ファイヤーダンス失敗

作家です。小説、短歌、脚本、日記、なんでも書くよ! ラジオネーム「ファイヤーダンス失…

ファイヤーダンス失敗

作家です。小説、短歌、脚本、日記、なんでも書くよ! ラジオネーム「ファイヤーダンス失敗」を名乗って投稿していました。映画『アボカドの固さ』脚本。 第二回&第四回&第六回笹井宏之賞最終選考。著書『誰かの日記』『デリケート』

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三十一歳の日記(9/1-9/11)

九月一日  鍵束にはいつも五本の鍵がくっついていたのにとうとう一本になった。三十一歳にしてどんどんと色んなものを打ち捨てて、身軽に、または孤独に、突き進んでいくその物体としての証はこのぬるくて風通しの悪い茶色い廊下をゆったり歩く俺の指先でキキ・ララと鳴った。 九月三日  羽田空港第1ターミナル駅のホームから空港内部に侵入するエスカレーターを取り巻く空間全体は深緑色、エメラルドの反射と透き通ったガラスで施されていてとても良かった。  今はもう飛行機の中で機内Wi-Fiが使える

    • 三十一歳の日記(8/10-8/31)

      八月十日  働き終え、帰路、ラストシーン書き上がる。終わったか? あとは全体の微調整か? 八月十一日  なんかぶっ壊れたようにApexをやり続けた。 八月十二日  起き、すぐに新宿へ。紀伊國屋で向坂くじらさんの『いなくなくならなくならないで』を買う。ピースに入ってマッカーシー『平原の町』を読む。おもろすぎてがぶがぶ読む。「このあとどうなるか気になる」の塩加減がギリギリで素晴らしい。『ブラッド・メリディアン』『すべての美しい馬』『通り過ぎゆく者』は塩が足りなくて途中で読むの

      • 三十一歳の日記(7/21-8/9)

        七月二十一日  重たすぎる体を持ち上げて、起床即白野に電話。何かやろうの会議。ある程度固まり、がんばろ、と思う。  働きに向かうバスの中で『花束みたいな恋をした』を観る。坂元裕二ガチファンすぎて観るのが怖く、その怖さでここまで先延ばしにしてしまった。  働き、帰路、退職することに対して職場のみんなが「辞めちゃうんですか〜」と残念がってくれる。  筋トレはなぜかずっと続いている。毎日地道にやっており、回数も増えてきた。 七月二十二日  朝の七時に起きて散歩。ドトールに入ってア

        • 三十歳の日記(6/29-7/18)

          六月二十九日  働き終え、帰りの電車でラップスタアファイナルを見る。charluからだった。尋常じゃない大盛り上がり。フックだけじゃなくてバースまでみんなが被せていた。最後の曲の前のMC「貯金ないのに成城石井でスイーツ買っちゃうし」のところで爆上がり(ラップスタア期間中にSNSで「charluの近所に住んでてよく見かけるんだけどあいつは『ギリギリの毎日』とか歌ってるくせにいつも成城石井でスイーツ買ってるからフェイク」みたいなわけわからんヘイターがわけわからん暴露をしててちょっ

        三十一歳の日記(9/1-9/11)

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        • THE 日記
          73本
        • THE 短編
          9本
        • レイドバックビートに輝き
          3本
        • 誰かの日記
          10本

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          三十歳の日記(6/18-6/28)

          六月十八日  夕方に起きて無意味の断崖で風を浴びながらまたぼーっとしていた。コタローと西上くんに電話をかけてうちに来てもらった。そこから翌朝七時までYouTubeを見たり話したり。ジャンゴ・フェットがマスター・ウィンドゥに一秒で殺される動画を見て三人でゲラゲラ笑った。 六月二十日  レヴィナス『全体性と無限』と村上靖彦さんによるレヴィナス解説書『傷の哲学、レヴィナス』を交互に読む。こんなしっかり勉強としての読書は初めてかもしれない。多分もっとちゃんとソクラテスとかプラトンと

          三十歳の日記(6/18-6/28)

          三十歳の日記(6/1-6/16)

          六月一日  終電を待つ駅のホームで今からまたあの人間を人間とも思わない寿司詰めの箱に乗って殺意を隠しながら家まで耐えるのかと思うと既に気が滅入っていた。金曜の終電だけ混むのを一刻も早く辞めてほしいがみんなもみんなで月曜から働いてきてようやくこの夜にだけ作動するモーションセンサー爆弾が至る所で弾けてこのような半端ない満員電車を作っている。画面中央の邪魔なテトリスの水色の棒みたいにただ突っ立って電車を待っていると目の前を髪の長いかわいい女の人が横切った。「お、かわいい女だ」と思っ

          三十歳の日記(6/1-6/16)

          三十歳の日記(5/2-5/30)

          五月二日  朝から働き、帰路のバスで気絶のように寝ていた。目を覚ますと十五分ぐらいしか経っていなかった。十五年経ったのかと思った。  夜中の二時からALGS本戦が開始するのでまたみんなでウォチパをしようと言っていた。もう既にだいぶ眠いが風呂に入り、アケコンを持ってきてPCと繋げる。なぜかスト6をやる。認定戦を終えて八割ぐらい勝ち、ゴールド3からスタートだった。コーヒーをがぶ飲みしながらランクを続けてゴールド5まで上げて、夜中の二時になった。  湯船さんとスリンキーとLINE通

          三十歳の日記(5/2-5/30)

          三十歳の日記(4/23-5/1)

          四月二十三日  昨日はそういえば家に帰る途中に図書館に寄ってトルストイの日記を読んだんだ、僕。十九歳の時点で強固な論理を展開していて大変そうだった。二十七歳の時はギャンブルにハマって全然書けなくなっていて、トルストイでもそんな感じだ。三十五歳の時は結婚して家庭を持って書く時間がなくてしんどい、みたいなことがいっぱい書かれていて、トルストイでもそんな感じだ。ちょっとだけ元気をもらう。受付の近くに「梅毒が流行ってます」のポスターが掲示されていて、そうなんだ、と思う。梅毒が流行って

          三十歳の日記(4/23-5/1)

          三十歳の日記(4/15-4/22)

          四月十五日  昼過ぎに起きてカップラーメンを作る。キャベツの漬物と人参生姜ラペをホーローの容器から皿へと移す。それらを食いながらまたラップスタアを見るが、あまりにも昨日のコピペすぎて怖い。今日は実は今日ではなくて昨日なのでは?  何回見てもKohjiyaが最高だ。TREBLEではなくPRESENCEのツマミがフルテンに回されてる感じの超高音部分がギャンギャンに立っている声だけどそれが耳障りじゃない。LEXの顔を見ているとKohjiyaとTOKYO世界の時だけ痛そうな顔をしてい

          三十歳の日記(4/15-4/22)

          三十歳の日記(4/8-4/14)

          四月八日  それで帰宅してすぐに風呂を溜め、その間にゲーミングPC周りを片付ける。もうしばらくゲームはやらないだろうから、iMac周りを充実させるための移行作業。LANケーブルをiMacに移し、ゲーミングPCに繋いだデバイスたちも全部抜いて片付けていく。しかしコンセントとスピーカーが厄介で、電源タップはこのゲーム用の机の脚に釘を打ってそこに引っ掛けてあった。一旦この机ごと片付けたかったが、まあそぎゃん焦らんでよかど、というところで今日はここまで。パスタを茹でてペペロンチーノの

          三十歳の日記(4/8-4/14)

          三十歳の日記(3/28-4/8)

          三月二十八日  なぜか早起き。すぐに洗濯機を回す。iMacで納品書と請求書を作り、プリンターに繋げて印刷してみるも、一枚プリントするのに十五分ぐらいかかる上にガビガビに印刷される。寿命だ。エアドロップでiPhoneに飛ばす。本をぷちぷちで包んでガムテープで閉じる。郵便局に。なぜか今まで通常の郵便を使っていたが、どう考えてもレターパックの方が安いので、そうした。スーパーに行き、食材をテキトーに買い帰宅。瓶を煮沸消毒している間に洗濯物を干す。りんごを洗って拭き、切り、ボウルに入れ

          三十歳の日記(3/28-4/8)

          三十歳の日記(3/19-3/26)

          三月十九日  俺が日記に好き勝手書いていることを永汐さんが「代わりに怒ってくれてる」と言ってくれた。 三月二十日  働き終え、風呂に浸かりながらハンターハンターのキメラアント編を読む。十二年ぶり。メルエムが「左腕を賭けて打たないか?」と提案して、コムギが「命でもいいですか?」と返す。そこでぶち上がり。風呂場で「うぉ〜い!!!」などと叫びその声が反響する。そしてじゃばじゃばと暴れる。最高のシーン。風呂から上がっても読み続け、最後にちょっとだけ泣いた。十二年前に読んだ時は泣かな

          三十歳の日記(3/19-3/26)

          三十歳の日記(3/10-3/19)

          三月十日  eydenの新しいアルバムを毎日聴いていて、今日も帰りながら聴いていた。強い論理とか強固な世界観があるわけじゃないし、言ってる内容も革新的でもないのにとにかくビートへの乗り方が気持ち良すぎるというその一点に尽きる。こんなタイム感を持ってる人は本当に珍しいと思う。ジャストなのに後ろノリな感じ。聴いてるとなぜか元気が出る。 三月十二日  起き、大雨の中すぐにコンビニに行き、請求書と納品書を印刷。帰宅。それらに捺印。本と一緒に包む。郵便局に。ゆうパックの伝票に宛先を書

          三十歳の日記(3/10-3/19)

          三十歳の日記(2/24-3/9)

          二月二十四日  新線新宿から丸ノ内線に乗り換える長い道のりで、犯罪をしながら金を稼いで生きていくことを考える。他人を傷つけて騙してでも楽な思いをして金を稼ぐこと、今の自分にはとっても魅力的だ。しかし実際にそれを選んだ友達は二度と戻りたくないと言う。奪い取っていいのは奪い取られる覚悟がある奴だけなのはお馴染みだが、我々パンピーにおいて重要なのは、「では勝ち確の略奪があるのならばそれを実行するか否か」という疑問です。私はやります。しかし現実にそんなものは存在しません。だからやらな

          三十歳の日記(2/24-3/9)

          三十歳の日記(2/4-2/23)

          二月四日  あまりにも疲れ果てて何も覚えていないぐらい物理的にも精神的にも追い詰められ、死を感じざるを得ない七日間だった。二十九日から現れた咳が一向に止まらず、しかし発熱はしておらず、三十一日に病院に行くとやたらめったら散らかりまくった病室でこちらを一瞥もすることないクソジジイのヤブ医者が「花粉症の咳でしょそんなの」とテキトーに言い放ち、花粉症の薬を出して、「絶対違うけどな花粉症じゃ」と怒りながら帰宅。本当に、心の芯から疲れ果てているというのに、更にそこにこういう風に蔑ろに扱

          三十歳の日記(2/4-2/23)

          三十歳の日記(1/4-1/21)

          一月四日  昨日はタイムスで日記を更新するとそのまま帳面を開いて短歌の続きを書いた。  帰宅して、iMacの前に座り、スクリブナーを起動する。iPhoneのメモ帳をAirDropでiMacに飛ばす。ワードを開いて、そこにとりあえず放り込んで行く。十四万字。膨大すぎて完全に頭が追いついてない。帳面を開いて、プロットの整理。コーマック・マッカーシーのおかげで自由さを取り戻したというか、好きに書いていいんだなというか、自分がおもろいと思う文字をただ書けばいいだけというシンプルな気持

          三十歳の日記(1/4-1/21)