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座ることのジレンマ〜身体的進化とセデンタリーライフスタイル


Googleで“働く人”と画像検索すると、トップの画像はオフィスでパソコンに向かって座っている人々の姿です。(2023年9月時点)
「椅子に座る」行為は、生活していると当たり前のように思えますが、人類の歴史を生態学的背景の視点から見ると特異的であり、実は非常に新しい姿勢の取り方だということがわかります。



人類の歴史を2時間の映画にすると



人類の歴史(ホモ属含む)約700万年を120分の映画に換算してみましょう。
そうすると、前半は二足歩行を安定させ狩猟採集を行っていきます。身体は運動することに適した形に進化し、長い足と広い骨盤、立ち上がることができる骨格構造など、私たちの身体は動くために最適化されていくのが見て取れるでしょう。
映画開始から1時間15分たってよくやく道具を使い出します。動物の骨や石を利用して石器を作ります。それを狩猟や肉削ぎに使用し社会集団を形成し、コミュニケーションを発達させています。そして、移動しながら狩猟採集の技術を高めていきます。
そして、ようやく終了34秒前でホモサピエンスはサバンナをでる旅を開始します。
農耕を開始するのは映画終了13秒前であり、産業革命が起こるのは終了0.26秒前、オフィスワークを開始するのは終了0.1秒前となります。
 椅子に座って働く姿が見えるのは、映画のエンドロールの監督の文字が消えかける瞬間であり、ごくごくほんの最近のことなのです。

これまでの人類の大半の時間は「動く」存在として過ごしてきました。
私たちの祖先は狩猟採集社会を築いており、その生活スタイルは常に移動し、立って行動することを必要としていました。つまり、私たちの身体は数百万年にわたり「動く」ために進化し、そのことが遺伝的にもプログラムされています。


セデンタリーライフスタイル(Sedentary lifestyles)


セデンタリーライフスタイルという言葉があります。
これは「座りっぱなしの生活」と訳されますが、sedentaryという言葉には「ある場所から移動することがない、または頻繁に移動しない生物」を指すこともあります。

座りっぱなしの弊害について、すでにWHOは、

「年間約200万人が運動不足が原因で死亡しており、座りっぱなしのライフスタイルは、世界の死亡と身体障害の10大原因に入る可能性がある」と、すでに20年以上前に警告をしています。

人類が二足歩行を進化させ、狩猟採集の効率性を高めるために発達してきたことを考えれば、運動しないことは身体によくないことは納得いくことだと思います。
では、どんな運動が良いのでしょうか?
ジョギング、ヨガ、武術、スポーツ、筋トレ、フェルデンクライスetc

おそらく、自分を痛めつけなければどんな運動も良いのだと思います。
ただ、セデンタリーという言葉に「同じところにいる」という意味があるこことからわかるように、ずっと同じことをやっているとおそらく何か不調をきたしてしまうのではないかと思われます。「座る」のもある意味運動ですが、「座りっぱなし」は固定や緊張を引き起こします。
  

身体は、本来「動き」を必要としている


意志の力、思考のトップダウンで身体に命令するのではなく、悠久な生命プログラムに身を委ねて動くことを楽しむことは、自分の「動き」だけでなく思考も変えていくと思います。
でも、あまり根詰めて内観するのは緊張を高めてしまいます。
悠久な生命プログラムと言うと、高尚なことと思われるかもしれませんが、子どもの頃遊びを思い出すとヒントがありそうです。
子どもの頃、「動く」ことは自体楽しいことでした。赤ちゃんの頃は、他人の目なんか気にせずに床に転がり、ハイハイし、立ち上がり、子どもの頃の砂場遊び、鬼ごっこも純粋に楽しかったから自然に動いていたに違いありません。健康のために動こうとは考えなかったはずです。
そのことは自分の「動き」をより自然にし、より快適な身体の使い方を呼び覚ますでしょう。


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