ことはに意識されたい桜君
ことはと1分間二人きりでお話しできる部屋にいます。
〜桜〜
「…っんだよ!そんな見つめて」
「いや…ほんと綺麗な目してるなあと思って」
「は?…きれぃって…そんなこと言うのお前くらいだぞ」
「そう?言わないだけでみんな思ってると思うけど」
「んなわけねぇだろ」
ことはは桜を見つめたままだ。
「…なんか言えよ」
「桜っていちいち反応可愛いよね。すぐ赤くなるし」
「あぁ?喧嘩売ってんのか。表出ろ」
「むり…まだ開かないし」
「チッ、何なんだよ」
桜は力なくしゃがみ込む。
「私と二人きりは気まずいわけ?」
「…ったりめえだ。こんな狭い部屋、閉じ込められて。お前は気まずくないのか?」
「別に…何ともないけど」
「それはそれでムカつくな」
「ん〜どういう意味?」
「俺だって男だぞ。ちょっとは意識しろよ」
「あっはっは」
桜の言葉に、ことはが腹を抱えて笑い出す。
「な、なに笑ってんだよ!」
「え〜だって桜がそんなこと言うと思わなかったから」
「う、うるせえ。つか、お前は警戒心なさすぎだろ」
「そう?」
「俺だって男だ」
「え、うん、知ってる。てか、それさっき聞いた」
「だあぁぁぁ!何なんだよお前。もっとこうさ、なんかないのかよ!」
真っ赤な桜は手を振り回して暴れ出す。
「なんかって何よ。あ!開いたわよ」
ことはが扉に手をかける。
「ことは…」
桜の呼ぶ声に振り返ると、ことはが見たことのないギラついた目が自分を見ていた。
〜蘇枋さん〜
「どうかした?」
ことはは蘇枋を静かに見上げていた。
「蘇枋ってけっこう背が高いのね」
「あぁ、こうやって並ぶと意識しちゃう?」
蘇枋は笑顔でことはを見下ろしている。
「別に…意識っていうか単純に思っただけです」
「あはは、急に敬語だ。可愛いね」
「…バカにしてるよね」
ことははむっとして蘇枋を見る。
「してないよ。君が照れてるのは珍しいなと思ったから」
「照れてないですけど」
カチンときた。
「君は照れると敬語になるんだね」
「だから、照れてないってば」
「うんいいね、いつもの君だ」
余裕な笑みを浮かべる蘇枋に、ことはは腹が立った。
「あのさぁ、ずっと思ってたんだけど蘇枋って私の名前呼んだことないよね?」
蘇枋は少し黙ってから口を開く。
「へぇ〜ずっと思ってたんだ」
「そこ?!」
「オレに名前を呼んでほしいってことかな?」
「そういうことじゃないけど、なんか理由あるのかなと思って。いつも”君”って言うから私の名前知らないとか?」
「まさか、もちろん知ってるよ」
蘇枋が扉に手をかける。
「開いたよ、ことはさん」
ことは”さん” !?
まさかのさん付けなんだ
あ、まずい目眩がする…
〜楡井〜
「失礼しまーす!」
楡井が扉を開けて入ってきた。
「え、ことはさん?どうしたんですかうずくまって」
楡井になら言ってもいいかな…
「あ…実は今日生理の日で、ちょっと貧血気味で…ごめんねこんな部屋で」
「いえ、全然気にしなくていいっすよ。あと30秒ですから、すぐ出られます。そしたら梅宮さん呼んで来ましょうか?」
「梅は絶対ダメ!」
ことはが強い口調で言う。
「では、誰か他に…あ、開きました」
〜梅宮〜
「ん、ことは?」
扉を開けると梅宮が立っていた。
「げっ!なんでアンタがいんのよ」
楡井と入れ替わりで梅宮が中に入ってきた。
「ことは、どうしたんだ。そんな青白い顔して」
梅宮が真剣な顔でことはの顔を覗き込んでくる。
「いや…ちょっとめまいが酷くて…」
「そうか…辛かったな。お兄ちゃんが付いててやるからな」
梅宮がことはを自分の体の方へ寄せる。
「ちょっと…」
「いいから、な?」
逃れようとしたけど、梅宮の腕に包まれて大人しく体を預けた。
あぁ…懐かしい匂いがする
落ち着く‥‥
なんだか眠くなってきた。
ガヤガヤ騒がしい気がして目が覚めた。
薄く目を開け、目の前の光景に驚愕する。
ことはは真っ白なベッドに寝かされていた。
「な、なんで…ここは…?」
「おお!ことは、目覚めたか。ここは風鈴の保健室だ」
笑顔の梅宮がベッドに座ってことはの手を握っている。
その横には、桜と蘇枋、楡井が立っていた。
「お前、貧血ならそう言えよな」
「ごめんね、気づけなくて」
「梅宮さんがここまで運んでくれたんですよ」
だんだん記憶が戻ってきた。
あの部屋で梅宮の腕の中で眠ってしまったんだ。
みんなの視線が突き刺さる。
「んー、ことは、顔赤いけど熱でもあるのか?」
梅宮がことはの額に手を当てる。
「いゃ、違うから。大丈夫だから…」
「そうか?」
小声で答えたことはは布団を引き寄せて顔を覆った。
何これ…どういう状況??
みんなイケメンに見えるんだけど!?
寝顔見られてたってこと??
恥ずかしくて死にそう…
「梅宮大変だ」
焦った声とともに扉が勢いよく開いた。
「おう、柊!どうした?」
「生徒たちにことはちゃんの存在がバレた」
梅宮の血相が変わる。
「わかった。今行く」
梅宮はことはを振り返って言う。
「ことは、お兄ちゃんが守ってやるからな」
「お前ら3人はことはちゃんに付いてろ。頼んだぞ」
そう残して、梅宮と柊は飛びし出して行った。
「はあ、呆れる。私帰るから。悪かったわね、色々迷惑かけちゃって」
ことはは起き上がってベッドから出ようとした。
「おい、待てよ。今の話聞いてたか?ここ男子校なんだぞ」
「そうですよことはさん!どんな奴が狙ってるかわからないですし、今はここで待機してましょう」
桜と楡井がことはの前から動かない。
ことはは諦めてため息をついた。
何かもうどうでもいいや…
もうちょっと寝てようかな
なんて呑気なことを考えていたら、不意に手をつかまれた。
桜がことはの手を掴んだまま、じっと見つめてくる。
「なに?」
「桜さん?どうしたんですか?」
楡井も不思議そうに桜を見る。
「お、俺も男だぞ。何とも思わねえのかよ」
桜は恥ずかしそうに、でも真剣な目をしていた。
「っはっはっ」
思わず吹き出してしまう。
桜ったらそればっかりじゃん
そんなに意識してほしいのか
そういうところも可愛いよね
でもごめん…
「私、桜のこと信用してるから。何とも思わないんだ」
「あ?何でだよ!」
桜が真っ赤な顔で怒り出す。
「桜さん落ち着いてください」
楡井が桜をなだめにかかる。
っていうのは半分嘘なんだけどね。
さっきちょっとカッコいいと思ってしまったもん。
桜、顔イケメンだし‥‥
「楽しそうだね」
口元が緩んでいたのだろう。
唐突に、声が降ってきてギョッとして見上げると、蘇枋がニコニコしてことはを見ていた。
「君、さっき照れてたよね。ちゃんと顔に出るタイプなんだね」
なんだこいつ?!
バレてるじゃん
てか、一番の危険人物、目の前にいたわ
「桜、こっち来て!蘇枋が怖い」
呼ぶと、桜がすっ飛んできた。
「蘇枋、てめえことはに何した?」
「別に何もしてないさ。ねえ、ことはさん?」
「「「え」」」
お願いだからその呼び方で不意打ちやめてよ
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