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何となく不調は慢性炎症です

今回は、みらいクリニック院長である今井一彰氏の著書
「名医が教える 炎症ゼロ習慣 ~体内年齢が10倍若返る~」
という本の内容を紹介します。

前回、花粉症についての内容を紹介した時に、花粉症も精神疾患も
慢性炎症が原因だと書かれていました。
炎症という言葉は知っていましたが、種類があるとは知らなかったので、
初めて聞く慢性炎症というものをもっと詳しく調べてみようと思い、
今回紹介する今井先生の本に出合いました。

本題に入る前に、一般的に知られている炎症(急性炎症)
について確認しておきます。
急性炎症とは、キズや感染症、アレルギーなどの反応によって、
影響を受けた場所が赤く腫れて熱を持ったり、
痛みを感じたりする状態を指します。
しかし、急性炎症は重要な生理反応なので、無くてはならないものです。

例えば、転んで膝を強く打つとその部分が怪我をして赤く腫れて
しまいますが、体内では血液(白血球)が怪我をした部分に
押し寄せていき、修復作業が始まっています。
この急性炎症は様々な外傷や病原菌から身体を守るために、
人間(動物)に備わっている重要な機能です。

このような炎症ではなく、慢性炎症(隠れ炎症)は
私たちに「何となく不調」をもたらし、様々な病気の引き金に
なってしまうので、花粉症などの症状が出るのだそうです。

本の内容を通して、元気で健康に生きるための知識を
勉強していきましょう。





自覚が無いから気付けない

隠れ炎症によって老化や病気が引き起こされると言うと、
「そんな話は聞いたことがないよ」と思う人がいるかもしれません。
ですが著者は、日々の診察でコロナ後遺症の患者が自分一人では
診られないほど相談に来るので、このことを思い知らされています。

「最近やけに落ち込むんです」
「だるくて何もする気が起きません」
ということを話す患者さんが増えていて、驚くのは、
それが働き盛りの30代~50代の人ばかりというところですが、
中にはもっと若い10代の若者もいます。

熱が出ている訳でもないし、これといった症状も無く、
やる気がないのは自分のせいだと落ち込んでいる方も多いのですが、
そういう患者さんには次のように言います。

「やる気がないのはあなたのせいではありません」
「あなたのメンタルのせいでもありません」
「体の中の炎症のせいです」


実際に、来院する患者の98%に喉の炎症が見られましたが、
喉の痛みやイガイガなどの自覚症状がある人は4割程度で、
半分以上の人は自分の体内で炎症が起こっているということに
そもそも気づいていないのです。

そして、喉の炎症を治療すると、みるみる体調が戻り、
気分が明るくなる方ばかりです。
喉の炎症を抑えることでメンタルが回復するなんて、
そんなことがあるのかと思うかもしれませんが、
実際に隠れ炎症というのはそれほど恐ろしいものです。

炎症を鎮めることによって、とてつもなく大きな健康上の
メリットがもたらされるので、もしあなたに原因不明の
体調不良があるのなら、あなたのやる気や体力を
奪っている真犯人は、体内の炎症かもしれません。





炎症を無くして回復した患者さん

・コロナに罹った30代の女性

コロナから回復後、1年以上も体調不良を訴えていました。
毎日だるくて家事が出来ず、起き上がることも難しい。
犬の散歩も出来ない・・・

などの後遺症が続き、仕事も出来なくなってしまいました。
ですが、喉の治療を受けたところ、みるみる回復して4か月後には
すっかり元気になり、再び仕事に就くことが出来ています。


・40代 教員の男性

コロナ後遺症により苦しい症状が続き、様々な薬を試したものの
一向に改善されないため、遂には「心の問題かもしれないですね」
疑われて、精神科の受診を勧められました。

ところが著者が診察したところ、一目瞭然で喉に重度の炎症が
残っていたのです。
これを治療したところ、息苦しさが無くなり
以前と同じように仕事をこなせるほど元気になりました。



このような感じで、炎症を取り除くと体調が良くなる、
今までの体調不良が嘘のように体が軽くなるということを、
何人もの患者さんを診ていく中で経験しています。

体の炎症を取り去ると、皆さん一様に元気になり、
表情も明るくなりますから、たかが炎症と思って
放置すると痛い目を見ることになってしまいます。

そして、炎症が発生するのは喉だけではなく、
体内のあらゆるところに隠れ炎症が潜んでいる可能性があります。
これがくすぶっていると体力が奪われ、エネルギー不足になり、
病気をどんどん呼び込んでしまうのです。

さらに厄介なのは、この炎症は体内のあらゆるところに
飛び火していくので、もともと炎症が無かったところまで
炎症を起こしてしまうということです。
健康だった臓器を病気にしてしまい、病気があった所はさらに
悪化するという悪さを働きます。

そして、隠れ炎症は病気だけではなく、体の老化現象にも
大きく関係しているということが分かっています。






コロナ後遺症も炎症のせい!?

体内の同じ場所で長期間に渡って炎症が続いてしまうというのが、
本書のテーマである隠れ炎症(慢性炎症)です。
長引く炎症が、病気と深く関係していることが
最近明らかになってきました。

炎症が続くことによって、細胞や血管が傷ついて劣化して
いくため、病気を引き起こしてしまうのです。
例えば、有名な病気で言うと・・・・

・癌(ガン)
・心筋梗塞
・認知症
・糖尿病
・喘息
・関節リウマチ
・アトピー性皮膚炎
・うつ病

などの病気は、長引く炎症が原因です。

そして、コロナ後遺症も隠れ炎症が関係しているのではないかと
考えられています。
通常は、コロナに感染して急性炎症が起きて、免疫細胞がウイルスを
退治できれば炎症は収まり、体は回復する筈ですが、何らかの理由で
コロナをきっかけに炎症が慢性化してしまうと、ウイルスが検出されなく
なっても体調不良が続いてしまうという羽目になるのです。

著者のクリニックにも、コロナ後遺症だと思われる症状の患者さんが
たくさん来ますが、そのような人は次のような症状を訴えています。

・倦怠感や息切れ
・ぼんやりして集中できない
・物忘れ
・微熱
・嗅覚や味覚の異常
・うつ病

このように、隠れ炎症によって起きる病気というのは、
本当に様々なものがあります。

隠れ炎症の怖いところは、急性炎症のように強い症状が
無いということです。
そのため、「何となく調子が出ないなぁ」と感じることがあっても、
殆どの場合は自分で気づくことが出来ないのです。

自覚症状が無いまま同じ場所で炎症が続いてしまい、いつの間にか
細胞が破壊されて、臓器や血管の機能が低下していると分かってから、
初めて自分が病気になっていたことに気がつきます。
こういった理由から、隠れ炎症は静かなる殺人者(サイレントキラー)
と呼ばれることもあります。



例えば、隠れ炎症が原因で動脈硬化が進行して、心筋梗塞や
脳梗塞といった、命を脅かす病気に繋がってしまう危険性もあります。
今までは、血管の中で過剰な脂質が蓄積することが動脈硬化の原因で
あると考えられていたのですが、最近は隠れ炎症が動脈硬化の悪化に
関係していると分かっています。

他にも、肝臓の炎症が6カ月以上続いている状態を慢性肝炎と
呼びますが、さらに炎症が続いてしまうことで慢性肝炎から肝硬変、
肝臓ガンといった大きな病気に発展しやすくなってしまいます。

また、胃に慢性的な炎症が起こる慢性胃炎も、
長期間続いてしまうと胃ガンに発展してしまいます。
そしてもう一つ、感染症の恐ろしいところは、炎症が飛び火して
さらに別の病気を引き起こすという所です。

炎症が起こると「サイトカイン」と呼ばれる炎症物質が
作られるようになります。
この物質は、体内に異物が侵入してきたことを知らせて
炎症を引き起こす働きがあります。
免疫機能にとっては重要なものですが、炎症が長引くと
サイトカインが作られ過ぎてしまい、さらに炎症を促進します。

そしてサイトカインはそこだけに留まらず、炎症でダメージを受けた
血管に入り込み、全身の様々な病気のもとになってしまいます。
例えば歯周病が分かりやすいでしょう。
歯周病菌に感染し、炎症が起きて歯周病になると、炎症物質が
血管に乗って全身に運ばれることになり、様々な病気を
引き起こすということが知られています。

ここまで、炎症によって起こる病気をいくつか見てきましたが、
これはあくまで一部の事例です。
隠れ炎症は、全ての内臓や器官など、体のいたるところで
起きる可能性があり、炎症が全身に広がってしまうと、
体の機能がどんどん低下してしまいます。






隠れ炎症を引き起こす原因

隠れ炎症の原因は結構たくさんあります、例えば・・・・

・風邪をひいたときの喉の痛み
・歯周病
・胃炎
・虫による毒素
・排気ガス

など、外からの異物や毒素などが挙げられますが、
そればかりではありません。
体内で作られる物質が原因になることもあります。
それは、体の焦げと呼ばれる「AGE」という物質や、
体のサビと呼ばれる「活性酸素」などです。


・AGE

AGEとは、糖化というプロセスによって生み出される物質です。
糖とタンパク質が結びつく現象を糖化と言いますが、
糖化は老化の原因となる悪玉物質として知られています。

例えば、肌のくすみは皮膚のコゲです。
若い頃と比べて肌のトーンが暗くなってしまったのは、
AGEによって焦げてしまったからです。
また、肌のコラーゲンで糖化が起こってしまえば、
コラーゲンが変性して肌の弾力が失われ、シミやしわ、たるみの
原因になってしまいます。

糖化によって出来るAGEは細胞を傷つけてしまうので、
細胞が傷つけば体の防御反応として炎症が起きます。
炎症が日常化してしまうと、慢性炎症(隠れ炎症)になってしまうので、
体内の焦げを増やさないためには、糖質を摂り過ぎないと
いうことが極めて重要なポイントです。



・活性酸素

活性酸素は、呼吸によって取り込んだ酸素によって作られる物質で、
そもそもは私たちの体に必要なものですが、何らかの原因で
過剰に増えすぎてしまうと、正常な細胞を攻撃して
傷つけてしまいます。

体内には、増えすぎてしまった活性酸素を取り除く
抗酸化力が備わっていますが、この抗酸化力は年齢を重ねるにつれて
低下していくことが分かっています。

だからこそ、食事から抗酸化物質が含まれている食べ物を
摂取することが老化防止には重要です。



・肥満

脂肪細胞には、脂肪を蓄えるという役割がありますが、
その容量には限界があります。
肥満になってしまい、脂肪細胞のキャパシティを超えてしまうと、
細胞が破壊されて白血球の働きが活性化します。

さらに、肥満になると炎症を抑える物質の分泌が減ってしまうと
いうことも分かっていますので、これらが炎症の原因になります。

体のいたるところで慢性炎症を引き起こし、何となく不調や
老化に繋がり、最終的には深刻な病気になってしまうので、
「コゲ、さび、肥満」は改善していかなければなりません。






空腹を作りましょう

炎症を取り除くのに一番効果的なのは食べ物の選択です。
ですが、なにを食べるべきかという説明をする前に、
非常に重要なことを一つ申し上げておきます。

それは・・・

「食べ過ぎだけは絶対にNGである!」ということです。



体に溜まった脂肪は、それだけで慢性炎症の原因(肥満)に
なってしまい、食べ過ぎは「サーチュイン遺伝子」と呼ばれる
長寿遺伝子が働かなくなってしまうと分かっています。

長寿遺伝子は老化を抑えてくれる働きがありますが、
食べ過ぎるとこの細胞が働かなくなるので、
慢性炎症を抑えるという意味でも、老化を抑えるという意味でも、
食べ過ぎだけには気を付けてください。

また、食事をするタイミングにも注意をすることで、
慢性炎症を減らすことが出来ます。
皆さんは普段、どんなタイミングで食事をしていますか・・・?

おそらく多くの人が、お腹はそんなに空いてないけれど、
ランチの時間だからとか、夕食が出来たからといって、
本当の空腹ではないにも関わらず食事をしているのでは
ないでしょうか。
お腹が空いたと感じる時間を作ることが、長寿遺伝子の活性化に
とって重要ですから、食事と食事の間は長めに設定してください。

世の中では、規則正しく食事を取ることが重要だと言われて
いるかもしれませんが、1日3食にこだわり過ぎて
空腹でもないのに食事をしているというのは、
かえって身体の負担になってしまいます。


自分のお腹に耳を傾けて、空腹を感じてから食べることを、
今後は意識していただきたいのです。
いつもなら夕食を食べる時間であっても、まだお腹が空いていないと
感じているのであれば、サラダだけで終わらせるとか、
野菜ジュースだけで終わらせるというのも良いでしょう。
そして翌朝、しっかりお腹が空いたところで腹八分で
召し上がっていただきたいと思います。

食事の際には、慢性炎症の予防にとって重要な心掛けがあります。
それは「よく噛んで食べる」ということです。
食べ物を噛んでいる時に分泌される唾液には、活性酸素を除去して
くれる働きがあります。
多くの人は意識していなかったと思いますが、唾液は私たちを
守ってくれている、とても大切なものです。





炎症を取り除け!

それではここから、炎症を取り除くのに効果的な
食べ物の話に移っていきます。


・発酵食品

スタンフォード大学の研究によると、ヨーグルトやキムチなどの
発酵食品を多く摂取した人の腸内細菌が健康的に変化しただけでなく、
炎症を促進させるタンパク質の血中濃度が低下したという
結果が出ています。

つまり、発酵食品は腸を整えるだけではなく、慢性炎症を
減らすのにも効果的だったのです。


・ポリフェノール

炎症を引き起こす活性酸素を取り除き、酸化を抑える働きのある
抗酸化物質の代表がポリフェノールです。
例えば・・・・

・納豆
・豆乳
・豆腐
・高カカオチョコレート
・皮付きの生姜
・赤ワイン
・コーヒー
・緑茶

これらの食品にはポリフェノールがたっぷりと含まれているので、
こういったものを摂取することによって活性酸素を取り除き、
炎症を抑えることが出来ます。


・ターメリック

ターメリックと言えば、カレーに使われるスパイスとして有名で、
別名ウコンとも呼ばれている調味料です。
ターメリックには炎症を抑える効果があるということが
分かっていて、スーパーでも簡単に手に入りますから、
カレー以外の料理(炒め物やスープなど)でも積極的に活用して、
健康効果を実感していただきたいと思います。


・青魚の油

青魚にはオメガ3系の油が含まれていて、強い抗炎症作用と
抗酸化作用があります。
中でも、健康効果で有名なのは「DHA」「EPA」ですが、
これらが多く含まれている魚は、サバや鰯、サンマなどです。

魚の調理が大変という人は、缶詰を利用していただければ、
骨まで全部食べられるので便利です。


・キノコ

キノコはカロリーが低くて、セレン、銅、ビタミンB群が豊富に
含まれていることで有名です。
さらに、抗炎症作用があるフェノールや、その他の抗酸化物質も
含まれています。

ある研究では、キノコを加熱調理すると抗炎症化合物が
大幅に減少してしまうというデータがありますので、
生か軽く調理して食べるのが最善だと言われています。





これらの食品は要注意!

ここからは、炎症を引き起こしてしまうので
絶対に止めてほしい食べ物を紹介します。


・小麦粉(グルテン)

普段皆さんが主食として食べている、パン、うどん、ラーメン、
パスタなどの麺類ですが、実は慢性炎症を引き起こす
原因となることがあります。

日本人の約8割はグルテンに合わない体質だと言われていて、
グルテンのせいでお腹の調子が悪くなっていたり、
炎症が起きている可能性があります。
ですから是非、一定期間小麦を完全に止めてみる生活を送って、
体調がどのように変化するのか確かめてほしいと思います。

グルテンフリーの生活を送ると、

・胃腸の調子が良くなった
・食後の眠気が無くなった
・肌の調子が良くなった

など、体調が良くなったことを実感できた方は、グルテンによって
体内で慢性炎症が起きていた何よりの証拠です。
まずは1か月グルテンを止める食生活を試して、
体調に変化がないかチェックしてみてください。


・牛乳(カゼイン)

牛乳に含まれているカゼインというタンパク質が
腸に炎症を引き起こしてしまうので、海外を中心に
カゼインフリーの食生活を送る人が増えてきています。

牛乳の代わりに豆乳やアーモンドミルクを活用したり、
カゼインフリーのヨーグルトやチーズ、アイスなどが
日本でも市販されていますので、こういったものを
試してみるのも良いでしょう。


・すぐに甘いと感じる食べ物

血糖値を急激に上げてしまうと、AGEが作られて慢性炎症や老化に
繋がってしまうので、すぐに甘いと感じる食べ物は
避けなければなりません。
特に、加工食品には甘いものがたくさんあるので
注意してください。

また、果物はビタミンやミネラルを豊富に含んでいる
体に良い食べ物であると大規模な研究で示されていますが、
適量というものがありますので、摂り過ぎには気を付けましょう。


・植物油と種子油

大豆油など特定の植物油はオメガ6脂肪酸の含有量が非常に高いため、
炎症を促進すると考えられています。
オメガ6脂肪酸は、私たちにとって適量は必要ですが、
典型的な西洋の食事では大量のオメガ6脂肪酸の摂取が
問題であると言われています。

外食が多いという人は、特に気を付けてください。






大気汚染で炎症が起こる

私たちが体の中に取り込んでいるもので、最も多いのが空気です。
食事や飲み物が20%程度であるのに対して、空気は80%を
占めますから、取り入れる空気の質が身体に影響を与えると
いうのは至極当然です。

例えば、大気汚染が原因の病気に喘息などの病気がありますが、
大気汚染の原因となる物質が呼吸器を刺激して
炎症を起こしてしまうのです。
また、PM2.5などの微粒子は、肺の奥から血管に侵入して
動脈硬化を進行させると考えられています。

こうやって見てみると、大気汚染が原因となる病気は
どれも慢性的な炎症が関係する病気なので、汚れた空気が
慢性炎症を引き起こす原因の一つと考えて間違いありません。



終わり

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