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vol.1.3 スタンダード/ベルトルドグロテスク —ロゴを決めよう! その3—

Standard/Berthold Grotesk


前回までのあらすじ
ロゴを決めよう」というテーマですでに2回を数える。果たして軟着陸できるのか。


渡邊「では、残りふたつですね。『No_128』を見ていきましょう」

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山田「これも、グロテスク系の書体だね」

渡邊「グロテスク、お好きですね」

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山田「エジプシャン(金属活字として初めて作られたサンセリフ体)に端を発する『2ラインズ・イングリッシュ・エジプシャン』系のサンセリフが好きなんだよね」

伊藤「読みやすいですしね。遠くからでも」

渡邊「『Standard』シリーズは、ドイツベルトルド社が出した『Akzidenz Grotesk』の別名ですよね。ニューヨークの地下鉄のサインはこの書体なんですよね。『New York City Transit Authority Graphics Standards Manual』というとても美しい本を見ると、一字一字詳しく見られるのでおすすめです」

山田「そう。よく勉強してるね! Akzidenz Grotesk をベースにしてハース社から『Neue Haas Grotesk』という書体が生まれ、これが後に有名な『Helvetica』へと名前を変えるんだ。発表されたのは1957年のことだから、意外と新しいんだよね」

伊藤「なるほど。なんだか僕、すごく有意義な講義を受けている気になってきました(笑)」

山田「ちなみに、Akzidenz Grotesk は『貿易用、端物用のサンセリフ』という意味で、1898年に無名の活字製作者が作ったとされているんだよ」

渡邊「なんと! 当時は無名でも、今はめちゃくちゃ有名ですね。ピカソみたい(笑)。お名前知りたかったです……」



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渡邊「いよいよ最後ですね。なんだか寂しい(笑)」

山田「これも、グロテスク(笑)。さっき出てきたベルトルド社のグロテスクを参考にしているんだ」

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渡邊「ベルトルド社、すごいですね(笑)」

山田「オーソドックスだよねえ。ベルトルド社について説明しといたほうがいいかな(笑)」

伊藤「この会社は調べたことがあるので僕がわかります! ヘルマン・ベルトルドが創業して、金属活字→写植活字→電子活字と3世代にわたって存在価値を放つ老舗ですよね」

山田「その通り!」

渡邊「こちらは、Akzidenz Groteskに比べ『s』がとっても特徴的で、印象に残ります。小文字は特にいろんな表情があって面白いですね」

山田「微妙に差異があるのが面白いよね」



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山田「ひと通り見てきたけど、結局どれにする?」

渡邊「うーん……うーん……」

伊藤「渡邊さんがショートしそうですよ」

渡邊「……全部良くて、選べないです!!」

山田「え」

渡邊「毎回ロゴを変えるというのはどうです? 斬新じゃないですか??」

伊藤「お、それ面白いかも」

山田「いいねえ。けど……」

渡邊・伊藤「山田さんが毎回作るということですね(笑)」

山田「渡邊さんがやってもいいんだよ?」

渡邊「いや……それは恐れ多いです。山田さん、よろしくお願いします!!」


……3号を経てもロゴは決まらなかったが、方向性は決まった。果たして次回はどんな展開になるのか……神のみぞ知る。乞うご期待!



参考文献:
普及版 欧文書体百花事典』(組版工学研究会)
New York City Transit Authority Graphics Standards Manual』(Standards Manual LLC.)



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