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思考を追い抜かれる


2023年9月20日(水)朝の6:00になりました。

アキレスは、100メートル先にいる亀に追いつけない。

どうも、高倉大希です。




いつも芯を食った意見を述べる人に、こんな質問をしたことがあります。

「どうしていつも、瞬時に芯を食った意見を述べることができるのですか?」


すると、その人はこう答えました。

「話していることを聞きながら、相手の思考を追い抜くんだよ」


決して、具体的でわかりやすい回答ではありません。

それにも関わらず、妙に納得したことをいまでもはっきりと覚えています。


ちゃんと考えて話すというのは、“相手の言っていることから、その奥に潜む想いを想像して話す”ということでもあります。そしてそれは、学校的知性ではなく社会的知性がもたらすものなのです。

安達裕哉(2023)「頭のいい人が話す前に考えていること」ダイヤモンド社


たしかに、「いま思考を追い抜かれているな」と思うことがときどきありました。

話そうと思っていることが、途中の段階ですでに読まれているのです。


読まれてはいますが、そういう人に限って決して話は遮りません。

最後まで相槌を打った上で、芯を食った意見を述べてくれるのです。


きっとその人にとって話の後半は、確認の時間なのだろうなと思います。

追い越した先の予想が、合っているのかどうかの確認です。


たとえば『源氏物語』のなかに描かれている、人が人に対して抱くさまざまな感情。それはいまの人たちが抱える悩みや情熱とまったく同じものだと思います。好きだという気持ちを伝える手段は、手紙からメールやLINEに変わってるかもしれないけれど、どうしようもなく人を突き動かす感情みたいなものは、『源氏物語』に書いてあることとなにも変わらない。

糸井重里(2014)「インターネット的」PHP研究所


そういう人に限って、予想を裏切る人を好みます。

追い越した経路を、辿ってこない相手です。


もしくは、追い越して待っていた地点を、さらに越えてくる相手です。

予想していなかったところに着地することに、大きな好奇心を抱くのです。


予想できるからこそ、芯を食った意見が言えます。

予想できないからこそ、新しい発見に出会えます。


作者すら気付いていない作中で生じた現象を掴んだり、「このように鑑賞する方法もある」と新たな角度から作品に光を当てなければ意味がないと考えている。

又吉直樹(2023)「月と散文」KADOKAWA


高度なコミュニケーションは、思考の追い抜き合いです。

そして、お互いが予想だにしなかったところに着地します。






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