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【ブックレビュー】江上隆夫著『降りてくる思考法』

―フレームを外すためのワーク集
立ちはだかる壁の乗り超え方を徹底的に考えた実践書

タイトル:降りてくる思考法 世界一クレイジーでクリエイティブな問題解決スキル
著者名:江上隆夫
出版社:SBクリエイティブ
発行年月日:2016/10/25

久しぶりにフルverのブックレビューとなる。本書については、こちらのnoteでも少し触れた。

広告代理店アサツーディ・ケイから独立した後、クリエイティブ・ディレクターやブランド・コンサルタントとして活躍する江上隆夫さんが、48の方法論を元に“降りてくる”感覚に様々な角度から迫る一冊。

昨今、ビジネス書の世界でも人気のジャンルとなっているのが、いわゆるフレームワーク本である。ところが、江上さんはこのフレーム(ワク組み)こそが、アイデアの阻害要因であると喝破する。そして、そのワク組みを乗り越えるためには、脳の無意識領域を意識的に活用することが必要だと説く。

その実践方法として、48のスキルを紹介。
「メタ思考をうながす」⇒「ワク組みの自動実行をストップする」⇒「無意識の発酵期間を設ける」
これらが促されることによって、“降りてくる状態”を脳内環境につくることを目的にしている。

正直なところ、48のスキルを順に追っていくと、中盤あたりに少し停滞してしまう部分がある。ただ、そこをガマンして乗り越えれば、スピードに乗ってラストまで読み進めることができる。

48のスキルには、それぞれ具体的なエピソードが挿入されている。江上さんご自身が体験されたエピソードは秀逸だが、それ以外のエピソードは有名なものが多い。

たとえば、佐藤優さんのように、紹介されるエピソード自体がリベラルアーツとなっていて、ゾクっとするような感覚はあまりない。ビジネス書を読み慣れている方は、少し物足りなさを感じるかも知れない。

ただ、48のスキルを理解するためのものだと割り切って読み進めれば、それほど苦痛にはならないだろう。

◇文章の上手さ★★★★★
◇表現の美しさ★☆☆☆☆
◇情報の豊富さ★★★★☆
◇内容の面白さ★★★★☆
◇全体の難しさ☆☆☆☆☆

江上さんの豊富な実体験から、立ちはだかる壁を徹底的に見つめる真摯な姿勢がよく伝わってくる。決して上から目線の本ではない。大切にすべきアイデア、ボツにすべきアイデア、相手がいるビジネスでの押し引き、その辺りは非常に生々しい。

そういった、立ちはだかる壁を乗り越える方法を抽象論や精神論ではなく、具体的に提示している。理屈の先にあるものを捉え、それを言語化することに見事に成功した本であると感じた。

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