【進路】行きたい学部がない


朝、勤務先に向かっていると、高校生が登校中に標題のようなことを言っていました。高校生に罪はないと思います。

高校での日常は、中学の延長のような受身の授業だし、生徒は大学の実態をよく知らないのだから、そんなふうに思うのも当然だと思うからです。

その点、東京大学の科類制や北海道大学の総合選抜制は、実に日本の教育制度にマッチしていると思います。幅広く様々な分野の科目に触れたあと、自分が決めた学問を専攻できるっていいですよね。

でも、様々な事情から、そうした大学を選べない人も多くいるのも事実だと思います。

今回は、行きたい学部がない人は何学部を選ぶのが適していそうか、自身の見解を書いていきます(幅広く学べて、かつ一定の専門性が身につくという点からメインに書きます)。


1.文系で最も幅広いことを学べる学部

経済学部です。海外では理系としてみなされる経済学ですが、他の学問との融和性が高く、さまざまな境界領域を学ぶことができます。
また、最近では理系科目で受験可能な大学もあります(京都大学、九州大学、慶應義塾大学など)。理系の方も、検討してみる価値があるかもしれません。

<法学的な講義>
憲法、民法、商法、経済法(いわゆる独占禁止法)、労働法、倒産法など

<文学的な講義>
経済史、経済思想など

<社会学的な講義>
社会保障論、厚生経済学、マルクス経済学など

<商・経営学的な講義>
簿記、会計学、経営学、マーケティング論など

<理系的な講義>
経済原論、ゲーム理論、統計・計量経済学、金融工学、農業経済学など

上記の通り、かなり学べることは広いです。好きなことや、追いかけたいと思える学問がきっと見つかるはずです。

他にも、近年では政策学系の学部だったり、具体的な名前を挙げると早稲田大学社会科学部明治大学情報コミュニケーション学部なども広く社会科学を中心に学べるため人気です。

ただ、社会人になって大学院進学を検討する場合などは、経済原論を応用した分析ができると選択の幅が広まるため、経済学部がイチオシになります。


2.理系で最も幅広いことを学べる学部

農学部を挙げます。近年、「農」という字面は受験生から敬遠されるそうで、「生物資源」とか「応用生物」「応用生命」「食料」などの文字が当てられていると聞いたことがあります。

生物学のイメージが強い農学部ですが、文理両方にまたがる幅広い領域を学ぶことができます。また、大学にもよりますが、理系のなかでは比較的単位が取得しやすいといわれていたりします。

<法学的な講義>
農業法、農政学など

<文学的な講義>
農業史、経済史など

<社会学的な講義>
農村社会学、森林社会学など

<経済・商・経営学的な講義>
農業経済学、森林経済学、漁業経済学、開発経済学、環境経済学、フードシステム論、農業経営学など

<工学的な講義>
農業土木、砂防工学、農業機械工学、農業IoT論、バイオマスエネルギー論など

<化学的な講義>
食品化学、発酵化学、栄養化学、生物素材化学など


特に、地方自治体での就職において、土木・農業土木職は倍率も低く採用されやすいです。

また、「農学系=他の理系と比べて就職弱い」と思われがちですが、データを見る限りそのようなことは断言できないと思います。

一例として、工学が有名な東北大学の進路を引用しました。東北大学の農学部と工学部、農学研究科と工学研究科を比較すると、進路不明または就職先がないことを意味する「その他」の割合は、学士・修士・博士の全課程において工学系が上回っています。

京都大学の農学研究科も、東北大学の農学研究科と同じような割合でした。


3.補足

上記の学部は、両方とも数学がある程度できることが前提にあるならばオススメできます。一方で、数学ができない高校生の場合、「ここに行っておけばとりあえず大丈夫」みたいな学部は正直ありません。

法学は、条文という公理から事案を照らして結論を導き出すという、極めて演繹的かつ数学的な学問です。
私自身が国家公務員総合職の試験を受けて気付いたのですが、都内の最難関私大に合格している人でも、数学を受験で使っていない人は、特に演繹的な思考が要求される民法に苦手意識を持っている方が多かった気がします。逆に判例暗記の要素が強い行政法や憲法は得意としている方が多かったです。

商学や経営学も、個別主体の最適行動を分析するミクロ経済学の概念が分からないと、単位はとれますが学問を芯から理解することは難しいと思います。

語学は、専攻の言語さえできれば何でもありです。逆に言うと、どれだけ賢くても、専攻の言語が学科内で相対的にできるレベルでないとつらいものがあります。
学部時代の友人(帰国子女・TOEIC無対策で900over)が、「英語できない奴は辞めてほしい。講義のレベルが下がって邪魔だから」と言っていたのを今でも覚えています。僕は英文科でしたが、努力する帰国子女には勝てないと悟ってそこで英語学習を放棄してしまいました。

文学は、興味がないならやめておいたほうが本当に無難です
実学志向の人間も適性がありません
数学ができなければ心理学科にも適性がありません
英語が好きという理由で英文科に行った私は、小説の勉強をする苦痛さを紛らわせるために法学・経済学・会計学等の社会科学と体育会活動に打ち込み、ただひたすらに学費をドブに捨てました。

小説が好きな人や教員になりたい人は楽しそうだったので、文学部自体の存在は否定しません。向いてない人は進学をやめたほうがいいし、在学中に向いてないことに気付いたら積極的に転部しましょう。

社会学部は、社会調査で統計が出てくるので、そこを乗り切るために数学の能力が必要です。そこさえ乗り切れば比較的ラクそうですが、卒論で統計調査を要求する教授に当たることもあるので注意しましょう。

数学ができない人は、進学前にしっかり自己分析をして、自分の興味があることを見極めてから進学する必要が特にあるかと思います。

最後まで読んで頂き、誠にありがとうございました。


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