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107ヵ国で1位を達成したアプリから見えてきたARと教育の可能性

AppleがiOS10を発表した時、iPhoneカメラと連動してARコンテンツが作れるARKitが含まれていた。カメラで見る現実空間に擬似的なオブジェクトを配置し、あたかもその擬似的オブジェクトが現実空間に存在しているようにできる。これは!新しい技術には新しい表現の可能性があると思い、早速チームにARを使った教育アプリを作ろうと伝えた。

そもそもAR技術は新しくない

AR技術は特に新しい技術ではなく、かなり前からあった。弊社が主に使っているUnity3DではiOS10以前にVuforiaを使ってARを作ったりもしていた。その時のARの作り方は「マーカー」を使った技法になる。「マーカー」とはカメラがARを表現するために必要な模様の事。例えばARが見える本は、「このアプリをダウンロードして、このページを見よう」と書いている。ダウンロードするアプリには、本のページが「マーカー」として登録されており、認証するとARオブジェクトを表現する仕組みになっている。そのため、カメラが「マーカー」を見失うと認証が出来ないためARオブジェクトが消える。この専用アプリ+マーカーという2つの道具が揃わないとARを体験できない事になっていた。
ARKitが大きく違ったのは、この「マーカー」が不必要な事。カメラが見ている空間の平面を感知し、そこにARオブジェクトを配置し記憶する。凄いのは、カメラを180℃回転して完全にARオブジェクトを見失っても、振り返ればまったく同じ場所に残っている。このアプリだけで完結できる手軽さと、カメラの自由な動きに大きな可能性を感じていた。

教育のARコンテンツを考えよう

ではどのようなコンテンツを作るかチームと悩んだ時に、まずARだからこそ体験できる事を教育に入れてみようと決めた。
それは「動き」。
どうしてもアプリやゲームで遊んでいる子どもを思い浮かべると、スマホに向かって悪い姿勢で、しかも画面を見つめたままの姿になってしまう。それを変えて、子どもが動き回っているアプリを作ろうと。前回の投稿にも書いたが、体を動かし覚える事を得意とする学び方もあるので体を動かしながら計算するアプリが良いなと思い開発を開始。

そこで作ったのが「算数忍者 AR」。中に浮いている計算式を見て、その解答をもっている村人を探すとても単純ではあるが効果的な内容のものだった。AR空間に上手く村人を隠し、歩き回らないと見つからないようにステージを設計した。

当時の開発中画面がこちら:

全世界にリリース

最終的には複雑化されたステージモデルを2つほど追加し全世界にリリース。2018年7月20日には「6-8歳 子どもランキング」世界107ヵ国で1位を獲得!ここまでの効果をまったく予想していなかったので嬉しい報告となった。

無料で遊べます:

ARKit2対応の新ARアプリ

そして去年、AppleがARKit2をiOS11に含めるという事で新作のARアプリを作る事に。ARKit2では複数ユーザーが同じAR空間で遊べるというマルチプレイ機能が可能になった。
「算数の学習を複数ユーザーで競える」というのを新アプリの課題に決定した。どのように競って、それがどのように学習につながるのか?今回は前回以上にアイディア出しに苦労し、何度も企画を作っては却下を繰り返した。

最終的に決めたのが、こちらのアプリ「算数忍者〜箱かぞえの巻〜」

無料で遊べます:

子ども向けイベントとAR

去年12月に子どもが集まるイベントにブースを出展。3x3メートルの空間にARを使った3Dの街を探検できるアプリを開発。3日間で1200人の子ども(大人も)に楽しく遊んでもらい、リピーターも続出。ARの魅力をさらに理解できる良い機会となった。

ARと教育の可能性

「新しい技術には新しい表現の可能性がある」と信じて作ってみたARアプリは子ども達に違う体験を通じた学習を与える事ができた。ただ思うのは、ARが凄いとか教育にベストマッチするという事よりも、ARが新しい表現が出来る技術であって最終的にはアイディアが一番大事だという事。もっともっと良いアイディアで作ればさらに教育とARの可能性は広がる、そんなアプリをこれからも作っていきたいと思っている。

ファンタムスティックでは「学ぶ」プロセスを省き、ゲーム感覚で繰り返し問題を解いていく事で「継続できる学び」につながるアプリを開発しています。
https://www.fantamstick.com/

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