my feeling

この場所では正直な自分でありたい

my feeling

この場所では正直な自分でありたい

マガジン

最近の記事

杉下に伝えたいこと

みんなが解散していく中、杉下だけは突っ立っていた。 脇腹を庇うように腕を回している。 「おい」 「あ?」 俺が近づくといつものように睨みつけられる。 「腹痛いんだろ?」 「…」 杉下はしばらく俺を睨み続けていたが、ようやく舌打ちをして口を開く。 「…痛い」 素直だった。 「ほらよ。保健室連れてってやる」 俺は杉下の腕をとり、自分の肩に回す。 ずっしりと体重がかかった。 やっぱデカいなこいつ… 「潰れるぞ、おまえ」 杉下を支えゆっくりと歩き出したけど、正直かなりキツい。 「る

    • さぼり常習犯

      授業開始のチャイムが鳴り、桜と蘇枋は後ろの扉から教室を出た。 「こらぁ!桜、蘇枋!サボってんじゃねぇ」 入れ違いで教室に先生がやって来る。 「やべっ、見つかった。蘇枋、走るぞ」 「うん」 オレと蘇枋は屋上に向かって駆け出す。 「待ちやがれえぇ」 廊下に先生の怒鳴り声が響いた。 「あ、杉下君もいるじゃん」 「なんでいるんだよ」 杉下は畑で水やりをしていた。 「やあ」 蘇枋と二人で近づくと、いつもの如く杉下に睨まれる。 「帰れ」 「あ?お前が出てけよ」 「まあまあ、俺たちはあ

      • ことはに意識されたい桜君

        ことはと1分間二人きりでお話しできる部屋にいます。 〜桜〜 「…っんだよ!そんな見つめて」 「いや…ほんと綺麗な目してるなあと思って」 「は?…きれぃって…そんなこと言うのお前くらいだぞ」 「そう?言わないだけでみんな思ってると思うけど」 「んなわけねぇだろ」 ことはは桜を見つめたままだ。 「…なんか言えよ」 「桜っていちいち反応可愛いよね。すぐ赤くなるし」 「あぁ?喧嘩売ってんのか。表出ろ」 「むり…まだ開かないし」 「チッ、何なんだよ」 桜は力なくしゃがみ込む。 「私と

        • どっちもどっち

          4限の予鈴が鳴った。 「蘇枋、サボるぞ」 椅子に座っている蘇枋を桜が引っ張る。 「え〜オレ今から授業受けるんだけど」 「いいから、来い」 桜は無理やり蘇枋を立たせようとする。 「桜さん、ダメです!蘇枋さんは渡しませんよ。サボるなら一人で行ってください」 「あ?」 蘇枋の反対の手を引っ張る楡井を、桜が睨みつける。 「こら、そんな怖い顔しないの」 蘇枋が桜の額にデコピンを食らわす。 「イッテぇな!何すんだよ」 「にれ君ごめんね。この子、かまってちゃんだから俺が付いててあげなきゃな

        杉下に伝えたいこと

        マガジン

        • イケはやさん
          0本

        記事

          似たもの同士

          「おら、蘇枋立て!自販機行くぞ」 「えー、一人で行ってよ」 「いいから行くぞ」 だるそうな顔の蘇枋を桜が椅子から引っ張り上げて立たせた。 「すおちゃん、行ってらっしゃーい」 「もうやだ…」 桜に引きずられようにして教室を出て行く蘇枋を、桐生は手を振って見送った。 「桜さん、最近蘇枋さんにわがままですね」 そばで様子を見ていた楡井が桐生に話しかける。 「すおちゃんってさっきみたいに嫌そうな顔する割になんだかんだ優しいから、結局桜ちゃんの言うこと聞いてあげるんだよねぇ。桜ちゃん

          似たもの同士

          蘇枋と海辺を歩く

          蘇枋と二人で海に来ていた。 波の音を聞きながら、好きな人と海辺を歩く。 それは桜の小さな夢でもあった。 そしてもう一つ、してみたいことがある。 蘇枋と手をつなぎたい チラッと横を見ると蘇枋と目が合う。 柔らかく笑う蘇枋がとても綺麗だった。 「ちょっと座ろうか」 蘇枋がサラサラの砂の上に腰を下ろすので、俺も隣に座った。 「風が気持ちいいね」 蘇枋は両手を砂につけて、目を閉じて風を感じている。 あぁ… 俺は自然と蘇枋に顔を近づけていたみたいで 「どうしたの?」 目を開けた蘇枋が

          蘇枋と海辺を歩く

          梅宮の本音

          休日、お墓参りに来ていた。 川辺でとってきた花を供え、お線香をあげた。 一通りやることが終わって伸びをしていると、前の方のとある墓の前に人が立っていて思わず声を上げた。 蘇枋? 私服だけど耳に付けているピアスですぐにわかった。 俺は近づいて蘇枋に声をかけようとしたが、咄嗟に口をつぐむ。 お墓にいるってことはそういうことだよな… 思いとどまってそのまま立ち去ろうとしたが、俺の足音に気づいた蘇枋はこっちを向いて歩いて来た。 「梅宮さん」 「よお」 穏やかに微笑む蘇枋に軽く手を振っ

          ありがとう桜

          休日、暇だったので街をぶらぶら歩いていた。 ん?あれ、ことはか? ポトスの近くまで来た時、ことはらしい人物が電柱の後ろに隠れていた。 前方を見ると、ポトスの前で男3人がたむろしている。 「アイツら何してんだ。倒していい奴か?」 背後から声をかけると、ことは飛び上がって買い物袋を落とした。 「桜か…びっくりした…」 買い物袋を拾って渡すと、ことは安心したように表情を緩ませた。 「あの3人、最近うちの店の前でうろうろしてるんだよねえ…」 ことはは困ったように眉をひそめた。 「

          ありがとう桜

          二人三脚

          桜たちは体育祭に向けて、校庭で二人三脚の練習をしていた。 「ちょっ、桜君速すぎ!止まって」 急ブレーキをかけた桜の横で、蘇枋が転びかける。 「もう急に速くなるのやめてよ」 「いいだろ別に。お前ついて来れるじゃん」 「ついてかないと事故るからだろ」 「俺について来れば問題ねえ」 「勘弁してよ」 蘇枋は膝に手をついて息を切らしている。 「お疲れさまです」 「二人とも速かったねえ」 傍観していた桐生と楡井が、蘇枋と桜に近づいて声をかける。 「桐生君、俺と代わろう。俺もう桜君につ

          嘘と本当

          ホント綺麗な顔してんな 目の前ですやすや寝ている蘇枋を見ながら、棪堂は蘇枋を拾ったあの日のことを思い返していた。 あの日、俺は夜遅くまでバイトをしていた。 帰路についたのは22時くらいだったと思う。 街頭に照らされた公園の前を通ると、ブランコに人が座っていた。 遠くから目を凝らして見れば、桜とよく一緒にいる眼帯の奴だった。 「何してんのこんな時間に」 迷わず声をかけていた。 俺の声に顔を上げた蘇枋は驚いた顔で俺を見たが、ゆっくりと表情を崩し力なく笑った。 「棪堂さん、オレ家

          ドッジボール

          スーパーで買い出しを終えたことはは公園の前を通って歩いていた。 お、桜たちだ ドッジボールしてる! ちょっと見てこうか 「ことはさーん!」 ベンチに腰をおろしたことはに気づいた楡井が手を振って喜ぶ。 「にれ君!ボール」 「う、わぁーーー」 「あはは」 「当たっちゃったねえ」 「桜さんずるいです」 「お前がよそ見してるからだろ」 「ことはさん....」 しょんぼりとうつむく楡井がことはの隣に腰をおろした。 「悪かったわね、気をそらしちゃって」 「そんなことないです!会えて

          ドッジボール

          大人の階段

          蘇枋がオレの布団で寝ている。 「すおう…」 睫毛なげえ ほんと綺麗だなコイツの顔 我慢できなくて口付けした。 ふにっと柔らかい感触 それでも蘇枋は起きなくて、もう一度今度は長めに唇を押しつけた。 「ん」 閉じていた目を開けると、蘇枋が笑ってオレを見ている。 「起きてたのか?」 「うん」 チッ、澄ました顔しやがって。 「お、わ!何だよ」 体を起こそうとしたオレを蘇枋が離さない。 「もう一回して」 「やだ」 「なんで?」 「なんでも」 「ダメ?」 上目遣いでオレを見てくる。 オ

          これからよろしくな!

          休日、桜たちとポトスでオムライスを食べていた。 「はあ美味かった。ご馳走さん」 桜はオムライスを食べ終え、最後に水を飲み干した。 「あ、また野菜残してる」 「食っていいぞ」 「はい、では遠慮なく」 楡井が桜の皿に残ったミニトマトを食べた。 チリン ドアベルが鳴った。 「おぉーいたいた。ラッキー」 中に入ってきたのは棪堂だった。 驚いて誰も声が出ない。 「なんで…お前…」 我に返ったように桜が勢いよく立ち上がる。 「まあまあ、落ち着けって桜」 幸い、ポトスには桜たちしかい

          これからよろしくな!

          不気味な夢

          珍しく教室に一番乗りした。 次は誰が来っかなぁ、桐生あたりか? 窓際で頬杖をついて外を眺める。 お、楡井きた! なんでそんな嬉しそうに歩いてんだよ。 手広げて、頭揺らして、スピード遅くて 小学生みたいだな うわ、杉下来た 楡井気づいてねえな ヤバ、すぐ後ろに追いついてんぞ。 え!あいつ何する気だ オレは窓から身を乗り出していた。 ぐはは おもしろ〜 杉下が楡井に膝カックンしやがった。 楡井、転んでんだけど。 お、優しいな杉下 お前、人に手を差し伸べる奴だったんだな てかア

          俺またやらかしたみたい‥‥

          朝、教室に入ると蘇枋と目が合った。 蘇枋はばつが悪そうに立ち上がり 「自販機行ってくる」と 一緒にいた楡井たちに声をかけ教室を出て行った。 オレはすかさず蘇枋を追いかける。 ここ最近蘇枋に避けられていて、こうでもしなきゃ本当に二人で話せそうになかった。 廊下に出ると蘇枋が突き当たりの角を曲がったところだった。 「おい蘇枋、待てよ」 オレの大きな声に蘇枋が走り出したのでオレも走って追いかける。 まるで鬼ごっこのようだ。 廊下には人がいなかったので二人とも全速力で走る。 足はオ

          俺またやらかしたみたい‥‥

          俺も負けないよ

          桜の指示で学校にいた者たちは念のため持ち場に戻ることになった。 話し合いで決めた結果、十亀は蘇枋とペアになり二人で商店街を歩いていた。 「君と二人になるのは初めてだねえ」 「そうですね」 桜たちと街の見回りをする蘇枋と何度か会ったことがあるけど、こうして二人で話すのは初めてだった。 「蘇枋…くん?なんて呼んだらいいかなあ」 初めて話すからなんとなく君付けしてみたけど 「蘇枋でいいですよ」 穏やかな口調でそう言ってくれた。 「蘇枋は強いんだねえ。怪我してないよね全然」 蘇枋の

          俺も負けないよ