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【1分フィクション】

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1分以内で読み切り可能なフィクション作品集。 2022年1月より週1本追加しています。(2024.4時点) 追記:2024年度は不定期更新
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2023年6月の記事一覧

紫陽花な君へ

紫陽花な君へ

紫、藍、薄紫

土壌によって移り変わる色彩

どれもこれも君を思い出してしまう

掴もうとしてもスルリとかわされるのに
ふと気がつくといつの間にか隣にいて
俺の心を優しく撫でる

そんな色

よく笑顔を向けて微笑む君は
俺だけに見せてくれているわけではなくて、
誰にでも優しい顔をした。

本当の君の顔は?

色が崩れ落ちてしまうその前に
君の真実をみてみたくなった。
この俺が君の色を剥がして
丸裸

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夜散歩、月明かりの空へ

夜散歩、月明かりの空へ

ビルの隙間を縫う路地裏に
透き通る風が肌を掠める。

昼間の日光に温められ籠ったアパートの空気と違い
外の空気は一段と澄んで爽やかだ。

今日、どんな1日だった?

ふと気が緩むと、頭の中の君は現れる。

何もかも上手くいく日もあれば
何をやっても悪くなる日もある。
バランスのない曖昧な感情の揺らぎは
まるでギャンブルのお遊び。
どれもこれも、運次第だよ。

頭の中の君に答える。

答えになってな

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消しゴムに残る君の名は

消しゴムに残る君の名は

引き出しの奥から出てきた
使いかけの消しゴム。

懐かしさが込み上げる。
小学生の頃好きだったちょっと変なキャラクター。
なんでこのキャラが好きだったか
今はもう思い出せない。

そんなキャラが描かれたカバーを外すと
私の名前とハート、そして別の人の名前が現れる。

どきん

心臓の跳ねる音。

そして思い出す初々しい気持ち。

あの頃、私は恋をした。

かっこよくて、優しくて、足が速くて。
そん

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真面目ちゃんは、嫌。

真面目ちゃんは、嫌。

「真面目だね」

他人から見た私は
とてつもなく窮屈なのだろうか。

「真面目だね」

それとも、
羨ましい対象として見えるのだろうか。

「真面目だね」

もしかしたら
ただの印象でそれ以上でも以下でもないのか。

そんなこと考えても意味のないことだと
わかってはいたけれど。
それでも考えずにはいられなかった。

ま、じ、め。

この三文字で私は作られてきたから。

マめに記録をつけ始めたのは、

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