石田 耕一(フェルデンクライスジャーニー)

国際公認フェルデンクライスプラクティショナー。Feldenkrais Journey主…

石田 耕一(フェルデンクライスジャーニー)

国際公認フェルデンクライスプラクティショナー。Feldenkrais Journey主宰。作業療法士。「からだ」と豊かな暮らしをつなげていくための場と関係性作り。https://feldenkrais-journey.com

最近の記事

「すべての子供のすることは、子供なりの目的があることを念頭に置かなければならない」

タイトルは、「保育要領ー幼児教育の手びきー」からの引用です。 子どもとの関わり方で「保育要領ー幼児教育の手びきー」は今でも大変参考になります。保育要領は、悲惨な太平洋戦争が終わって間もない1948年に作成され、文部省が出した幼児教育のガイドブックであり、戦後幼児教育改革の礎となっています。今、読んでも全く古くさくなく、むしろ子どもの成長のために輝きを放っているかのように思えます。  策定に大きく関与したのは、CIE(民間情報局:GHQ(連合国司令部)の部局の一つ)のヘレン・ヘ

    • 座ることのジレンマ〜身体的進化とセデンタリーライフスタイル

      Googleで“働く人”と画像検索すると、トップの画像はオフィスでパソコンに向かって座っている人々の姿です。(2023年9月時点) 「椅子に座る」行為は、生活していると当たり前のように思えますが、人類の歴史を生態学的背景の視点から見ると特異的であり、実は非常に新しい姿勢の取り方だということがわかります。 人類の歴史を2時間の映画にすると 人類の歴史(ホモ属含む)約700万年を120分の映画に換算してみましょう。 そうすると、前半は二足歩行を安定させ狩猟採集を行っていきます

      • 「からだ」の宝探し!フェルデンクライスの冒険!

        今日は特別な冒険についてお話しましょう。 でもこの冒険、通常の冒険とはちょっと違います。 正解の地図(見本)もなく、探す宝も金銀や宝石なんかではありません。 この宝探しは、あなた自身の「からだ」の動きや感覚の中に隠された宝を見つける冒険です。その名はフェルデンクライスメソッド! ちょっと名前は長いですけど、きっと自分自身の「からだ」をもっとよく知ることができるでしょう。自分がどんな動きが得意で、どんな動きが難しいかがわかり、それが、仕事のコツ、スポーツでうまくなるコツにつな

        • オランウータンの触れ合い遊び

          4月10日、多摩動物公園を訪れました。こんなに面白いところだったのかと感じ、結局朝から閉園近くまで過ごしてしまいました。 昆虫館の蝶々の楽園も素晴らしかったですが、なかでもオランウータンは面白かったです。 股関節の柔らかさや、ものをつかむに適した対立できる足のかたちなどの身体機能がすごいです。 中でも、親子で遊ぶ光景にとても興味を持ちました。 ヒトとオランウータンの先祖の分岐(約1,400万年前)は、ヒトとチンパンジーの分岐(約700万年前)よりもかなり前に起きているというの

        「すべての子供のすることは、子供なりの目的があることを念頭に置かなければならない」

          「感じないこと」は「感じること」と同じく尊い

          「感じないこと」も学びになる 「動き」のメタ認知は、快適なポジションに身をおき、自分の「動き」のプロセスを観察していく旅路です。フェルデンクライスメソッドのAwareness Through Movmentのコンセプトが元になっています。 その旅路の後で、それぞれの体験を共有する時間は興味深いです。 みなさんいろいろな感覚を共有してくれます。 などなど、豊かな身体感覚を表現してくれます。会話を続けていると、ある参加者の言葉がインスピレーションを呼び、「そういえば、確かに私も

          「感じないこと」は「感じること」と同じく尊い

          博物館のような小学校

          日曜日の朝、コーヒーを飲みながらふーっとひと息していると、ラジオから「今回は、アメリカ・ペンシルバニア州に開校した五感とデザイン哲学が融合した新しい形の小中学校に注目……」と流れてきて、一体どんな学校なのかと気になり、耳を傾ける。 ACROSS THE SKYという番組で、以下はナビゲーターの小川紗良さんが、学校の建築に携わったマイク・コーブさんと、ピッツバーグ子ども博物館のアン・キャレブさんにインタビューした内容と、サイトからの記事を交えてのものになります。 なぜ子ども

          「動き」のメタ認知〜WELL-BEINGを感じるための「目」のワーク

          「見る」という動きは、世界を理解し、生活していく上でも、創造性を発揮する上でも大切な体験の源です。つまり、ウェルビーイングに直結する行為です。 ウェルビーイングであるために目はどんな状態であれば良いのでしょうか? 一つあげるとすれば、目を快適に動ける状態にしておくことです。 目は常に動いています。 例えば、サッケードと呼ばれる瞬時の眼球運動が、文字や物体を追跡したり、周囲の景色の情報を取り入れる際に起こっています。 自動車免許がある方は、教習所でこのような動画で講義を

          「動き」のメタ認知〜WELL-BEINGを感じるための「目」のワーク

          自分の環世界を変えていく〜「からだ」のサインに気づくためのヒント④

          五感を研ぎ澄ませ、違いを感じるために刺激を少なくする 五感を研ぎ澄ませるにはどうしたらよいのでしょうか? でも、既に繊細な違いを感じ取って行動している場面もあるかもしれません。 買い物場面を思い出してください。 キャベツを買うとします。 ちょっと小綺麗な駅前のスーパーでは、1玉128円でした。 少し駅から離れた雑多なスーパーでは、1玉99円で並べられていました。 みなさんならどちらを買うでしょうか? 私なら、ちょっと歩いても99円の方を買うでしょう。 29円も差があります

          自分の環世界を変えていく〜「からだ」のサインに気づくためのヒント④

          自分の環世界を変えていく〜「からだ」のサインに気づくためのヒント③

          内からのサインと外からのサイン前回は、自分にとって「からだ」のサインと思うものをたくさんあげてもらいました。 3つしか、あげられなかった人も、たくさんあげた人もいるかもしれません。 軽さだったり、体重だったり、痛みだったり、疲れだったり、むくみだったり、他にもいろんな表現がもちろんあると思います。 そのあげたサインどうしのいろいろなつながりを考え、そして分類を考えてみるとおもしろいでしょう。 ここではある切り口で考えてみます。 それは、内からのサイン。外からのサインで

          自分の環世界を変えていく〜「からだ」のサインに気づくためのヒント③

          自分の環世界を変えていく〜「からだ」のサインに気づくためのヒント②

          ソムリエがワインを愛でるように自分の「からだ」を好きになる 前回は、インビジブルゴリラの動画を元に誘導される注意について考えました。リンク もし、この動画での課題が、ボールのパスを数えるのではなく、好きなことや興味のあることだったら、もっといろんなことを発見していたかもしれません。 ここでは、ワインが大好きなソムリエを例にして考えてみましょう ソムリエはワインからどんなことを感じ、気づいているのでしょうか? 1杯のワインからこんな表現をするかもしれません。 すごいですね

          自分の環世界を変えていく〜「からだ」のサインに気づくためのヒント②

          自分の環世界を変えていく〜「からだ」のサインに気づくためのヒント①

          誘導される注意動画をみてみよう まず、皆さんにやってことがあります。 この動画を見てください。 バスケットボールをパスする人が動画には流れます。 課題はこうです。 白い服を着ているひとが、バスケットボールを何回パスしたかを数えてください。 白い服を着ているひとがボールをパスする回数を数えてください。 準備はできましたか? では動画をみてください。 答えは15回です。 いかがだったでしょうか? でも、この動画で何か別なサインをを発見したでしょうか? 動画の途中にゴリラがでて

          自分の環世界を変えていく〜「からだ」のサインに気づくためのヒント①

          快適で小さな動きからセルフイメージを変えていく学び

          セルフイメージはどう改善していったらいいのでしょう? 自分!自分!って根詰めて考えると、タマネギの皮を剥いていくように、皮は次から次へと出てきます。 捕まえてやろうと思うと途端に逃げていき、消耗してしまうかもしれません。 でも「動き」に着目するとどうでしょう? 輪郭がある身体の「動き」は「思考」より明確です。 経験を伴うので、「この感じいいな」とか、「突っ張るなぁ」とか心地よさや違和感を感じることができます。 すなわち、フィードバックが伴い学習していくことができます

          快適で小さな動きからセルフイメージを変えていく学び

          古くからある生活の「動き」〜頭上運搬

          ヒトの祖先である霊長類が樹上生活をやめて地面に降り、二足歩行がはじまります。 アフリカ大陸から自由に世界へ移動していくわけですが、生きていくのに必要なものを運んだことでしょう。 ものの運び方には、持つ、担ぐ、背負うなど色々ありますが、原初的な方法で頭上運搬があります。 頭上運搬とは、頭の上に物を載せて運ぶことですが、ヒトが原初の頃から行われた理由として「複雑な運搬具を必要としないこと、野獣など外的に襲われたとき、荷物を放り出して逃げるに適していること」1)と推測できます。 今

          古くからある生活の「動き」〜頭上運搬

          日常の音をキャッチする〜ポテトチップス論文を読んで

          冬の朝。 霜柱を踏むとバリっという音がして、その感触が気持ちいい。 見つけてはどんどん踏んでバリバリした音がかえってきて楽しい。 緩衝材のプチプチを潰していくことも楽しい。 ボタンのようなビニールの気泡を押していくと、形が変わり、やがて弾ける音がして、その潰す感覚に病みつきになりそうだ。 自分から何かに働きかけて、触れてみて音がかえってくる感覚。 食べることも同じで、食感にも楽しさがある。 歯が食材にふれ、潰されていき、その音もあいまって味わい深い体験になっていく。 ポ

          日常の音をキャッチする〜ポテトチップス論文を読んで

          オノマトペの面白さ〜身体感覚を遊ぶように表現する

          世界は名前で溢れています。 名前がわかると、その対象に意識がむき、もっと知りたいという気持ちが沸いくることがあります。 例えば、誰かから観葉植物をもらったとします。 その名前が「パキラ」であることがわかれば、その概念を足がかりにコミュニケーションをすることができますし、「中南米の河川育ちであるので水に非常に強く根が腐りにくい」とか、「種には毒がある」という情報にアクセスすることができます。 身体感覚に名前をつける パキラのように実体があればわかりやすいのですが、名前をつ

          オノマトペの面白さ〜身体感覚を遊ぶように表現する

          情動(emotion)と感情(feeling)~よく行動するための生物的な理解

          行動をよい方向に誘導するにはどうしたらいいのでしょうか? コーチング、1on1ミーテング、ワールドカフェといった対話を重ねて気づきを促す手法がビジネスの現場では取られているかもしれません。 カウンセリング、認知行動療法、作業療法といったさまざまなセラピーが医療・福祉現場でも行われているでしょう。 いろんな「how to」がありますが、生活の中で生物としての人間に着目し、情動(emotion)と感情(feeling)を理解することは行動の助けになると思います。 情動(em

          情動(emotion)と感情(feeling)~よく行動するための生物的な理解