【読書】中世ヨーロッパ/「西ヨーロッパ世界の形成」から
中高で一番好きだった世界史。ヨーロッパという見たこともない世界に憧れを抱いた当時の私は、世界史の授業を通じて、日本の外の空気を擬似体験していたのだろう。しかし過度な偏差値偏重教育のため、大好きだった世界史すら、いかに点数稼ぎをするかという小手先のテクニックを磨くことだけに終始してしまう。人生色々と余裕が出てきた事もあり、世界史を学び直そうと思って購入した一冊。
記事要約
紀元後ローマ帝国の衰亡から始まり、10世紀以前までの中世初期における社会的な変革、中世中期における西ヨーロッパ的封建制度と都市・農村社会等を事細かに描いている。
授業で習う世界史の出来事を見事に補う内容になっている。この本を読むと、当時の西ヨーロッパの人々の生活や考え方が脳裏にスッと浮かんでくる。
1.本の紹介
本のタイトルは「世界の歴史10 西ヨーロッパ世界の形成」(2008年刊行)。日本帰国時に本屋に立ちよった際目に入り、即買いした一冊。
著者は西洋中世史家(フランク王国専門)で名古屋大学教授を務めた佐藤彰一さん(1945年ー)と同じく西洋史家(魔女研究専門)の池上俊一さん。
2.本の概要
本書のテーマは、西ヨーロッパ世界の形成。
紀元後ローマ帝国の衰亡を基軸に、キリスト教の国教化とそれによるキリスト教的禁欲文化の社会的浸透、そしてフン族の西移動を発端としたゲルマン民族の大移動、その結果としての西ローマ帝国の崩壊などから始まる。
旧ローマ帝国時代の統治機構を一部踏襲する形で西ヨーロッパ全体に根を張っていった各種ゲルマン人国家、中でも、勇敢な者達という意味のフランク人による王国は、中世初期の5世紀辺りから勢力を拡大していく。当時の国王クローヴィスのキリスト教改宗は歴史の授業でも必ずハイライトされる出来事。
歴史の教科書であればこの程度の粒度で次の時代に移ってしまうところだがこの本は違う。ゲルマン系国家形成からさらに踏み込んで、軍事国家としての有り様や中世初期の質素で殺伐とした宮廷模様、簡易で素朴な居城やローマ時代から延々と受け継がれる荘園システムや有力者(例: セナトール)とそのゲルマン化(国王の封建的家臣化)、その中における人々の心性の変化をダイナミックに描き出している。
10世紀近くになると西ヨーロッパは中世盛期にはいるが、その時代を彩るのは、第二次民族移動と呼ばれるヴァイキングの襲来(実態はスカンジナビアを中心にて移住していたデーン人ら)やその結果としての各国における勢力図の変化(例: 英国7王国の滅亡&ノルマン・コンクエスト)など、歴史の教科書でならう大事件。さらに叙情詩を中心とした宮廷文化が花開き(カロリング・ルネサンス)、騎士道文化も形成し始める。全体として封建領主による統治システムが確立された時期でもあり、中世的な城が沢山建造され、都市や商業ギルドが形成、法や貨幣制度等も制度されていく。
一方でキリスト教も人々の生活様式や心性まで深く入り込み規定するようになる。修道院組織を含め中世初期ではまだ未発達であった教会組織も整備、世俗的でないいわゆる生粋の聖職者が派遣され人々の生活リズムが徐々にキリスト教化されていく(キリスト教を象徴する十字架や磔像が市町村を彩り始める)。
しかし中世後期1300年代以降にはいると、天候不順(氷河期)や地震など天変地異により生産性が落ち、ペスト等の疫病が流行し人口が激減、中世的封建社会システムが大きく揺らぎ出す。死が身近なものとなったことは当時の芸術作品からよく見て取れる。
そしてこれらが全てが近世的な絶対王政への礎となっていく。
3.感想
学生時代、世界史が大好きだった私は、学校の授業を物足りなく思っていた。もっと深掘りしてくれれば良いのにと思ったことを未だに覚えている。無論学校の先生にそんな時間があるはずもないのだが。
そんな当時の自分に教えてあげたいのがこの本。当時の私なら嬉々として読むに違いない。それだけこの本は、授業で習う世界史の出来事を見事に補う内容になっている。この本を読むと、当時の西ヨーロッパの人々の生活や考え方が脳裏にスッと浮かんでくる。
無論、日本の中高生はほぼすべからく受験戦争という意味不明の(と私は思ってる)戦争に巻き込まれており、こんな本を読んでいる暇はないのかもしれないが。。。
最後に一言
なお本記事は、あくまで私がポイントだなと思った部分のみ書き出しまとめているだけです。この概要記事がきっかけとなり、この本に興味を持っていただけたら幸いに思います。
あわせて他の記事もご覧いただけたら幸いに思います。
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