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「客単価ビジネス」で陥りがちな落とし穴

こんにちは。
フォレスト出版編集部の森上です。
 
「客数ビジネス」から「客単価ビジネス」に転換するには、唯一無二のオリジナリティとクオリティ、そしてブランディングが求められることは、過去のnote記事でもお伝えした通りです。
 

さて、そんな「客単価ビジネス」を実施するうえで、始める前に知っておきたい、陥りがちな落とし穴がいくつか存在すると語るのは、コロナ禍に関係なく着実に利益を出し続けている、超話題の人気商品本格ボロネーゼ専門メーカー「BIGOLI(ビゴリ)」のオーナーにして、事業創出・業務改革コンサルタントの石川潤治さんです。
 
石川さんは、新刊『たった1つの商品で利益を上げる』の中で、「客単価ビジネス」で陥りがちな落とし穴をいくつか紹介しています。今回は、その一部を一部編集して公開します。

ギフト販売に選ばれないプレミアムリッチ商品は赤点

 ここからは、いよいよ具体的な商売展開に視点を転じていきましょう。現実的な状況として、プレミアムリッチ商品を開発・展開するにはいくつか注意すべき点があります。そこを疎かにすると、思わぬ落とし穴にはまってしまいます。
 私は、独自性の打ち出し方に悩む企業や飲食店からコンサルティングの依頼を数多くいただいていますが、商売スタート後に共通して陥りがちな罠があると気がつきました。本章ではその現場から得たノウハウの一部を紹介します。
 プレミアムリッチ商品ならではのリスクを紹介し、どのようにすれば落とし穴に落ちず、ブランドイメージを維持したまま展開していけるかを学んでください。
 日本民俗学の開拓者であり作家でもある柳田國男によって見いだされた日本人の伝統的な世界観の1つに「ハレとケ」というものがあります。
 ハレとは「晴れ」を語源にした言葉で、お祭りや年中行事などの「非日常」のことを表し、ケとは普段の生活である「日常」を表しています。衣装や食事、振る舞いや言葉遣いなどにおいて、ハレの日では日常であるケと区別する文化があります。
 高度経済成長以降、大量消費社会になった現代の日本においては、ハレとケの区別はかなり曖昧になりつつあります。それでも今日の私たちの生活においても「何かの記念日」や「自分へのご褒美」などの言葉に代表されるように、何かとイベントごとをするのが日本人は大好きです。
 典型的なもので言えば、お中元やお歳暮、バレンタイン・デーやホワイト・デーです。その起源はさまざまかもしれませんが、今や欠かせないイベントごととして私たちの日常に完全に溶け込んでいると言えるでしょう。
 このように、行事のたびに他人や自分に贈り物をするのが大好きな日本人の文化を、商品展開に生かさない手はありません。プレミアムリッチ商品は、ぜひともギフトで使えるレベルを目指すべきなのです。
 ギフトの条件は、「目上の人やお世話になっている人に渡しても恥ずかしくない商品」とでも表現できるでしょう。さらに前述した「ハレとケ」で考えると、ギフトはハレに該当するので、日常であるケとは違うスペシャルな品物であることが求められます。必然的に、常識の範囲内で高価格に設定しても特別感によって購入してもらえるため、高い利益率も確保できます。
 経営の安定につながるのはもちろんのこと、商品そのものが「ワンランク上の商品」や「喜ばれるギフトのテッパン」という地位を獲得できるメリットもあります。
 もちろん、贈られる側にとってもプレミアム感がある商品はもらってもうれしいでしょうし、贈った側の株が上がることも考えられます。「あの人、センスあるね」といううれしい評価にもつながります。
 このことからもわかるように、「そこにしかない価値ある商品」でギフト需要を狙っていくことは、日本でプレミアムリッチ商品を展開させていくときには欠かせない戦略なのです。

パッケージが三流だと、プレミアムリッチ商品も三流になる

 日本特有の文化の話をもう1つ紹介しましょう。それは「包む」ということについてです。
「包装」という漢字がありますが、それぞれの意味を分解すると、「包」という漢字は人間が身籠って胎内に胎児が宿っている形から来ているそうです。つまり、大切なものを守るという意味があります。
 一方「装」という漢字は「身なりを整える・飾る」という意味があるようです。
 包装という漢字は大事なものを守り、さらにそれを飾って整えることを意味しています。包装は単に実用的な機能だけではなく、大切な相手に贈るものを守って飾る目的があります。
 もうおわかりのように、どれほど素晴らしいプレミアムリッチ商品を作っても、それを包む外箱やケースが三流だと、中の商品もまた三流に見られてしまいます。
 海外の製品には、梱包の重要性について示唆に富んだ事例があります。
 典型的なものがiPhone です。一度でもiPhone を買ったことがある人ならわかると思いますが、ケースから取り出す時点ですでにプレミアムな体験が始まります。
 外箱を持ち上げてもすぐには動かず、スーッとゆっくりと滑るように数秒かけて開いていきます。外箱と内箱の密度が少なく設計されていることの証で、そこにはセンス・オブ・ワンダー(不思議な心理的感覚)があります。「箱を開ける」段階から、iPhone ワールドの体験がスタートしているようなものです。
 このように、プレミアムリッチ商品を開発する以上、中身だけではなく外見にもこだわるべきで、商品を手にした瞬間からトータルでブランドの世界観を演出すべきなのです。
 大事なのは、商品の機能やメリットという売り手側の思想ではなく、買う人のベネフィットを常に考慮すべきということです。
 プレミアムリッチ商品を買う人は、それなりの期待や覚悟を持って商品と対峙します。その気持ちに応えるべく、パッケージは見た目のデザインだけではなく、梱包素材そのものの質感にもこだわるべきです。
 ある程度ブランドを重視する商品であれば、商品開発はもちろんのこと、メッセージ性が高いPR戦略、自社ホームページの作り込み方、お客様との親密なコミュニケーション……などの商品周辺の工夫にも余念がないでしょう。それらが奏功したとして、最終ステージでお客様と接触するものがパッケージです。購入という段階は売り手側の目線では「完了段階」となりますが、お客様目線では真逆です。商品を購入してから、それらを使う生活が「スタート」するのです。
 購入までは力を注いでいたとしても、購入したお客様のファーストステップを疎かにするのは思いのほか罪深い行為です。期待を裏切った反動も加わり、手ひどい評価にもつながりかねません。
 つまり、パッケージで「あれ?」となってしまうだけで、ここまで築いてきたすべてのものが台無しになり、三流扱いされる事態を招くのです。
 プレミアムリッチ商品というブランドを包み込むなら、英語で言う「Packaging(製品の外装・包装をデザインし、作っていく一連の活動のこと)」として商品パッケージを考えていかなければなりません。
 これを私なりの言葉にすると、「ブランドの魂を包み込む観点で考える」ということになります。
 一例として、私の会社のBIGOLI のボロネーゼソースが入っている箱は四角柱で、化粧水のボトルが入っていそうなスタイリッシュな形状をしています。
 通常、レトルト製品はカレールウでもパスタソースでも平たい長方形の箱が一般的です。中身のレトルトパウチを収めるのに適した形だからです。
 ですが、そこにひと工夫してレトルトらしからぬ箱パッケージにするだけで、受け取った人は「おっ、何これ?」と驚くはずです。さらには箱の素材である紙はサトウキビの廃材で作ったバイオマス資源である「バガスパルプ」を使っています。プレミアムリッチ商品への想いを、余すところなくパッケージにまで反映させています。
 この素材は、実際に受け取って手に触れた人だけがわかる、不思議な質感があるのです。
「たかが外箱」ではありません。違いがわかる人にとっては「すごくしっかりとした商品だな」「自分の買い物は間違いではなかった」などと思ってもらえるのです。
 もちろんBIGOLI の商品だけでなく、世の中にはこのような「商品の外側までしっかり考え抜いた製品」がたくさんあります。
 まずはあなたが開発しようとしているものと近いプレミアム商品を、世の中で探してみてください。実際に自身で購入してパッケージを確認するのが確実ですが、素敵な包装であれば、ネットで画像検索するだけでもパッケージがヒットするはずです。
「いいな」と思えるパッケージがあれば、それをもとにデザイナーや外箱製作会社に依頼して、あなたの想いを形にしてもらえばいいのです。
 大事なのは「中身が一流なら外見も一流にすべき」という価値観です。さらに言えば「あなたの誇るプレミアム商品がまとうのにふさわしいお召し物を用意すべき」ということになります。

【著者プロフィール】
石川潤治(いしかわ・じゅんじ)

株式会社ジェイ・イシカワ 代表取締役社長。事業創出・業務改革コンサルタント。
1970年大阪府大阪市生まれ。学生時代に30種のアルバイトを経験。当時より、起業の夢を抱く。大学時代から起業したり会社員になったりを繰り返し、1999年、PCCW JAPAN(香港・通信事業者)に入社。ブロードバンド事業の創出をする新規事業開発室長を務める。2001年、株式会社ジェイ・イシカワを創業。自身が持つ特許(2002-320045)リース・管理および、事業創出コンサルの道を歩み始める。2002年、ワーナー・ブラザース・ジャパン(米国・映画メジャー)入社。部門のDX化を軸に業務改革を推し進め、クリエイティブシニアマネージャーを務める。2011年、株式会社ワールド(国内・アパレル)入社。業務改革推進本部・物流統括部長を務める。2016年、長年に渡るコンサルティングで軸としてきた「一点突破による売れない時代の売れる戦略」を具現化すべく、ボロネーゼ専門店ブランド「ビゴリ」を立ち上げ。ボロネーゼという単一メニューだけのフランチャイズで30店舗もの加盟店を有し、各大手メディアでも取り上げられる。現在、「中途半端を捨て一点突破」「ファンダムに不況なし」などをモットーに、40社を超えるさまざまな業界のコンサルティングを行なう傍らで、個人の方々に独立や転職を有利に進める実践的手法の勉強会を定期的に開催。社業理念は「スピード、柔軟性、一点突破力を発揮し、小よく大を制す」。

いかがでしたか?
 
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