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【読書】天才と凡人の違い/「天才! 成功する人々の法則」から

日本でも天才と呼ばれる人たちは大勢いる。結局生まれ持った才能なのか?「凡人」は「天才」にはなれないのか?に答える一冊。

記事要約

  • ひとえに天才と呼ばれる世の成功者達(例: トップアスリート、音楽家、実業家)。その成功要因を掘り下げる一冊。

  • 各界で天才/成功者と呼ばれる人々らの経緯を比較分析すると、努力や遺伝だけでなく、家庭・教育環境等を含む運要素が重要な成功要因。

  • これら成功要因が重なると累積的優位性に繋がり、音楽なりスポーツなりで成功するために必要な一万時間の練習が可能となる。




1.本の紹介

今日の一冊は、米国コラムニストであるマルコム・グラッドウェル著の「Outliers - the story of success」(2008年刊行)。邦訳あり(「天才! 成功する人々の法則」2014年刊行、講談社Book倶楽部)。

天才と呼ばれる世の中の成功者達。彼らはいったい何者で、どこからやってくるのか?世の中で天才と呼ばれている人たちは、生まれつき類い希な頭脳や才能に恵まれた人で、凡人がどれだけ頑張っても無意味なのか。あるいは、凡人でも努力で何とかなるのか。

感覚では、両方大事だよね、ということになる気がするが、果たしてそうなのか。努力or才能という永遠の命題、そんな命題にメスを入れた一冊。

刊行から14年が経過、著者はあらためて天才や社会的成功とはなんたるかという命題を再考、ポッドキャストで発信している。


2.本の概要

著者は、様々なデータや研究結果を参照しながら、幸運という要因に焦点を当てる。同じIQレベルであっても、大成功する人と、そうでもない人がいる。生まれ、場所、家庭環境等のいわゆる運要素が強い要因が、その原因だとのこと。

例えばIQの高さが成功要因と考えられているビル・ゲイツ。しかし彼の人生を振り返ると、才能や努力といった要因だけでなく、家庭環境(裕福な弁護士の父等)や教育環境(ハイスペックのパソコンが備え付けられたシアトルの有名私立校等)、友人、その他様々なopportunityが積み重なり、成功への連鎖Accumulative Advantage/累積的優位性)となっていった事が分かる。彼と同等の頭脳を持った子どもたちでも、これら成功要因が累積しないと成功しないのである。

年初に生まれることも、成功要因の一つとなる。アイスホッケーや野球、サッカー選手の多くは、年初(1-3月)生まれであることが分かる。年初に生まれた方が、同学年の学生と比べ体の発達が早くなるため、スポーツコーチの目に留まりやすくなる。スポーツコーチの目に留まると、練習に打ち込める環境(ユースクラブ等)が整い、より成功しやすくなるという。

スポーツにせよ、音楽にせよ、コンピューターにせよ、それぞれの世界で成功し活躍するには、1万時間の訓練が必須ということが、各種の研究で明らかにされている。本書で引用されている、音楽家を対象にした研究が非常に興味深い。モーツァルトも含め、努力せずに成功を収めたものはいないという心理学者Anders Ericssonの研究である。下記、著者の言葉を引用する

the idea that excellence at performing a complex task requires a critical minimum level of practice surfaces again and again in studies of expertise. In fact, researchers have settled on what they believe is the magic number for true expertise: ten thousand hours

本書、P.41

3.感想

①子の成功/失敗と親

 成功/失敗の要因については、個人の努力のせいだとするメリトクラシー的な論調 vs 個人の生まれ持った才能とする遺伝子論が昨今では多い気がするが、そういった議論に生まれ育った環境等も大事なことを教えてくれる一冊と思った。

かのモーツァルトでさえ、才能だけでなく、たゆまない努力(本人は努力と考えていたかは別として)とその努力を可能とする環境があって初めてあれだけの成功/貢献をし得たというメッセージは、心に響くものあり。そしてその環境要因は親が左右できることが多いことも。。。

 一万時間という言葉が興味深い。一日4時間を10年繰り返すと1万時間に達するが、本人のやる気以上に、それを可能とする親の理解や財力等の環境が重要となるとのこと。

そういう意味でも昨今の貧富の格差の拡大は、負の連鎖として未来の子供たちにふりかかる。貧富の格差がこの学力に直結しているためだ。本書によれば、学力だけでない。音楽家やビジネスマンとして成功するかもどうかも、親がそういった環境を子供に用意できるかにかかってくる。

親の世帯収入による教育格差
出典:チャンス・フォー・チルドレン

ただ、累積的優位性があっても結局やるやらないは本人次第なのかもしれない。子供達が努力を努力と認識しないぐらい没頭してくれるよう親が導いて上げるのがよいのか、それすら本人の自発性に任せればよいのか。色々と考えさせられる内容でもあった。

②硬直的な社会システム

上述のポッドキャストであらためて、社会的成功という命題を再考した著者。最近のカナダホッケーチーム・メンバーや有名私立校の優秀の学生達の生年月日を改めて調べたところ、結果は変わらず。優秀と言われ競争に勝ち抜いてきた人々の大部分は、年度始め生まれだった。

私は10月生まれなので、欧米のカリキュラムに組み込まれていたら、もっと成功したのかもしれない、などとくだらないことすら考えてしまう。

最後に一言

誰もが一度は考える天才/社会的成功者という存在。中には私のように、自分が天才なのでは?とか天才に生まれたかったとか思ったことのある人もいるかもしれない。そんな人にはうってつけの、世の中で天才と呼ばれている人たちの成功要因がなんなのかよく分かる一冊。

本記事は、あくまで私がポイントだなと思った部分のみ書き出しまとめているだけです。この概要記事がきっかけとなり、この本に興味を持っていただけたら幸いに思います。


あわせて他の記事もご覧いただけたら幸いに思います。


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