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編集者が「本を売る」ためにやっていること

こんにちは。
フォレスト出版編集部の森上です。

書籍編集者の基本的な仕事は、企画を立てて、本をつくることです。ただ、出版社によって異なりますが、担当編集者が校了後、もしくは本づくり(編集業務)と並行して、本を売るために準備していること、やっていることがあります。

出版業界における最近の新しい取り組みとして、著者がクラウドファンディングを立ち上げて(編集者が裏で協力しながら)、事前に見込み読者を集めるといった活動を見聞きしたことがある方もいるでしょう。弊社ではまだやったことがないことですが……。

今回は、編集者が本づくり以外に、本を売るためにやっていること、「編集者による販促」についてお伝えします。なお、繰り返しますが、出版社によって異なります。ここでお伝えするのは、弊社の編集者の場合であることを踏まえて読み進めていただけたら幸いです。

■メディア献本

原始的な販促の1つとして多くの出版社が実施しているであろう、販促の定番「メディア献本」です。いわゆるパブリシティです。対象書籍にマッチするテレビ、新聞、雑誌をはじめとしたマスメディアに加えて、有力Webメディアインフルエンサー、著名人、書評ライターなどに献本します。

献本の際は、A4サイズ1枚に書籍情報をまとめたリリース原稿を同封するのが一般的です。リリース原稿は、書籍の内容や売りを一番理解している担当編集者が作成します。

■パネル・POPの作成

パネル・POPとは、書店店頭で使用する販促ツールです。

出版社によっては営業部がつくる場合もあるようですが、弊社では担当編集者がつくることが多いかもしれません(弊社でも営業部がつくる場合もあります)。書籍の売りとなるキャッチコピーやビジュアルなど考えながら、デザイナーとともに作成します。

■広告原稿の作成

広告といっても、新聞広告もあれば、ネット広告やSNS広告もあります。宣伝部がない弊社では、基本的に担当編集者がデザイナーとともに広告原稿を作成します。

ご承知のとおり、新聞広告の影響力は、ネット広告の勢いと比べると、正直厳しいことは否めませんが、出版業界ではまだ通用する広告媒体の1つです。特に、想定読者の対象年齢が比較的高めの書籍の場合、新聞広告は有効です。

出版社における新聞広告の目的は、大きく2つあります。1つは「エンドユーザーに向けての訴求」、もう1つは、書店さんや取次さんをはじめとする「業界内への訴求」です。業界内へのアピールは、出版社の書店営業が、書店さんに店頭での展開を広げてもらう材料の1つになります。

■プレスリリースの作成

法人契約を結んでいるPR会社などに、書籍の内容や売りを一番理解している担当編集者が作成したプレスリリース原稿を配信してもらったり、各メディアにパブリシティ営業をかけてもらいます。PR会社もさまざまで、テレビに強い会社、ネット媒体に強い会社など、各社特長があります。かかるPR予算もケースバイケース。対象書籍の販促予算によって、やれることが変わってきます。

■Webメディアへの原稿寄稿

月間PV数が3億を超えるWebメディアが存在する時代です。WebメディアがYahoo!ニュースなどの各ポータルサイトと連携していることもあり、取り上げられ方次第でSNSへの拡散も桁違いです。そのWebメディア向けに、担当編集者が書籍に関連する記事を作成、寄稿することも、年々重要になっています。また、書籍化を前提に、担当編集者からWebメディアに連載を持ちかけるケースもあります。

■書店イベント開催

これも多くの出版社が実施している販促の定番の1つです。営業部と書店さんの協力を得ながら、新刊が刊行されたタイミングで、書店のイベントスペースなどで著者の講演会やセミナーを実施します。イベント開催する書店で対象書籍を購入した方が無料で参加できるという場合が一般的です。イベント実施書店での実売が見込めます。

ただ、これはどんな著者でも実施できるわけではなく、集客力のある著者、すでに実績のある著者に限られます。編集者は、著者や営業部との交渉や事前段取りを組みます。

■著者主催イベントでの販売、配布チラシの作成

著者自身が主催するイベントで、書籍販売をさせていただくケースです。著者に割引価格で一定部数を事前に買っていただいた書籍を著者自身で販売していただく場合もあれば、300人以上の規模の大きいイベントであれば、出張販売するケースもあります。販売ではなく、イベントで配布してもらう新刊案内チラシを作成する場合もあります。


さて、ここまでは、編集者がやるかどうかは別として、他の出版社も実施している販促プランをお伝えしてきました。

弊社では、これら以外に、独自で実施している販促プランがあります。弊社デジタルメディア局(セミナー・教材などを開発・運営・販売を担う部署)のメンバーとともに、担当編集者が実施する書籍販促です。

■メルマガでの告知

弊社の書籍では、メールアドレスを登録していただいた方に、その書籍や著者に関連する特典を無料プレゼントしています(一部、特典なしの書籍もあり)。特典の内容は、特典用に書き下ろした原稿PDFや未公開原稿PDF、書籍に関連する動画や音声など、多岐にわたります。特典は、著者に用意してもらう場合もあれば、著者とともに編集者が新たに作成する場合もあります。

弊社では、登録していただいた読者の皆さんのメールアドレスを蓄積してリスト化。現在、書籍から登録されたリスト数は約17万件あります。その約17万件のリストに対して、新刊が出るタイミングで、担当編集者が作成した新刊の内容紹介をメルマガ配信します。過去に弊社書籍をご購入いただいた読者の皆さんに、新刊を認知、購入していただく意味で、効果的な販促となっています。

■書籍専用LP作成

すべての書籍で実施しているわけではないのですが、担当編集者がデザイナーとともに書籍専用のLP(ランディングページ)を作成する場合があります。新刊の内容や売り、特長を紹介するのはもちろん、本文の一部を無料公開したり、著者による新刊紹介動画など、その書籍に特化した特設ページを用意して、読者の皆さんに新刊書籍の内容をよりわかりやすく理解してもらうのが狙いです。

たとえば、こんなページです。

▼『なぜかうまくいく人の すごい無意識』(梯谷幸司・著)の専用LP ※発売後に作成の例


▼『一瞬で人生を変えるお金の秘密 happy money』(ken honda・著/本田健・訳)の専用LP ※発売前に作成の例

書籍専用LPは、先ほどお伝えしたメルマガから誘導するページとして活用したり、次に紹介する期間限定特典付きキャンペーンのLPとして活用する場合もあります。

■期間限定特典付きキャンペーン(SNS広告との連動含む)

先ほどお伝えした書籍専用LPを使って、特典を付けた期間限定キャンペーンを実施します。期間中に書籍を購入したことを証明してもらった方に、期間限定の特典をプレゼントするキャンペーンです。著者の協力を得ながら、編集者が特典(PDF、動画、音声など)を用意します。キャンペーン実施の告知は、先に紹介したメルマガでの告知のほか、予算があればFacebook広告をはじめとするSNS広告を活用して行ないます。

■noteの記事執筆

今までも各担当編集者が公式ブログで書籍に関連した記事を書いていたのですが、2020年4月20日より「note」を開始。土日祝日も含めて、編集者5名が日替わりで毎日執筆、更新しています。

書籍関連の記事は、「フォレスト出版立ち読みの本棚」というマガジンにまとめています。売り込みはできるだけなくし、1記事あたり必ず1つ以上の「学び」や「気づき」といった有益情報を盛り込んだ記事を執筆することを編集方針にしています。新刊、既刊問わず、読んでいただいた方に少しでもお役立ていただける記事づくりを目指しています。たまに、「note限定公開の原稿」や「期間限定で発売前の新刊の全文公開」といった特別記事も用意します。

■SNSでの発信

社内のSNSチームと連携して、書籍情報やイベント情報、パブリシティ情報などを発信しています。

弊社の公式SNS系メディアは、以下のとおりです。

【Twitter】(@forest_pub)

https://twitter.com/forest_pub

【Facebook】

【Instagram】

https://www.instagram.com/forest_pub_gallery/

【YouTube】

【note】

【LINE】※下記のQRコードからどうぞ

公式LINEQRコード


なお、明日11月16日(月)午前中に、新たなメディアでの情報発信がスタートします。明日の公式noteでも発表しますので、興味のある方はチェックしてみてください。

■出版記念セミナー・講演会開催

編集者が著者、弊社デジタルメディア局と連携して、新刊が刊行されたタイミングや新刊がベストセラーになったタイミングなどで、弊社主催の出版関連イベントを企画、実施します。規模は100~1000人以上までさまざまです。コロナ禍においては、オンラインで実施するケースも出てきています。当然ながら、書籍の実売につながりやすい機会になります。

■海外版権

本を売るといっても、国内ではなく、海外の出版社やエージェントに翻訳権を販売する活動です。多くの出版社にはライツ関連事業を行なっている部署や担当者がいますが、弊社では社内の編集者5名で、毎年持ち回りで現地のブックフェア(BF)などに参加して版権交渉に臨んでいます。

弊社は2016年から毎年、国内エージェントの協力を得ながら、台湾(台北BF/繁体字)、韓国(現地出版社との交渉/韓国語)、中国(北京BF/簡体字)の3カ国語を中心に、ベトナム語スペイン語英語などの翻訳権を販売する営業を実施しています。

海外向けの資料づくりやエージェントを介した商談スケジュール調整など、多くの負担があるものの、自分が編集担当した書籍が海外の言語で発売され、新たな読者に届けられると思うと、編集者として何にも代えがたい喜びを味わえる取り組みでもあります。また、各国の編集者やライツ担当者とコミュニケーションをとり、国を超えて同業者同士の親睦が深められるのも魅力的です。

残念ながら今年(2020年)は、新型コロナの影響で各国のブックフェアは軒並み中止となり、現地に足を運ぶことはできませんでしたが、急遽、オンライン商談に切り替えて実施。幸いにも、オンライン商談でも昨年と変わらない成約数が見込めそうです。

以上、「編集者が本を売るためにやっていること」をまとめてみましたが、最後に1つ書き残したことがあります。

それは、「神頼み」です(苦笑)。

書籍編集の端くれとして、こんなことを書いていいのかどうかわかりませんが、売れるかどうかは、結局のところ、出してみなければわかりません。

ただ、著者をはじめ、1冊の本が出来上がるまでには、多くの人がかかわっています。かかわっている人の覚悟や思い、知恵、知識、技術、時間、労力、お金などがギュッと込められて出来上がった1冊です。そんな作品を、商業出版である限り、一人でも多くの方に届けなければ何の意味もありません。

だからこそ、やれることは全部やる。

やれることをすべてやりきったときに初めて、「神頼み」ができる権利が得られるのかもしれません。

▼音声メディア「Voicy」でもどうぞ


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