【新着】ダニエル・ローガン / スターウォーズ・ストーリー
皆さんはこの俳優をご存知ですか?
彼は、かつて『スターウォーズ』シリーズで後に銀河最強の賞金稼ぎとなる若きボバ・フェット役を演じたダニエル・ローガン氏だ。
本記事では、ダニエル・ローガン氏の演じてきたボバ・フェットというキャラクターを中心に、ボバとダニエル氏のスターウォーズ・ストーリーに注目していきたい。
ダニエル・ローガンとは
彼はニュージランド出身で現在はアメリカで活躍されている俳優である。
彼の俳優キャリアは子役からのスタートだった。そして、いきなり抜擢された大役が、なんとジョージ・ルーカス監督作『スターウォーズⅡクローンの攻撃』の若きボバ・フェット役だったのだ。
だが、彼の演じる若きボバ・フェットは、劇中で悲劇のキャラクターとなってしまう。
ボバの父親で、銀河一の賞金稼ぎであるジャンゴ・フェット(演:テムエラ・モリソン)は、最強のジェダイマスターであるメイス・ウィンドゥ(演:サミュエル・L・ジャクソン)に決闘の末、息子ボバの見ている目の前で首をはねられ殺されてしまう。そして、父親ジャンゴの形見であるヘルメットを手に拾い上げ、想い悲しむ。その何とも言えないシーンは、スターウォーズファンの間でも強烈な悲劇のシーンとして脳裏に焼き付いている人も多いだろう。
そんな悲劇的な難役を演じ、第24回ヤングアーティスト賞〈映画部門〉助演男優賞に、ハリウッド俳優エミール・ハッシュらと共にノミネートされた。
その後はスターウォーズのアニメシリーズ『クローンウォーズ』(2008〜2020)にて、若きボバ・フェット役を声優として再演。父親を殺したメイス・ウィンドゥへの復讐心に囚われ続ける反面、まだ年齢的にも幼く繊細な良心の中で葛藤する不安定さを持ったキャラクターを見事に演じた。
ボバ・フェットとは
ボバ・フェットとは、スターウォーズV『帝国の逆襲』(1980)で初めてお披露目となり、シスの暗黒卿ダース・ベイダーに雇われその隣で存在感を放つ現在もなお人気の高いヴィランであり、緑のアーマーに身を包む、無口で冷酷で、素顔もバックストーリーも謎めいた銀河最強の賞金稼ぎだ。
その素顔もバックストーリーも、多くの謎を秘めていたが、Ⅱ『クローンの攻撃』(2002)で遂にその謎を明るみとなっていく。その最初の重要なエピソード、今まで語られてこなかった若きボバ・フェット役を担い演じてきたのがダニエル氏だ。
このようにダニエル氏の成長と共に作り込まれていくかのような、今ままで誰も知らなかった新しいボバ・フェットのキャラクター像は、後のドラマシリーズであるボバ・フェットの単独ドラマ、その名も『ボバ・フェット/THE BOOK OF BOBA FETT』へと受け継がれる。
このドラマの舞台は、エピソードⅥ『ジェダイの帰還』(1983)から5年後の舞台設定だ。だが、ボバ・フェットは『ジェダイの帰還』の際、ルークやハン・ソロらによって砂漠の穴に突き落とされた挙句、巨大生物に飲み込まれてしまいあっさりと死んでしまったとされていたが、なんと実はかろうじて生き伸びていたのだった。何がどうであれ人気キャラクターのカムバックにファンは歓喜したことだろう。
だが、このドラマを見て少し違和感を覚えたファンも多い。
「ボバ・フェット……なんか良い人になってない?」
「私の知っているあの無口で冷酷なボバじゃなくなってしまっている……」
そう、本作のボバはどこか変わってしまっており、かつてのボバではなくなってしまっていた。確かに人間性も心情も少し変化しているように見える。ドラマが進むにつれてⅥ『ジェダイの帰還』以降、彼がどのような運命を辿ってきたかがここでもまた新たに描かれていく。それでも納得のいかないファンも多く、未だ賛否両論の多い作品となってしまっている。
だが、Ⅱ『クローンの攻撃』や『クローンウォーズ』で最初にボバ・フェットのバックストーリーが描かれた少年期を思い返すと、ダニエル氏の演じるボバは常にどこか悪と善との間で葛藤と戦い続けていた。
ボバ・フェットの復活の物語
Ⅵ『ジェダイの帰還』で一度は死を擬似的に体験したボバ。そして5年後となる舞台で生き伸び復活を果たした。悪で銀河を支配していたかつてのボバは、今では一国の大名として街を守り、時にマンダロリアンやグローグーらを助け、そして尊敬で国を収めようとする善良な人間へと生まれ変わっていった。そう、これはかつて悪として生きてきた人間が自分自身を見つめ直し、死を疑似体験することで善良な人間として新しく「生まれ変わる」物語なのだ。人が生まれ変わる輪廻転生の周期は4年5ヶ月とされている。ボバの復活はその周期にも当てはまる。そして、ボバが飲み込まれた暗く狭く生々しい生物の体内は、まるで胎内のよう。そこから生まれるかのように飛び出したボバはまるで生まれたてのような感じにも見える。少し大げさに捉えすぎているかもしれないが、主人公が母胎回帰し生まれ変わるという物語や表現方法は多くの映画の中でも記号的に表現され取り入れられてきている。
つまり、ボバの復活はファンの望むようなこれまで通りの悪役としての復活ではなく、善良なヒーローとしての復活であったのだ。
善良なボバの姿を求めないファンもいただろう。それはファンなら誰しもがそう思うだろう。だが、人間誰しも生まれ変われるチャンスはあっていいはずだ。どういう人間になるかは他人が決めることではない。ボバをこれまで通り悪役として、またはもっと悪にした最強の悪役として復活させてほしいという意見は多い。だが、作り手も「そういう意見が多いなら、みんなが求めているのであればそう作りましょう」と他人の意見に流されて作り上げても、それはただ単に統計的にビジネス的に生み出されるわけであって、ボバ・フェットというキャラクター自身を尊重できていないのではと思う。これからどういう道を選び生きていくか、それはボバ・フェットというキャラクターのみが知り、ボバ自身が導き出すことなのかもしれない。ボバ・フェットというキャラクターはクローンである前に人間なのだから。
もう一人の復活の物語
人間ボバ・フェットの過去をリアルに演じてきたダニエル氏は、その後のボバ・フェットのスターウォーズ・ストーリーに大きく影響を、その後の変化を与えてきたことは間違いないだろう。彼のこれまでの功績はとても大きい。
先ほどボバ・フェットの復活の物語を紹介してきたが、ここにも一人復活を果たした者がいる。
それは、ボバ・フェットを演じてきたダニエル氏本人だ。
Ⅱ『クローンの攻撃』『クローンウォーズ』にて若き日のボバを演じて以降のダニエル氏はというと、映画やアニメ、ドラマといった『スターウォーズ』シリーズに直接関わることが段々となくなってしまった。ゲーム『レゴスターウォーズ:スカイウォーカー・サーガ』で、ボバ・フェットの声を演じることがあったが、スターウォーズ本編に彼の名前はもう見なくなってしまった。
ところが、2024年アニメシリーズ『バッドバッチ』のファイナルシーズン第2話『未知なる道』にて、突如ダニエル氏が復活を果したのだ。
『バッドバッチ』の主人公であるハンターとレッカーは、モックス(声:ダニエル・ローガン)という同胞の若きクローンと出会う。
モックスは、仲間だったクローン兵に見捨てられ居場所を失い、これからの自分の進むべき道がわからずにいた。そこでハンターはこう言葉をかける「ゆっくり考えればいい。自分で道を切り開け。何かを目指すんだ」と。そうして決意を胸に握手を交わす。仲間を見捨てないクローン同士の熱い感動的なエピソードであった。
ファイナルシーズンの幕開けにふさわしい名シーンに思わず感動した方も多いのではないだろうか。
その重要なエピソードで再び『スターウォーズ』シリーズに、しかもボバ・フェットではない役で復活を果たしたダニエル氏。なんだかモックスというキャラクターがダニエル氏と重ねられて描かれているかもしれない。そう思うと更に胸が熱くなる。ダニエル氏とも関わりの深いデイヴ・フィロー二氏(代表作『クローンウォーズ』)が監督・脚本・キャラクター創造を担っているため、そういった経緯がある可能性も大いにありえることだろう。
ダニエル氏は、2023年の東京コミコンで来日した際、ファンに対しこのような発言をしていた。
「みなさんもジョージ・ルーカスに私が次のキャプテン・レックスで出演できるよう祈っていただければと思います」
ダニエル氏は、今後の展望としてキャプテン・レックス役として出演したいとやる気満々のようだ。ダニエル氏は、過去に自分が演じてきたボバ・フェットではない新しい役を目指し、未知なる道を切り開こうとしているのかもしれない。
将来の活躍が楽しみな俳優の一人であり、今後もその動向に注目していきたい。
ダニエル氏は、2024年5月3日(金)〜5日(日)にインテックス大阪で開催される「大阪コミコン2024」にゲストとして参加する。当日は撮影会・サイン会の他、トークショーも予定されている。
【プロフィール】
ダニエル・ローガン(Daniel Logan)
1987年生まれ。ニュージーランド出身。俳優。
(主な作品)
映画『スターウォーズⅡクローンの攻撃』
アニメ『クローンウォーズ』『バッドバッチ』
ドラマ『ボバ・フェット/THE BOOK OF BOBA FETT』
ゲーム『レゴスターウォーズ:スカイウォーカー・サーガ』
著:江川 知弘
※使用写真:IMDb(Internet Movie Database)より引用