会場に設置された「ライツセンター」で商談するパターン。

 
弊社は、ライツセンターで事前予約した個室テーブルで商談するパターンです。

「北京国際ブックフェア2024」会場内ライツセンター入口。まわりに仕切られた個室テーブルが配置され、中に別途商談テーブルが設置されている。

中国の現地出版社とエージェントさんに、事前に設定した商談スケジュールに合わせて、弊社のテーブルにお越しいただき商談をします。
 
私も前日6月18日に北京入りをして、初日6月19日(水)10時~、各エージェント、出版社との商談を実施しました。

日本の出版社の出展・参加状況

ここからは、今回のブックフェアで感じた、日本と中国の出版の動向や傾向についてお伝えします。あくまで、私が現地のミーティングで見聞きしたり、感じた個人的な感想であることをご承知おきのうえ、読み進めていただけたら幸いです。
 
毎回、一般会場に設営されている日本の出版社のブースですが、5年前とあまり変わりない状況でした。ライツセンターは、弊社が予約していた個室テーブル以外に、十数か所に商談テーブルが配置され、連日、各社商談で盛り上がっていました。各国の国際ブックフェアでお目にかかる、各社顔見知りの方が多く参加しており、去年の台北国際ブックフェアのような寂しさはありませんでした。
 
中国は、人口の違いや経済状況の違いもあるのでしょうが、台湾や韓国に比べて、1件あたりの成約金額も大きいため、欧米出版社はもとより、日本の出版社も気合いが入っている印象です。

中国の読者が持っている関心事は? 引き合いのあったテーマやジャンル

毎年、中国の出版社や読者のニーズや傾向が変わります。昨年は見向きもしなかったテーマやジャンルが、翌年は引き合いが強かったりすることなんて毎度のこと。その変わりようは、日本以上に変わる印象です。
 
さて、今年の傾向は、健康関連書が強い引き合いがありました。以前は、中国はそもそも東洋医学が中心にあるため、西洋医学系の健康関連書に対しては敬遠がちでしたが(5年前までは間違いなくそうでした)、今年はまったく違い、糖尿病や高血圧、血糖値コントロールなどのアイテムに強い興味を示していました。
 
また、弊社の主力ジャンルであるビジネス系では、とにかく「日本で売れている書籍から優先的に紹介してほしい」という要望が顕著でした。今までも(5年前も)、日本での実績がある書籍の引き合いは強かったのですが、今年は特にその傾向が強いものがありました。日本の読者と中国の読者の関心事が、以前に比べて近くなっているのかもしれません。

上野千鶴子さんが中国で大人気

なお、弊社からは出ていないのですが、中国では数年前から、日本の女性学研究の第一人者である上野千鶴子さんの書籍に注目が集まっており、ベストセラーになっています。そのきっかけは、上野千鶴子さんが2019年東京大学入学式で行なった祝辞の動画です。

この動画が中国でも大きな反響があり、上野千鶴子さんが中国の若い女性たちから大きな支持を集めていると言います。主な支持層は、20~30代の高学歴女性とのこと。北京大学でのオンライン講演会には全国から聴講希望者が殺到するほどの人気だそうです。
 
私の個人的な勝手な解釈であることを前提にお話しすると、上野千鶴子さんが日本で一般社会に広く知れ渡りブームになったのが1980年代後半~90年代です。ちょうど日本のバブル経済が終焉を迎えた時期でもあります。ちょうど、現在の中国の経済状況(中国経済の停滞)と重なります。経済面を中心に調子の良かった時代を経て、これから先の成長への期待感や平等社会への行き詰まりを感じている今、何を求めるのか。そこは、日本人も中国人も同じなのかもしれません。日本は失われた20年、30年を経た今も、未だに先の見えない状況にありますが……。

以上、とりとめのない話になってしまいましたが、日本の出版社にとって、中国市場はやはり大きな存在です。編集者として著者さんと一生懸命生み出したコンテンツを、日本を超えて、中国、韓国、台湾、アジア諸国、そして欧米、英語圏に広げる足掛かりとして、この国際ブックフェアでの商談は、ますます重要になってくるとあらためて感じています。

▼Voicyの弊社公式チャンネルでも、「北京国際ブックフェア2024」についてトークしています。


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