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【第8回コラーゲンの世界】古代エジプトから先端科学の発展まで時代を超えて使われるコラーゲン

コラーゲンという言葉は昔から聞いたことがあるかもしれませんが、CMなどで有名になったのはここ十数年といったイメージを持つのは私だけでしょうか。

少なくともそんなに大昔からコラーゲンが使われていたかというと想像ができませんが、実は人類は大昔からコラーゲンを利用していました。

今回はそんな昔から私たちの身の回りにあるコラーゲンを使った製品を紹介しようと思います。

それでは一緒に見ていきましょう。

革製品

バッグや靴など、私たちの身の回りには多くの革製品があります。革製品というとなんだか高級なんだろうなというイメージを持ちますよね。それもそのはず、生き物の皮膚を加工した製品なので、革には命がつきものだからです。

私もこれまでそのように考えていましたが、どうやらそういうわけでもなさそうです。それどころか、革製品は環境にも良いのでもっと普及すべきという考え方まであるというのは驚きです。

というのも、現在食用として利用される動物の皮の大部分は捨てられています。食用というと言葉は良いですが、残酷な話私たちはそういった動物たちを殺して食べているわけですよね。せっかく食用とするならば、余すところなく命の全てを頂きたいという点からも、捨てられている皮を利用して革製品を作るというのはとても理にかなっています。

それでは革製品についてもう少し具体的に紹介します。

皮と革、同じように「かわ」と読みますが実際は同じものではありません。生き物が持っている皮になめす(鞣す)という工程を加えることで革を作り出します。

実際に皮を革にする際には、まず不要なタンパク質や脂質、糖質といった不純物を水で洗い流して除去します。

その後石灰漬けにしてコラーゲン繊維をほぐして毛を抜きます。処理後に石灰分を洗い流します。

純粋なコラーゲン繊維となった状態で鞣剤という薬品を使います。鞣剤はコラーゲンの繊維を化学的に結合(架橋)することを鞣すといいこれにより革製品となるわけです。

通常、ただのコラーゲン繊維だと熱に弱く分解してしまいますが、架橋されて革になると分解などは起きません。最後に、染色や防腐処理を行います。

このような一連の処理があって初めて革製品となり靴や鞄になるんですね。

膠とのり

膠(にかわ)とは、あまり聞きなれない言葉かと思いますが、簡単言えば動物由来の接着剤といったとこでしょうか。この原料はまさに動物から抽出したコラーゲンを処理したゼラチンです。

http://zokeifile.musabi.ac.jp/%E8%86%A0/より引用

膠は動物の皮などを大釜で煮だしたあと濃縮乾燥させて作ります。大昔から使われていることもあり、そこまで複雑な処理をしていないため、様々な分子量のゼラチンが含まれているようです。

とはいうものの、膠というのはどこで使われているのでしょうか。

大昔から使われている膠はミイラの棺やバイオリンなどの接着剤として使われていたそうです。どうやらゼラチンは木材の主成分であるセルロースと相性が良く、昔から木材の接合に使われていたんですね。それにしてもミイラの時代からあるってちょっと驚きですよね。

また、もともと木製であるバイオリンの接着では膠の強みが活かされています。膠は温度や湿度の変化による木材の伸縮に対応するだけでなく、故障時のメンテナンスでも役立っていました。

膠は温度を上げると分解して接着部を融かすことができます。そのため、バイオリンの部品を交換する際には、接着部に蒸気を当てて膠を融かして取り換えていたようです。

最近では膠を見る機会は少なくなりましたが、おそらく多くの人が人生で一度は見たことがあるもの、それが書道で使う墨汁です。

墨汁

墨汁は煤(すす)と膠からできています。煤というのは炭素の微粒子のことですね。黒くて汚れた状態のことを煤まみれといったりします。

wikiより引用

さて、どうして墨汁を作るのに膠が必要になるのでしょうか。

実は液体の中に煤の微粒子を分散させるのは簡単ではありません。小さな粒子は互いに集まって沈殿してしまいます。しかし、墨汁において、煤はなるべく均一に浮いていてほしいんです。

そこで膠は煤の分散剤として作用します。簡単に言えば、膠=ゼラチン分子は煤の微粒子をコーティングして、互いにくっつかないようにしてくれるんです。液体の中では空気中の接着剤とはまた違った特徴を持つわけですね。

フィルム

墨汁作りの際には煤の微粒子を均一に分散させる役割でに膠=ゼラチンを使いましたが、これは科学技術としても応用されています。

近年の最先端技術には薄膜の積層と呼ばれるものがありますが、その礎となったのが写真フィルムの研究です。日本は写真フィルムの製造をもとに大きくなった会社がいくつかありますが、この技術自体は現代の科学に受け継がれています。

そんな写真フィルムの製造にもまたゼラチンが重要でした。フィルムの作成にはハロゲン化銀を使います。この微粒子が光に反応する感光性を持っており、その特性を生かして写真を現像するんですね。

ここで重要になってくるのがハロゲン化銀を薄いフィルムの上に均一に分散させてやらなければならないという点です。墨汁の時もそうでしたが、微粒子を均一に分散させるのにゼラチンはうってつけのようです。

実際に写真フィルムの製造にはハロゲン化銀とゼラチンを混ぜて加熱すると、互いに結合して粒子を作り理想的な分散状態になるそうです。

また、写真フィルムではとても薄い層を10層以上重ねて作っていました。ゼラチンに不純物が混ざっていたり、透明性に欠けていたりするときれいな写真はできなかったそうです。そのような点でも高品質のゼラチンが必要とされていました。

現在この技術がどの程度社会に使われているかはわかりませんが、少なくとも様々なタイプの薄膜を何層も重ねるという技術は現代の技術に応用されています。

最後に

今回は大昔から人類が使っていたコラーゲンについて紹介しました。ミイラの棺から先端科学の礎となったフィルムまで、様々な領域でコラーゲンが利用されていました。

ただの皮ではなくて人工的に処理して作られた革製品に対する見方も少し変わったのかもしれませんね。

とはいえ、私たちはコラーゲンといえば今回紹介した利用法よりも、健康食品などで目にする方が多いですよね。

ということで、次回は食材としてのコラーゲンについて紹介したいと思います。

参考文献


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