記事一覧
nos interdiscentes
まなびあえるさいわいに
いつになれば
おもいいたるのか
自分のために学ぶものは
いくらもどこにもいるだろう
自分のためと学ばせる親も
数限りなくはびこっている
ひとを押しのけ生き抜くために
まなぶことしか生まれてこのかた
教わったことのないおとなは
どれだけいるだろう
この社会を
自分の頭で
自分の足で立って
考え作り変えていくために
みながみな
だれもがだれからも
まなびあえる自由とさいわいを
lied van bloemen
くさばなはうたい
樹々は楽をかなで
風にからだを揺らす
こころもからだも
みなをまねき
歓待する
なまえを生きているけど
自分からは名乗らず
ことばで応答せずとも
姿のうちに
四季の移りゆきにあわせ
四季の歌うたい
天の響きを伝えゆく
voluntary slavery
自由なひろば
かけまわる野原
こどもだけ
自由勝手に作られた王国は
おとぎ話になった
この世界に生まれてきたのに
生まれた途端に
国に大人に囚われ
小さな大人として
大人の自画像を生きらされ
どこもかしこも
無表情の兵舎か鶏小屋に
家から追い出され
閉じ込められ
毎日毎日奴隷のように
黙従するあやつりに
つくられるため
唯一自由寝具宇宙をはぎとられ
てくてく
とぼとぼ
歩かされ
整列させられ
すわ
vestigia vivendi
ひろばではねまわるおさなごら
頭から天に向かって生きる
ああ遠く過ぎ去ったことと
今を笑い飛ばすことに
知恵まわし
次から次
繰り出す話に
うれしくもにがく
かなしくもあまく
あかるくもすっぱく
だれからも話止めず
時に目一杯悪ぶり
ののしりこぶしをつくり
時にこみあげるおもいに
なみだをそそぎ
時に顔を歪め
おい詰まりいのちを断たんばかりに
嘆きに沈む
今を笑いにつどう三すじの航跡
昨日までは続
brutal desire myth
かわきの限界
もうこれ以上耐えられないからと
いのちは失いたくないからと
目にした湧き水に
ともをはねのけ突き倒し
のどをうるおす
ひとはそんなことはしない
飢えの限界
もうこれ以上たえられないからと
自分の命は百万倍愛おしいからと
はらからの手にするパンをぶんどって
はらからを撲殺する
ひとはそんなことはしない
ひとのいのちを軽んじるのは
うえやかわきの限界の前から
欲望になりふりかまわず暴力を
inania memoriae
君は記憶の空隙をのぞきに行ったかい
ちょっと素敵な思い出たどって
味わってごらん
いつもどおり
今までどおり
とてもしあわせな気持ちになれたかい
では今度はわたしが一緒に
その始まりはいつだったの
ここね、ものがたり、ここで始まったのね
君の後ろで同じ景色を見ていたひとが
ほらあそこに、君には見えにくかったけど
でも熱中していたのは、見たくなかったからかも
あのひと忘れていたの
見覚えあるんだ、立
esprit sans entrave
注がれたコーヒーの向こうから
まわりの雑踏にも哄笑にも
紛れぬしなやかな響き
日々、顔合わせるとき
時の流れを充溢して
奏でられるディアローグ
初めて出会い
初めてことばを交わすかのように
とつとつとおずおずと
なにも定められていないかのように
ふみしめられながら
その日そのとき
互いに生きるこの世界で
逃げようもない問いに
笑いで逸らす迎合を断ち
だれがだれを責めかかるのでなく
自分こそはと証言
compaignon
この世に生きる手だて尽きるとき
よわきもの
ちからなきもの
まずしきもの
やまいに陥ったもの
からだの自由こころの自由喪失したもの
みないかになせば
パンとスープにありつけるのか
手だてが尽きているのが
だれの目に見えていても
働いてお金を稼いで
ものを買えと
ルールを忘れるなと
棍棒誇示して立ちはだかるのか
パンを配るために
パンをみな分かちあうために
君らは貧しきものに雇われている
富めるもの
aventure nocturne
よるのとばりに天空の星またたき
ともにつどいとなりにならび
未来に向かい泳ぎいでる
交わすことばにこころひびきあい
世界をおりなすあやをとき
世界の現相にひるむことなく
あらがいたちむかい声かけよびあい
おしよせる波濤に声うちけされても
たがいのいのちをささえつつ
ふれあいにつつまれて
世界地平の向こうへ
おたがいの生きたあかしを
きざみゆく
violence insensée
敗北の朝
敗因は自明のものだった
あの時あそこで
だれがこれをこうしておけば
そんな反省をすること
無駄だった
敗北は戦う前に決していた
理念なき集団に勝利はない
だれが何のために
だれのために戦っているのか
本気で考えたこともない
戦う前にともに戦う友の前で
何を語るべきか
ひとの戦いの歴史も知らず
ただ無言でしたがうあやつりと
生きた戦いがなせると
見誤ったとき
戦いは決していた
戦いは殺意を
ἀπαιδευσία
こどもはあしたをつくる
この地球が終わりかけて
あと100年先も見えなくなって
目に見えないこどもに気がついた
されどそれはほんの限られたところに
止まりつづけ
地球がおわりつづけていることも
人類がみずから首をしめていることも
うすうす気づきながら
おとながこどもをそだてることも
みずからおやになるまなびもわすれ
こどものまえで
こどものてをひきながら
平気でしてはならないことをし
まわりからみ
εἰς τὴν ἀγοράν
雑踏のなかに
なにを求めて
埋没するか
都市化されて
単純化されたルーティーンに
埋没する労働が
からだに染みこみ
それがそのひとを
つくりあげ
埋没することに
意味もなく向かう
集合生物
作られたエンターテインメントの中に
作られた祝祭の中に
自分の解放を求めて
埋没する集合生物
作られた消費
作られた埋没
作られた自己解放
すべてはひとを商品化したがために
雑踏に埋没する中に
商品化を脱する手
cutibus mutatis
季節がめぐりめぐって
ころもをぬぎかえるように
はだかの自分を
ぬぎかえようと
ひとつの自分を
この肌からそぎおとすと
ひりひりいたみ
いままでの
うらみつらみ
うそいつわり
その時のにがみくるしみを
いまに改めてはだに
きざんだ
わたしは鏡のなかで
まだまだ哀しみを
たたえていた
愛された子ではなかったと
泣き始めていた
わたしはさらにころもを
ぬぎかえるように
素のままの自分を
ぬぎかえようと
dormiens pennata
手も足も
もはや自分のものだということも忘れ
全身すみずみ
からだの奥まで
眠りにひきこまれ
どこに来たかも
いつからだったかも
どこにどうして打ち伏せたかも
憶えぬまま
すべて自分の持続が消え失せる時
うつりゆき
眠りの底の底にいたって
数えられぬ時の果て
突如目もあざやかに
灼熱の砂漠に立って
焼けつくような足を
砂にとられつつ
歩むや数歩
背を鷲掴みされて
大空に舞い上がる
さしつらぬく光の
monologists
あなたもわたしも
生きている
すべてをそのままに
何かがつつみこんで
外から見守られなければ
この世界は立ち行かないのか
もしそうだとしても
だからといって
あなたもわたしも
生きているその違いを
打ち消し
みんな何もかも
ひとしなみに
ものとして支配する道具に
この世界がしばられて
いかなければならない
そんなことには
ならないけれど
どこまでいっても
いつの世でも
だれでも
おたがいのちがいの