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「生涯学習」と「生涯学習の社会的振興」について



〈目次〉
1.「生涯学習」について
(1)生涯学習とは
(2)長い人生を通しての継続的な学び 
(3)生涯学習の必要性と有効性 
2. 「生涯学習振興」について
(1)社会における「生涯学習振興」 
(2)「学習成果の発揮」の社会的な振興



1.「生涯学習」について
(1)生涯学習とは
「生涯学習」という言葉は、「生涯」と「学習」という二つの単語の組み合わせによって、成り立ってます。

この組立合わせどおり、「生涯学習」とは、基本的に「一生涯をかけて学び続けること」を意味すします。

現在、生涯学習のイメージとして、「高齢期の生きがい活動」が目立ってしまっています。

また、成人が自発的に学習することを生涯学習と思い、子ども時代に受ける学校教育を生涯学習から除いてして考えてしまっていることも多いです。

もちろん、成人期や高齢期の学習は、現代の教育政策のあり方としてとても重要です。

しかし、人生の後半のみを生涯学習として限定して理解することは、正しくはありません。

生涯学習という営みは、ある個人が生を授かってから終わりを迎えるまで、長きにわたるのものです。


(2)長い人生を通しての継続的な学び

一人の人間としての生き方について、生涯学習の大切さは、古くから繰り返し言われてきました。

中国の『論語』によれば、儒教の始祖の孔子は、15歳で「学に志す」ことになって、70 歳で「心の欲する所に従って、矩のりを踰こえず」 という状態になった、つまり自分の思うがままにふるまっても道から外れなくなったようです。

また、江戸時代末期に88歳で亡くなっ た儒学者の佐藤一斎の著書『言志四録』には、“少わかくして学べば、則ち壮にして為す有り”に始まり、“壮にして学べば、則ち老ゆとも衰へず”に続いて、“老いて学べば、則ち死すとも朽ちず”で締める有名な一節があります。

ここには、 人間として生を得て、その最終章へと向かう個人にとって「何歳になっても学び続けること」それ自体に価値があるという発想が脈々 と流れています。

「学びの適齢期」は決して乳幼児期や青少年期に限られません。長い人生を通じて「学び足し」や「学び直し」 を繰り返せばよいと思われます。

(3)生涯学習の必要性と有効性
現代社会は、まさに大きく変わり続けています。また、その変化の速度が単に速いだけでなく、加速度を増しています。

そして、変化の方向は不確定要素が多く、予測がつきにくくなっています。

その一方で、現代の多くは人々は長生きする可能性が高まっています。

かつては、短い人生で、 あまり大きな変化を経験しないまま生を終える人が多数の時代でした。

しかし、現代の高齢化社会おいては、長い人生を送る中で様々な変化を経験ことになると思われます。

高齢者になっても、既得の知識の活用だけでは追いつかず、あらたに学ばなければならないことが増えつつあります。

例えば、次々と新しくなる情報機器の操作といったものもそうですが、いままで経験したことがない事柄も増えていくことと予想されます。


2.「生涯学習振興」について
(1)社会における「生涯学習振興」
現在、一般的に、生涯学習は、個人の営みとされています。生涯的に学習を継続するか否かの判断は、個人の意思によります。

一方で、社会の変化が激しくなっても、この状況への対応は、基本的には個人の責任とされてしまいます。

ただ、個人が生涯にわたって学習しやすい環境を整える責任は、国や地域にあるはずです。

生涯にわたって「学び続ける機会を得たい」と希望する国民が多くなれば、その要望をかなえやすい、社会的基盤が求められています。

一人ひとりの国民そして地域住民が、生涯にわたって学習を進めることができるように、国および地域がしっかりと環境を整えることが必要です。


(2)「学習成果の発揮」の社会的な振興
そして、これからの持続性ある社会を築いていくためには、個人が学習したことを、自分の中に留めておくだけでなく、何らかの形で社会に向けて発揮・貢献していくことが求められるでしよう。

そのため、国や地域においては、個人の「学習・学習活動」だけでなく、その「学習成果の発揮」についても、社会的に振興を進めるべきでしよう。

個人の「学習・学習活動」の振興は、「学習成果の発揮」の振興につながります。まさに好循環が期待できます。

加えて、このような「社会的な仕組み(好循環)」がしっかりと機能するためには、地域における住民間の交流が培われていることが大切と考えます。



参考文献:  
国際文化研修2017秋 vol. 97
特集/研修紹介 研修 1 生涯学習によるまちづくりを考える
「生涯学習まちづくり」の理論と実践
~「学びあい」を社会的に振興する必要性と有効性~  
宇都宮大学地域連携教育研究センター  
佐々木 英和 教授 

以上

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