石田 耕一(フェルデンクライスジャーニー)

国際公認フェルデンクライスプラクティショナー。Feldenkrais Journey主…

石田 耕一(フェルデンクライスジャーニー)

国際公認フェルデンクライスプラクティショナー。Feldenkrais Journey主宰。作業療法士。「からだ」と豊かな暮らしをつなげていくための場と関係性作り。https://feldenkrais-journey.com

最近の記事

【論文】愛の本質(The Nature of Love)〜ハーロウのリスザル実験より〜

1.はじめにタッチや身体接触はとても不思議で魔法に感じる時があります。 臨床現場ではクライアントへのハンズオンが「気づき」を生み、クライアントが動きを学ぶきっかけになったりします。 また療育現場でも、椅子には座れないが、膝の上で座って遊ぶことができたり、集団の場にいることができる子どもに出会う時がよくあります。 タッチや身体接触は奥深いし探求していきたいテーマでもあります。 先日紹介した図書館実験もわずかなタッチの効果の影響を見ることができました。 その中でも今日は、アメリ

    • チームはいかにしてゴールを見失わず、結束を保ち続けるかの前提を考える

      1.はじめにクライアントへのサービス提供において、チーム力の重要性が広く認識されています。医療分野を例に挙げますと、多くの病院では多職種連携体制を掲げ、医師・看護師・その他の専門職の協働を通じて患者・家族支援を実施し、彼らの暮らしを支えることを目指しています。 このようなクライアントを囲んでのチームアプローチは医療に限らず、子どもの支援や教育に携わる療育現場、学校、さらにはクライアントを抱えるあらゆる職種にも適用されます。クライアントを中心に据え、各専門職がそれを取り囲む

      • 【論文】手が触れ合う:対人接触の感情的および評価的効果〜図書館カウンターでの一瞬の触れ合い

        1. どんな論文か 図書館のカウンターでの一瞬の接触が、受け手の感情状態や触れた相手および環境の評価にどのような影響を与えるかを実験的に検証した。 https://psycnet.apa.org/record/1977-12773-001 2.研究対象と方法1)研究対象: 101人の大学生(男性52人、女性49人)が対象となりました。実験は大学図書館で行われ、被験者は単独で本を借りる学生に限定されました。実験は平日の午前、午後、夕方に行われた。 2)方法: ①実

        • 【論文】マインドフルネス瞑想トレーニングが内受容的注意の皮質表象を変化させる

          1. どんな論文かこの論文は、マインドフルネス瞑想トレーニング(mindfulness training,MT)が内受容的注意(interoceptive attention, IA)に関する脳の皮質表現をどのように変化させるかを調査したものです。 マインドフルネスの中でもマインドフルネス低減法(Mindfulness-Based Stress Reduction,MBSR)コースを修了した人々と待機リストにある未訓練のグループを比較し、瞑想の実践が内受容的注意を高め、脳の

        【論文】愛の本質(The Nature of Love)〜ハーロウのリスザル実験より〜

          無礼な行動が観察者に与える影響~創造性やパフォーマンスをどのように低下させるか~実験3

          無礼行動の影響は、観察者が競争関係にある場合どうなるか?無礼行動を取る人が、リーダーであれ、同僚であれ、その行動を観察する人にネガティブな影響を多々与えることをこの研究では実証してきました。 https://note.com/feldenkrais/n/nae12698e8708 さらにこの研究は踏み込んで実験をします。無礼行動の観察者の関係性に着目し、それが競争関係にある場合、協力関係にある場合はどうなるのかについても実証しています。 実験3の方法: 80人の大学生

          無礼な行動が観察者に与える影響~創造性やパフォーマンスをどのように低下させるか~実験3

          無礼な行動が観察者に与える影響~創造性やパフォーマンスをどのように低下させるか~実験2

          ある病院の看護師の会話 実験1(Porath, C. L., & Erez, A. 2009)では、実験参加者に権限を持つ実験者の無礼行動の影響を調べた実験でした。いわばその場に影響を与えるリーダーが無礼をとった場合と置き換えられます。 では、リーダーや上司でなく、同僚が無礼行動をとり、それを同僚が観察した場合はどう影響を及ぼすのでしょうか? この研究の実験2では、同僚からの無礼な行動が目撃者のパフォーマンスを低下させるかどうかを検証しています。参加者に直接権限を持たな

          無礼な行動が観察者に与える影響~創造性やパフォーマンスをどのように低下させるか~実験2

          無礼な行動が観察者に与える影響~創造性やパフォーマンスをどのように低下させるか~実験1

          ある会社員と先輩との会話 見えにくい無礼行動の影響を明らかにした研究 私たちの日常生活において、相手の尊厳や感情を軽視する行動が思いのほか頻繁に起こっています。例えば、「大声で怒鳴る」、「他人の意見を無視する」、「人前で他人を批判する」、「侮辱的な言葉を使う」などがあたります。他人の感情を考慮しないこのような発言や行動は、「無礼行動」と呼ばれ、職場や学校など、私たちが日々過ごす環境で発生しうる軽度の攻撃的な行動を指します。 しかし、何が無礼なのかは文化や状況によって異なり

          無礼な行動が観察者に与える影響~創造性やパフォーマンスをどのように低下させるか~実験1

          「すべての子供のすることは、子供なりの目的があることを念頭に置かなければならない」

          タイトルは、「保育要領ー幼児教育の手びきー」からの引用です。 子どもとの関わり方で「保育要領ー幼児教育の手びきー」は今でも大変参考になります。保育要領は、悲惨な太平洋戦争が終わって間もない1948年に作成され、文部省が出した幼児教育のガイドブックであり、戦後幼児教育改革の礎となっています。今、読んでも全く古くさくなく、むしろ子どもの成長のために輝きを放っているかのように思えます。  策定に大きく関与したのは、CIE(民間情報局:GHQ(連合国司令部)の部局の一つ)のヘレン・ヘ

          「すべての子供のすることは、子供なりの目的があることを念頭に置かなければならない」

          座ることのジレンマ〜身体的進化とセデンタリーライフスタイル

          Googleで“働く人”と画像検索すると、トップの画像はオフィスでパソコンに向かって座っている人々の姿です。(2023年9月時点) 「椅子に座る」行為は、生活していると当たり前のように思えますが、人類の歴史を生態学的背景の視点から見ると特異的であり、実は非常に新しい姿勢の取り方だということがわかります。 人類の歴史を2時間の映画にすると 人類の歴史(ホモ属含む)約700万年を120分の映画に換算してみましょう。 そうすると、前半は二足歩行を安定させ狩猟採集を行っていきます

          座ることのジレンマ〜身体的進化とセデンタリーライフスタイル

          「からだ」の宝探し!フェルデンクライスの冒険!

          今日は特別な冒険についてお話しましょう。 でもこの冒険、通常の冒険とはちょっと違います。 正解の地図(見本)もなく、探す宝も金銀や宝石なんかではありません。 この宝探しは、あなた自身の「からだ」の動きや感覚の中に隠された宝を見つける冒険です。その名はフェルデンクライスメソッド! ちょっと名前は長いですけど、きっと自分自身の「からだ」をもっとよく知ることができるでしょう。自分がどんな動きが得意で、どんな動きが難しいかがわかり、それが、仕事のコツ、スポーツでうまくなるコツにつな

          「からだ」の宝探し!フェルデンクライスの冒険!

          オランウータンの触れ合い遊び

          4月10日、多摩動物公園を訪れました。こんなに面白いところだったのかと感じ、結局朝から閉園近くまで過ごしてしまいました。 昆虫館の蝶々の楽園も素晴らしかったですが、なかでもオランウータンは面白かったです。 股関節の柔らかさや、ものをつかむに適した対立できる足のかたちなどの身体機能がすごいです。 中でも、親子で遊ぶ光景にとても興味を持ちました。 ヒトとオランウータンの先祖の分岐(約1,400万年前)は、ヒトとチンパンジーの分岐(約700万年前)よりもかなり前に起きているというの

          「感じないこと」は「感じること」と同じく尊い

          「感じないこと」も学びになる 「動き」のメタ認知は、快適なポジションに身をおき、自分の「動き」のプロセスを観察していく旅路です。フェルデンクライスメソッドのAwareness Through Movmentのコンセプトが元になっています。 その旅路の後で、それぞれの体験を共有する時間は興味深いです。 みなさんいろいろな感覚を共有してくれます。 などなど、豊かな身体感覚を表現してくれます。会話を続けていると、ある参加者の言葉がインスピレーションを呼び、「そういえば、確かに私も

          「感じないこと」は「感じること」と同じく尊い

          博物館のような小学校

          日曜日の朝、コーヒーを飲みながらふーっとひと息していると、ラジオから「今回は、アメリカ・ペンシルバニア州に開校した五感とデザイン哲学が融合した新しい形の小中学校に注目……」と流れてきて、一体どんな学校なのかと気になり、耳を傾ける。 ACROSS THE SKYという番組で、以下はナビゲーターの小川紗良さんが、学校の建築に携わったマイク・コーブさんと、ピッツバーグ子ども博物館のアン・キャレブさんにインタビューした内容と、サイトからの記事を交えてのものになります。 なぜ子ども

          「動き」のメタ認知〜WELL-BEINGを感じるための「目」のワーク

          「見る」という動きは、世界を理解し、生活していく上でも、創造性を発揮する上でも大切な体験の源です。つまり、ウェルビーイングに直結する行為です。 ウェルビーイングであるために目はどんな状態であれば良いのでしょうか? 一つあげるとすれば、目を快適に動ける状態にしておくことです。 目は常に動いています。 例えば、サッケードと呼ばれる瞬時の眼球運動が、文字や物体を追跡したり、周囲の景色の情報を取り入れる際に起こっています。 自動車免許がある方は、教習所でこのような動画で講義を

          「動き」のメタ認知〜WELL-BEINGを感じるための「目」のワーク

          自分の環世界を変えていく〜「からだ」のサインに気づくためのヒント④

          五感を研ぎ澄ませ、違いを感じるために刺激を少なくする 五感を研ぎ澄ませるにはどうしたらよいのでしょうか? でも、既に繊細な違いを感じ取って行動している場面もあるかもしれません。 買い物場面を思い出してください。 キャベツを買うとします。 ちょっと小綺麗な駅前のスーパーでは、1玉128円でした。 少し駅から離れた雑多なスーパーでは、1玉99円で並べられていました。 みなさんならどちらを買うでしょうか? 私なら、ちょっと歩いても99円の方を買うでしょう。 29円も差があります

          自分の環世界を変えていく〜「からだ」のサインに気づくためのヒント④

          自分の環世界を変えていく〜「からだ」のサインに気づくためのヒント③

          内からのサインと外からのサイン前回は、自分にとって「からだ」のサインと思うものをたくさんあげてもらいました。 3つしか、あげられなかった人も、たくさんあげた人もいるかもしれません。 軽さだったり、体重だったり、痛みだったり、疲れだったり、むくみだったり、他にもいろんな表現がもちろんあると思います。 そのあげたサインどうしのいろいろなつながりを考え、そして分類を考えてみるとおもしろいでしょう。 ここではある切り口で考えてみます。 それは、内からのサイン。外からのサインで

          自分の環世界を変えていく〜「からだ」のサインに気づくためのヒント③