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ベンジャミン・フランクリン著、佐藤けんいち編集(2022)『フランクリン 人生を切り拓く知恵 エッセンシャル版』株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン

フランクリンの人となりを知ることが出来る

今年の2月にkindle unlimitedを利用したままライブラリに眠っておりました。どうやらリアルでも積読本が場所を取るように、kindleにもまだ読んでいない本をライブラリとして沢山集めてしまっているようです。

今回はアメリカ建国の父と称されるフランクリンについてのエッセンシャル版。このシリーズは、毎日の昼休みなどの短い時間を利用して読むのに適している分量で、しかもその題材となる人の考え方や生き方からヒントを貰う上では、とても重宝する内容を展開してくれます。

本書では、「はじめに」の部分と後半に、編集者の思い入れと感じられる解説があり、フランクリンを通じた当時の社会と、その繋がりとしての現代までを、ざっくりと俯瞰している記載があり、妙に納得してしまった。この辺の記述は、分量が多いと本題のフランクリンの印象を逆に薄めることにもあるし、分量が薄いとその必要性を問われるので、編集する際には難しいと思われるが、この作品に関しては理解促進に繋がっていると思われる。

本書でわたしが共感できた点では、本書の前半に集中しているが、まずはTime is money.の格言で有名であり、このシンプルな言葉は勉学や商売、その他ほとんどの人間の活動において十分すぎる奥深い内容を呈している。また「まえがき」では現代のイーロン・マスクでさえもフランクリンを高く評価しているようである。お金で言えば、お金はお金を生むそうである。

面白い知見で言えば、「いつもつかうカギは光り輝く」という点で、ぐうたらに過ごすのではなく常に頭を働かせて動かしているからこそ、それが輝くことに繋がるという点で、わかりやすい例えだと感じた。

多くの人は他人の自慢話は嫌がるくせに、程度は違えど自分には虚栄心を持っているという観点も面白い。みんな自分の自慢話は好きで、盛っているひとも多いことは現代人でも良く理解できるものである。

フランクリンは人生をチェスに例える言葉も残しており、その効用を述べているが、自分自身に置き換えると、小学生の頃に将棋が流行り、単なるゲーム的なものと思っていたが、それから得られる効用は、フランクリンがチェスを介して諭す内容とほぼ一緒のような気がした。ルールの中で考え、その中でも勝敗の潮目が変わったり、奇抜なアイデアはあまり実効性が無いのを知ったり、我慢して耐えることもまた理解できるというものである。

昨今の都知事選では無いけれど「論破する人は成功できない」という内容はごもっともである。「論争したり、反論したり、やり込めたりする人は、たいてい仕事では成功しないものだ。そういう人たちは、ときには勝つこともあるが、人から好意を受けることはない。実社会では、後者のほうが、はるかに大事なのだ」という内容はまったくそのとおりである。故に賢いビジネスマンなどは、相手に逃げ道を用意して完全論破を避けるし、物事を成すために、あえて議論に負けてあげることで、成果というか果実を受け取るのである。

その他、反対している者を友達にする方法や、自分が絶対正しいということはありえないこと、すべての人を満足させることは出来ないこと、理論だけでは人は変わらず自分が変わるためには方法論が必要なことなど示唆に富む内容が掲載されている。

また、食事に関する内容が掲載されていた最後に、結局のところ通風というオチは、なかなか面白かった。

本書の内容を膨らませて、フランクリンを通じてアメリカの資本主義を学んでいくような本があると面白いかも知れない。まだまだフランクリンの人としてのさわりの部分だけを知った感じなので、これからフランクリンをじっくりと学びたい興味が沸いてくる不思議な感覚を持った良い読後感だった。

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