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ギー 【ベラゴアルドクロニクル】
2019年7月1日 12:32
「隊長を守れ!」 カイデラの叫び声に白鳳隊が引き返す。その場に留まり矢を放つ者もいる。矢は大きな一つ目を狙うが、その両腕に阻まれる。キュークラプスは手首と足首に鉄の防具を巻いている。 マールを踏み潰さんと、巨人が片足を大きく持ち上げる。カイデラが腕を伸ばすがとても間に合いそうにない。 巨大な足の裏が迫る。「姫っ!」カイデラが叫ぶ。 すんでの所でマールの身体は弾き飛ばされる。
2019年7月2日 12:46
橋桁を渡り、マールが振り向くと、もうすぐそこまでグイシオンの群れが押し寄せている。 「橋桁を上げるんだ!急げ!」最後の戦士が戻ったことを確認したピークスが叫び、近くの者たちが必死で橋桁の滑車を回す。 それから、そこにいる戦士たちのほとんどが、防衛柵の外側に残ったドワーフたちを見守る。 魔物がドワーフたちの前に津波のように押し寄せる。群れに向かってドワーフたちが一斉に矢を射る。バジムの
2019年7月3日 12:34
老人は優しい笑顔を向け、彼女の手紙を受け取る。 「ちょうど、大鴉が戻った所じゃ」 なんでもストライダにはそれぞれ飼いならした大鴉がいて、どこにいても主人のもとに戻ってくるのだという。近年、伝令鳩として広く利用されていた六つ羽鳩がうまく飛ばない今、実質的には、遠方への通信は、ストライダを頼ることが多くなっているそうだ。 とはいえ、これほどの手紙の量を、大鴉が運べるわけでもなく、大きな荷
2019年7月4日 12:50
その日からガンガァクスは慌ただしくなる。来たるべき決戦に備えて鍛冶屋も道具屋も忙しくなり、合わせて酒場なども客で溢れる夜が続く。 それは奇妙な光景だった。戦いのなかでこそ回る商業区の景気も妙だが、なによりも、それぞれの種族たちがそれぞれの習慣に沿った戦いの準備をし、最終的には纏まりあるひとつの軍隊が形成されようとしている事実こそが、ガンガァクスを置いて他、有り得ない光景だった。 マールは