my feeling

この場所では正直な自分でありたい

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23時。今夜もオレは蘇枋の布団に勝手に入り、背中に腕を回す。 広い背中は案外薄い。そこにそっと顔をくっつけて蘇枋の温もりを感じる。 「すおぅ…」 意味もなく名前を呼んだ 「ん…」 小さな返事に安心する。返事をしてくれるだけで嬉しい。夜の蘇枋は、昼間の蘇枋とはまるで違う。昼間が太陽なら、夜は曇りだ。 ベールにでも包まれているかのように、蘇枋のことが見えない。わからない。蘇枋が何を考えているのか、オレのことをどう思っているのか。 聞きたいけど聞けない。怖い。 そんなや

    • こっち向いてよ

      金曜日の夜。23時。オレの隣で蘇枋が寝てる。 いや、そう見えるだけで本当に寝ているのかはわからない。蘇枋はオレに背を向けてあっちを向いているから。 まあ、オレにとってはどっちでもいいけど… オレはなんの躊躇いもなく蘇枋の布団に忍び込む。蘇枋の体にかかったタオルケットを、自分の方にも引き寄せる。そうして後ろから蘇枋の背中に腕をまわす。オレはこうするのが好きだった。蘇枋のいい匂いに包まれる。安心できて落ち着く。 今夜もまた、オレは蘇枋をしっかり抱きしめた。 ある日の放課後 見

      • 熱中症になった蘇枋さん

        おい蘇枋!しっかりしろ 見回りの最中に熱中症になったオレは、桜君に支えられて彼の家に着いた その途端 力が一気に抜けて玄関先で倒れこんでしまった。ほんとなにやってんだろ、オレ… 今日は37度という、とんでもなく暑い日だった。オレは暑さに弱いから覚悟はしていた。しんどい日だろうなと。でも、まさか自分が倒れるとは思っていなかった。ましてや桜君に介抱されるとは。 オレの体は暑さに弱い。だから夏は嫌いだ。暑いだけで頭が痛くなるし、食欲もなくなる。一番しんどいのは暑さで体力がごっ

        • 告白〜蘇枋と桐生

          放課後、日誌を職員室に届け終わり教室に戻ったら。すおちゃんが一人、黄昏れていた。今日は見回りがないので、他のみんなは早々に帰ったらしい。 「すおちゃん?何してるの〜」 「桐生君……特になにも」 「いやいや、 夕日見ながら絶対何か考えてたでしょ 笑」 「いや、ほんとに何もないよ。 ただぼーっとしてただけだって」 「ふぅ〜ん…」 釈然としなくて曖昧に返事をした 「まあ、強いて言えば桐生君を待ってた」 (え!?なにそれ!!!不意打ちすぎる 待って!待って!待って!マジ

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        • イケはやさん
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          一年トリオと楠見先輩

          放課後、 今日の見回りは多聞衆が担当となっていた。 班のメンバーは、オレと桜君、にれ君。そして、2年の楠見先輩だ。 今まで多くの先輩たちと見回りしてきたけど、楠見先輩と被るのは今回が初めて。先輩とは直接話したことがないから内心ちょっと楽しみな気持ちだった。 そんなオレの気も知らず、教室であからさまに興奮しているのはにれ君だ。 「桜さん!今日は楠見先輩と見回りですよ! あぁ〜すご〜い!こんなこんな凄いことあるんですね。」 そんなことを言いながら桜君の周りで飛び跳ねている

          一年トリオと楠見先輩

          甘えたな桜君

          「お邪魔します」 街の見回りが終わった放課後、オレは桜君家に来ていた。帰り道が同じということもあって、ちょくちょく桜君家にお邪魔することが増えた。 別に何をするでもない。雑談したりお茶を飲んだり。級長・副級長ということもあり、普段学校でゆっくり過ごすのは難しいため、こうして二人きりでのんびりできるのは悪くない。 いつものように桜君の布団に腰を下ろした。桜君も隣に座るかと思いきや、間髪を入れずにオレを押し倒してきた。 「え〜、どうしたの桜君?? びっくりした〜」 オレ

          甘えたな桜君

          虚しいです。

          今日もいつも通り。毎日毎日仕事をして、帰ってきたら寝転がってスマホをいじる。変化や刺激のない毎日。日々淡々と過ぎていく。 こんな生活いつまで続けるのだろう…… フリーターを続けることはできるだろう。でも、心のどこかで不安がある。お金の心配。これに限る。 今はまだ貯金があるからいいけど、このままだと本当に生活が困る気がする。ただでさえケチったり節約したりしているのに… 好きな漫画、読みたい漫画を容易に買えない。お金の心配して、欲しいものも買えない。別に、今お金がないとい

          虚しいです。

          蘇枋の涙

          蘇枋は泣いていた。声にならない声で。 オレは朝から蘇枋の違和感に気づいていた。朝、教室に入り挨拶を交わす。 「おはようございます。桜さん!」 「……」 「……はよ。」 いつも楡井とともに挨拶してくる蘇枋が今日は声をかけてこなかった。オレは不思議に思って蘇枋を見ると、彼はハッとしてぎこちなく笑う。思い出したように「おはよう、桜君」と言った。 蘇枋は上の空だった。何かを考えているような、思い詰めた雰囲気。それでいて、誰にも心のうちを開くまいとするオーラを周囲に放っていた

          焚石の寝顔

           オレの朝は焚石を起こすことから始まる。  意外なことに焚石は朝が弱い。自分で起きることは滅多にないからいつの間にかオレが起こすようになった。  コンコン…。  焚石の部屋のドアをノックして入る。カーテンの締められた部屋は暗くて少し涼しい。なんだか物音を立ててはいけない雰囲気があり、オレは静かにベッドに近づく。背中を丸め、左手で頭を覆って寝ている焚石。顔は見えない。わずかに寝息が聞こえる。  「たきいしー、朝だよ」  オレは焚石の頭のあたりにしゃがんで声をかけた。反

          焚石の寝顔

          お前のせい

          ガチャ。 トイレに行こうと部屋を出る。向こうから、お風呂を上がった焚石が歩いてくる。 首に巻いたタイルで長い髪を拭いながらオレを見る。視線を感じながら焚石の前を通り過ぎようとした。が、あまりの圧に見上げてしまった。 焚石もオレを見下ろして立ち止まる。いつもの無表情ではあるものの、「なんだ」とでも言いたげだ。 オレは早くこの場から立ち去りたいのに動けない。オレの目は焚石の胸元に釘付けになっていたから。 緩く結んだバスローブからチラリと見える胸筋。髪から滴る水滴が白い肌

          お前のせい

          梶の日常 (楠美目線)

          7限が終わった。 「まぁた梶のやつ、授業サボりやがってぇ。どこ行ったんだあいつぅ?」 榎本がスマホを見ながら呟く。 (たぶん屋上だろうな。) オレは心の中で思った。 「おーい、榎本ー」 榎本が友達に呼ばれて席を立った。 オレはそれを機に、屋上へ向かった。 梶君は時々授業をサボる。本人曰く、退屈だから。先生に引き止められるのが嫌で、授業が始まる前の休み時間には姿を消している。 ある日、オレは梶君が、授業をサボるために教室を抜け出すところをたまたま目撃した。どこへ

          梶の日常 (楠美目線)

          焚石の部屋

           今日は棪堂と焚石が出かけている。よって家にはオレ一人だ。何もすることもなく、ソファでだらだらとテレビを見ていた。二人がいないとこんなにもリラックスできるのか。二人との生活に慣れてきたとはいえ、やはり一緒にいると緊張する。だから今、この広い部屋で一人のんびり過ごせるのは、とても快適だ。  CMに入ったところで、トイレに行こうと立ち上がった。リビングを出ると自分の足音が人気のない家に響く。  焚石の部屋の前を通り過ぎようとしたとき、扉が開いていることに気づいた。珍しい。ほん

          焚石の部屋

          二人に好かれる桜

           ガチャ。  風呂を上がり、リビングに行く。空いているソファに座る。  向かいのソファには、読書している焚石がいる。いつも何を読んでいるのか、ブックカバーをしているのでわからない。見た感じ小説だと思う。  オレが来たのに気づきチラッとこちらを見る。相変わらず無表情……。目が合ったと思えば、すぐに本へ目を移された。  ソファにかけてあったタオルを取り、髪から滴る水滴をしぼる。そのままガシガシと頭を拭く。 「サクラ〜、また濡れてんの。ちゃんと風呂で拭いてこなきゃダメじゃ

          二人に好かれる桜

          実はふつうに勉強できる桜

           オレはずっと一人で生きてきた。人に頼らず自分で自分のことはする。これまで一人暮らしでやってきたから、家事はもう慣れた。二日に一回洗濯をして、毎日風呂洗いをする。掃除機は週一でかける。自炊はしないので洗い物はほとんどしない。  勉強だってそこそこできる。教科書を読めば大体のことは理解できる。課題はその日のうちに済ます。  放課後の見回りが終わり家に着く。鍵のかかっていない扉を開け、中に入る。楡井も続いて入ってくる。 「お邪魔しまーす!」 「おまえ、マジで来たのかよ」 「え

          実はふつうに勉強できる桜

          『WIND BREAKER』144話の続き〜閉幕

          棪堂たちとの喧嘩が終わった後の話です。 桜は梅宮に救出され、保健室で寝ているという設定。 では本編へどうぞ。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  オレは夢を見ていた。暗闇に沈んでいく。そうだ。オレは綱渡りしていて堕ちてしまったのだ。どこまでも深く真っ暗な闇。もう誰にも会えない。助けてくれる人もいない。独りぼっちだ。嫌だ。逃げたい。誰か助けて。  手を差し出す。誰かが引き出してくれることを願って。  これは現実なのだろうか。手に温かな感触がある。誰かがオレの

          『WIND BREAKER』144話の続き〜閉幕

          『WIND BREAKER』144話続き〜梅宮の

          ウィンドブレイカー144話の続きを妄想で書きます。下記、私の理想パターンです。 梅宮により桜が救出される 蘇枋が助けにくる 桜が自力で棪堂に勝つ 杉下が助けにくる 桜、棪堂に連れ去られる 個人的に1ルートが、一番可能性があるかなと考えています。では本編へどうぞ。 (全く外れているかもしれないw) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ミシ。  棪堂の右足で腹を踏みつけられ、身動きがとれない。全身が痛くてもう限界だ。ここで負けるわけにはいかないのに体が

          『WIND BREAKER』144話続き〜梅宮の