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【映画rie】革命が起きたら。あなたはどう生きる?『テオレマ』を映画館で。

『テオレマ』難解、前衛、政治的、といえば かつては こんな感じでした。1968年のイタリア映画。監督ピエロ・パオロ・パゾリーニ。

初めて観たのは教育テレビ(eテレ)

日曜日の昼下がり、名作という括りでヨーロッパ映画が放映され よく観ていた。(にしても、全く昼間向きでないので…描いた絵に立ちションする場面! とか。背徳と隣り合わせ)

高校生だったので、ほとんど分からなかったけど、この映画が分かるようにならないと、"なりたい大人"に きっとなれないだろうから、なんとか理解したいと思っていた。テレビが私の背伸びに ひと役買っていた時代。90年代の話です。

そういう出会いだったので、忘れた頃に見直して その時々の自分を知るのに丁度良い。物差しのような映画でもある。

高校生から、生活者になってみると 見えてくることは多い。

ざっくりの理解でいえば『家族ゲーム』の松田優作とテレンス・スタンプは ほぼイコールで。家(家父長制)の崩壊という点も ざっくりいえば ほぼイコール、その辺りまでは理解した。


今回は映画館で。気づきも多く興奮した。

パゾリーニに対して 詳しくもないのですが『アポロンの地獄』などでも そうだったように、意外と親切設計。オープニングで これからこういう話をしますね。と言ってくれる。

映画館でメモを取らず後悔してるのですが…テオレマの冒頭。工場の社長であった男が、オーナーの座を労働者に譲り渡すと宣言。マスコミの取材攻めにあう。そこで男は話す(記憶で書きますね泣)

「社長が労働者に変わるという、この価値観の変化を、社会や、若者、宗教は どう受け止めるのでしょうか?」と。これから、こういう話を見せますねと案に言っている。親切。

https://youtu.be/-OcmUMUE9Vo


その後、社長であった男の邸宅に場面は移る。この"家"は "国" や ”資本主義” かもしれないし、"家父長制そのもの" かもしれない。

そこに住まう男=父、妻、娘、息子、家政婦。この人たちが、価値観が逆転したあと どう変化するのか。前半は各人のエピソードがショートショート的に描かれる。

社長が社長でなくなった後。特に説明もなく"訪問者"テレンス・スタンプが邸宅を訪れ滞在する。ファミリーは色めき立ち、憧れ、熱狂し、欲望を掻き立てられ、目覚め、自身の欺瞞に気づく。

後光のようで、この場面好きだった。

ここのファミリーは、あれです。
テレンス・スタンプを見ると トイレを我慢できなくて駆け込む、そんな 抑えきれなさで 皆んな もよおしてしまう。それが立て続けに起こると ショートコントのようで、特に前半はブラックユーモアを感じさせる。

ファミリーは全員 訪問者との性的関係を望み、結んでいる(ように見える)ちなみにこれはイタリア映画で、テレンス・スタンプはイギリス人。彼が異邦人なのは偶然じゃないはずですね。


テーマ曲がとにもかくにも素晴らしい。良くこんな曲思いつくなー。
グラマラス。

60年代は若者の政治運動も盛んだった。だから、仮に革命 (労働者側が政治のトップになるetc) に成功したとして。

そのあと右も左も、支配層も労働者も。夫も妻も、芸術家も宗教家も。先のヴィジョンを ちゃんと持っているのか?どのコミュニティの人間も盲目的に生きて 自分の問題から目を逸らしていないか?(私には耳が痛い話)

そういう寓話的な たられば映画 なのだろうと思う。

革命を成し遂げた直後に起こる、達成感 や高揚、熱狂。急にやってきて急に去っていくテレンス・スタンプは、その熱狂を擬人化した存在、今回は そう見えました。そういう意味ではアイドルが 一番近い存在かもしれないけど、どうだろう?

パゾリーニ自身は、スタンプの役はキリストではなく、ソドムの街神話に出てくる、神から使わされた天使だ。と言っているの どこかで読みました(出典わからず)どっちにしろ意外と悪ふざけしたりチャーミングなとこも魅力的で、ずるいんですよね。

映画『卒業』のラストシーンで、駆け落ちに成功して満面の笑顔の後。

「やばい 先の事、何にも考えてなかったけど どうしたらいい?」っていう不安と焦燥感。ジェットコースターのような感情の急下降。あの部分を深めて 煮詰めて 一本映画を撮ったみたいな。

『テオレマ』を観終わって映画館を出てから、『卒業』のラストと『テオレマ』のラストの叫びが 頭の中を駆け巡り、呑気に見える街も人も、しばらくは不毛な荒野。

映画のラストで、ドーンと突き放され、街に放り出される。映画観たなーという、好きな感じ。好きな堂々巡り。


2022年6月 熊本市

音楽もサイケデリックなロックが、こんなに流れてたっけというくらい。不協和音もいっぱいですが笑。ビートルズのラバーソウルのレコードも置いてあったし。若者の熱しやすく冷めやすい あの熱狂。



例えば家政婦。
訪問者テレンス・スタンプに魅せられた自分を恥じて、キリストの切り抜きの前で懺悔みたいな事をしたり 死のうとまでする。

家政婦は、労働者であり、信仰心の熱い宗教的な人物。

訪問者が家を去った後に目覚め、労働をやめ宗教に集中すると..こんなことまで出来るようになる笑。でも、あの熱狂は訪れない。こんだけ出来ればいいじゃないかと、私なんか思います笑。でも彼女の中は無。

彼女のように、この家の住人は 訪問者に魅了されてから、自分の問題に目覚め 行動したり フリーズしたりする。でも家父長制や資本主義に疑問を持たず、囲い込まれていたためか、いざ目覚めや気づきを得ても 答えが見いだせず、みんな内面を崩壊させ家族としての形も解体する。

ラストシーンの叫び。
私には「どうしたらいいんだ?」に聞こえ、現在の自分のようだった。革命をすすめるも地獄、戻るも地獄という事か。

ただ、羨ましい気もしている。ここに出てくる人たちは、気づけたんだから、良かったのかもしれないと。今の私たちの国は どうだろう?

資本主義にべったりで、痛みから目を逸らすことを、あえて選択する事で 社会が成り立っている。そういう気がしてならない。どちらが良いのだろう。

そして結局「どうしたらいいんだ?」に私はたどり着く。

いやいや、虚無とか言ってる暇ないんで、先行きますね。なんて人も沢山見かける(子供達世代とか)世界のグラデーションも忘れずにいよう。で、選挙に行こうよね。白票はなしだよ。みんなで21世紀型の革命を。ここまでボロボロに ならない方法が あるはず。

私は自民・公明・維新・参政党・ごぼうの党・NHK党・国民民主・幸福の科学…に投票しない。いずれも現在進行形で困っている人間への対策、福祉は後回しで、結局 単純なコスパ論と勇ましい国防をかかげる政党だから。政府寄りの考えに票を投じない。今の政府を信用していないから。

空き店舗の増えた街を見れば、今は国防でなくって、みんなの生活、セイフティネットを広げないと。今 日本の一番の敵、脅威は 生活苦だと思うよ。

一旦、日本もテオレマ的に "ワンマン社長的権力者"から”労働者よりの者"に経営を明け渡したほうがいいと思ってる。("日本の社長"は あっさりトップの座を譲ってくれないけど)変化した後の混乱を受け止めるつもりで、そうしたほうがいい。謝謝



テオレマ
(Teorema, 「定理・定式」の意)
1968年(昭和43年)
製作・公開  イタリア映画

原案・監督・脚本:ピエル・パオロ・パゾリーニ
出演:テレンス・スタンプ、シルヴァーナ・マンガーノ 、アンヌ・ヴィアゼムスキー

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%82%AA%E3%83%AC%E3%83%9E



https://youtu.be/FXU6jiQjFvI

窓の外は闇….どうすればいいんだ?? 帰り道 この曲も思い出した。


🟢spotify
映画を軸にしたポッドキャスト"食わずぎらい映画。ときどき音楽"
週一でUPしています。1話20分程。noteの内容とゆるく紐づいています。お風呂入る時流すとちょうどいいそうです。


🟢 解説はこの方が しっくりきました。


謝謝
……………………………..

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