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チームはいかにしてゴールを見失わず、結束を保ち続けるかの前提を考える


1.はじめに

クライアントへのサービス提供において、チーム力の重要性が広く認識されています。医療分野を例に挙げますと、多くの病院では多職種連携体制を掲げ、医師・看護師・その他の専門職の協働を通じて患者・家族支援を実施し、彼らの暮らしを支えることを目指しています。

図1 一般的なチーム医療


このようなクライアントを囲んでのチームアプローチは医療に限らず、子どもの支援や教育に携わる療育現場、学校、さらにはクライアントを抱えるあらゆる職種にも適用されます。クライアントを中心に据え、各専門職がそれを取り囲むように関わり、効果的な支援やサービスを提供する―――この体制の大切さは広く言われいます。

しかし、チーム連携の実現は言うほど容易ではありません。専門領域の背景の違いから生じる信条の相違、近年の人材不足による勤務形態の多様化、チームの年齢層の幅広さなど、チームワークを阻害する要因は少なくありません。さらに、先行き不透明なVUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)の時代と言われる今日、チームのゴールは揺らぎやすく、遠心力が働きやすい状況にあります。
このような困難な環境下で、チームはいかにしてゴールを見失わず、結束を保ち続けることができるのでしょうか?

その前提として大切なことの一つに、自分の価値観と職場の価値観を重ね合わせること、そして職場に「学び」と「気づき」の仕組みがあることだと考えています。これを図2にまとめてみましたので、以下に詳しく説明していきます。


図2 職場における学びの仕組み

2.個人の価値観と職場の価値観が重なりあう

個人には、身体状況を基盤にした自己イメージがあり、それが価値観を形成しています。そして、職場にも価値観があり、それは業務内容に反映されています。もし、個人の価値観と職場の価値観が重なりあっていれは、そこには真の働きがいが生まれます。自分のやりたいことと職場の目指すものが一致する環境では、個人は高いモチベーションを維持し、効果的なリーダーシップを発揮する土台を得ることができます。
この状況では、「学び」と「気づき」の仕組みが重要な役割を果たします。具体的には以下のような仕掛けが考えられます:

  • コミュニケーションを円滑にする仕掛け

  • 協働を促進する仕掛け

  • 経験から知恵を引き出す仕掛け

これらの仕組みを通じて、個人は自身の経験を深く理解し、新たな視点を獲得し、成長した自分を職場に還元することができます。そして、その「学び」と「気づき」の仕組みの相互作用を通じて、各個人と組織が互いの成長を支え合い、共に進化していく関係性を築けるようになれば、「このチームならできる」といったチーム効力感、職場の効力感に発展していくでしょう。

3.個人と職場の価値観の不一致

しかし、現実的には職場の価値観と個人の価値観が一致しないことはよくあります。この場合、以下のような問題が生じる可能性があります


図3 個人と職場の価値観の不一致
  • モチベーションの低下:自分のやりたいことと職場の要求にずれが生じると、仕事への意欲が低下します。

  • 生産性の低下:無理やり業務に当たることになり、効率的な働き方ができません。

  • メンタルヘルスの悪化:自己効力感が得られず、ストレスや不満が蓄積します。

  • 離職リスクの上昇:価値観の不一致が長期化すると、最終的に職場を離れる決断につながることがあります。

4. 自己効力感が高いが、職場に学びと気づきの仕組みがない

 自己効力感が高いことは個人にとって素晴らしいことですが、職場との関係性においては複雑な影響を及ぼす可能性があります。
 高い自己効力感は、困難な課題に立ち向かう勇気と能力を与えます。しかし、職場に魅力的な挑戦や働きがいが感じられない場合、能力のある従業員ほど他の機会を求めて離職する可能性が高まります。

図4 自己効力感が高くてもやりがいが感じられなければ離脱する


チームがうまくワークする前提として、個人と職場(チーム)の価値観が重なっていることが大切です。そのためには、「学び」と「気づき」の仕組みを通じて、個人と組織が共に成長できる環境を整えることが重要で、これは、共通のゴールを作っていく基盤となるでしょう。


<参考文献>


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