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■大河ドラマ『光る君へ』第35話「中宮の涙」感想―よかったね。初めてほんとに君の笑顔を見た気がする。

大河ドラマ『光る君へ』第35話が放送されました。もう……彰子さま推しとしては神回でございまして……感涙に噎ぶ至福の時間でありました。

史実としては、もう来年には敦成親王敦良親王が産まれることを知ってはいても。でも、まさかの懐仁親王(一条天皇)と同じ扱いに…と((((;゚Д゚))))ガクガクブルブルしてた部分もありました。できるならば、彰子さまには幸せに笑う時間があってほしいと心から願っておりましたので、第35話の神展開はほんとうにほんとうにうれしかったです。

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とまぁ、感想本編に入る前から全力語りを展開しておりますが(笑)兎にも角にも前回の感想はコチラです。

■大河ドラマ『光る君へ』第34話「目覚め」感想―誰にも縛られたくないと逃げ込んだこの夜に

ではでは、第35話「中宮の涙」の感想に行ってみましょう♪




■今日の中関白家

■どのルートで登れば、そんなに麗しいままで…??

第35話では、娘彰子の幸せを願い、道長どんが金峰山への参詣を敢行しました。

予告では、めっちゃ「ファイトぉお!」「いっっっぱぁあつ!」な絵面があり、非常にワクテカしておりましたが。大方の予想を裏切り、「頼通さま&俊賢さまコンビ」で行われ、びっくり。しかも、俊賢さまったら烏帽子まで脱げてしまわれて……(/ω\)イヤン そうして、その一点だけで「過酷さ」が伝わる今年の大河ドラマのクオリティの高さよ……と、目をうるうるさせていたのでした。

そうして、どろっどろの姿で頂上に経筒を埋め、祈りをささげる道長どん……の一方で。それを好機と付け狙う伊周さま。付き従う武者たちに道長どん襲撃を命じるのです。

駄菓子菓子。

伊周さまってマメなんですかね? 命じた張本人で、しかも、バレたら今度こそ流罪くらいでは済まない可能性だってあるのに。大概の場合、こういうヤバイ案件は、なんとかの尻尾切りで、部下に実行も罪も押し付けてしまうのが定石であるのに。

なぜか金峰山に姿を現す伊周さま

しかも、お召しになっている装束は超お綺麗なまま……どろっどろの這這の体で頂上にいる道長どんたちとはめちゃくちゃ対照的に、うるわしの貴公子っぷりを見せつけるのです。……いや、そんなところで目立ってどうする。

というか、そもそもどのルートを上ればその状態でいられるのでしょうか……いや、以前、この金峯山において、ど派手な衣装で神様に全力アピールをし、官職をゲットした宣孝さまという超強力な前例もいますが……彼は彼で何かの別枠な気がしてなりませんし(蔵之介枠?)。

あれこれ考えていると、金峯山には「うるわし貴公子ルート」なるものが存在するのかもしれないと思えてならないのでした(違)。

■一方で、弟はヒーロー気質を全開にする

そうして、道長どんに狙いを定めた矢が放たれようとされたとき、キョウリュウレッド……隆家どんが颯爽と現れます。そのタイミングの良さは、まさに戦隊ヒーロー♬ 戦隊ヒーローのレッドが、仮面ライダー(道長どん)を助けるというなかなかないコラボが、平安転生で行われたと言っても過言では……(え)。

そのまま、道長どんたちを去らせ、隆家どんは兄である伊周さまと真正面から向き合います

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隆家どんって、道長どん―三郎と同じで、ものっそい末っ子気質なんですよね。にこにこしていて、陽気で。でも、周囲をめちゃくちゃ見ていて。人の懐へ、物怖じせずに入りこむことができる人で。

だからでしょうか、これまで隆家どんが長兄である伊周さまに真正面から意見することはありませんでした。また、相手からまじめな話をされそうなときも、ごまかしごまかししていたイメージがあります。

が、このときばかりは。道長どんのことも、自分自身の未来もとりあえず脇によけて、たいせつなたった一人の兄である伊周さまに向き合うことをするのです。

そうして、こうなってしまったきっかけを作ったことについて謝罪し、兄への思いをていねいにことばにして伝えるのです。

「長徳の変」。道隆さまという大黒柱を失った中関白家の凋落を決定づけたあの出来事。もしかすると、伊周さまの心のなかではあのときのまま時が止まっているのかもしれません。

「おれの人生はこんなはずじゃなかった」

そんな思いが心に溢れたまま、彼はここまでの年月―10年以上を過ごしてしまったのかもしれません。そうして、母を失い、頼みの妹を失い。でも、どうしてよいのかわからないまま、自分の手にも負えないほど肥大化した憎悪を身の内に住まわせてしまった。

一方の隆家どんは。

あのときの、言ってしまえば「実行犯」は自分であるわけで。それは誰から責められることがなかろうとも、自分自身がいちばんよく理解しているわけで。だからこそ、彼は大人にならざるを得なかった。

没落の決定打を超弩級に放ってしまったのは自分だから。

母を失い、姉を失い、兄を壊したきっかけをつくったのは自分だから。だからこそ、現実を真正面から受け止め、生きていくことを選んだのでしょう。そうして、この機会を捉え、兄に淡々と「穏やかに生きること」を伝えるのです。

このときの―隆家さまの思いを受け止めたときの伊周さまの目の変化は、とてもかなしいものでした。憎しみしか持たない、烈火を宿した目から、何かが終わってしまったような、諦めの強い目に変わったように……感じられたのです。

でも、この隆家どんの説得はあまり効力を持たなかったのか、第36話の予告でも、伊周さまは、再びちまちまと呪詛を続けているようです。

実際の史実でも、こののちに呪詛をした連座みたいな罪に堕ち、出仕停止となります。これはすぐに許されるのですが、伊周さまはこののちも浮上することはないまま、短い生涯を終えるのです。

(効かない)呪詛で見せる「粘り強さ」をもっと違う場面で発揮したら、伊周さまも、もう少しマシな人生を手にできたのではないかと思うのですが……ままならないものです(涙)


■今日の彰子さま

■ここにも小さなヒーローが

そういえば、今週Twitterでドラマ公式さまが、敦康親王の成体…成人されたお姿を公開されていましたね。愁いを帯びた、やさしそうなお顔をされていて、とてもうるわしい♡

敦康さまは物心のつく前に実の母である定子さまを喪っていますから、彼にとって彰子さまは母であり、姉であり、おそらく(まだ自覚はされておらずとも)恋慕の対象でもあるのでしょう。

ほんのりと、『源氏物語』の光源氏と藤壺中宮の関係性を匂わせるあたりがめちゃくちゃエモくて好きなのですが。このとき敦康さまは、まだ数えで9歳。金峯山に行った左大臣に代わって、中宮さまをお守りしたのだと胸をお張りになるのです。……めちゃくちゃかわいい。尊い。

このあとのことを思うと、敦康さまにはこのままでいてほしいとも思ってしまいます。子どものままでいられたら、小さなヒーローでいられる。左大臣と彰子さま、何より一条天皇の庇護のもと、次代の東宮候補として健やかに日々を送っていられる

でも、それはできない相談であり。第36話で、一条天皇の第二皇子である敦成親王が産まれると、彼の人生に向かって大きな波が打ち寄せます。

それははじめは小さなさざ波でした。が、徐々にそこからもたらされる揺さぶりは大きくなっていきます。その揺れから敦康さまを守ろうと、一条天皇も彰子さまも必死になるのですが……でも、どうにもならなくて。

ともあれ、『大鏡』で、「御才いとかしこう、御心ばへもいとめでたうぞおはしましし」と称賛された敦康親王のこれからを、悲劇であると知りつつも、しっかり目に焼き付けたいと思います。

■ド直球で告白する

そんなこんなで、第35話のメインイベント「お慕いしております!」です。

平安時代の「恋」の始まり方には、いろいろあります。だいたい、ほんのりと噂を見聞きしたり、たまたま触れた声や衣擦れの音や、香りに惹かれたり。そんなところから相手の存在を知り、まずは和歌を贈りあって。その後、諸々駆け引きがあって、ようやく実際の逢瀬にこぎつけるのです。

もちろん、彰子さまは入内していますし、一条天皇も彰子さまの顔は見知っている状態です。だから、少しずつの駆け引きなど、「恋」にまつわるあれこれなエモさが期待できる場ではありません

もっと言えば、入内するということは、帝の御子を産むことがいちばんの「仕事」ですから、情緒とか恋慕とか、そういった心のひだひだしたところに触れるものは蹴散らかされてしまうことも多いでしょう。

そういった特殊な事情はあるにしても。

彰子さまの「お慕いしております!」は、なかなかにインパクト大でした。それは、直前に指南していたまひろっちの「ちょ…おま…今言う??」なキョロキョロっぷりからも分かります。また、一世一代の告白イベントなのに、全国から「そうじゃない」と突っ込まれる中宮さまもなかなかいらっしゃらないような気が……💦

でも、そのド直球を放ったとき。彰子さまは泣きながら一生懸命に帝の顔を見るんですよね。ちゃんと目を見て、自分のほんとうの気持ちをぶつける。だからこそ、天皇に明確に、誤解なく、心に秘めていたアツさごと伝わったのだろうと思うのです。

「いつのまにか大人になっておったのだな」
「ずっと大人でございました」
「さみしい思いをさせてしまってすまなかった」

ここのやりとりが、ほんとうにすてきで……泣きそうでした。一条天皇と彰子さまのこれまでがぎゅぎゅっと詰まっていて、しかも、それがほどけていく快さもあって。

「ずっと大人でございました」

12歳で「生贄」として入内させられ。夫は前妻に心を残したまま、自分を見ることもせず。それでも「妻」としての役割を果たすことは求められ。唐突に「大人」であることを強制された彰子さま

その姿は、7歳で即位し、頼みの母は自分を政治の道具としてしか見ておらず。それでも「帝」としての役割を果たすことを求められ。やはり「大人」であることを強制された一条天皇ご自身とも重なるものだったのでしょう。

年上だった定子さまとはまた異なるカタチで、絆を紡いでいけばいい。それは定子さまを蔑ろにすることにはならないし。彰子さまを孤独の縁に置いたままにするほうが、今の自分にはつらいことなのだと……

思い出深い雪の気色を見つめる一条天皇のまなざしの深さ、温かさがほんとうにすてきでした。

あと、この場面の彰子さまの手がね……手がね……エモかったです(語彙力)。


■うるわし男子列伝

■みなさま、第36話ではあの場面が降臨ですよ!

というわけで、第36話の予告で沸き上がる公任さま推しなワタクシたち♡ 

大河ドラマ『光る君へ』に藤原公任さまが降臨されることが発表されてから、『紫式部日記』のあの場面はどうなる?? と界隈ではうぞうぞと噂になっておりましたが。

むしろ「若紫はこのあたりに……」と言われた瞬間、食い気味に「はい、はい、は~い!! 若紫でっす!!(*・ω・)/」と主張しそうな雰囲気もりもりな界隈でしたが。

第36話では、とうとう「あの場面」が降臨するようです。しかも、公式さまの投下されたお写真を見ると、ほろ酔いな公任さまがいらっしゃるようで♡ いろいろと情緒がやばい気がします(落ち着け)。はい。正座待機です。


■まとめ

というわけで、第35話の感想でした。いやぁ……中関白家推しとしても、彰子さま推しとしても神回でございました。

これから起こることを知ってはいても、それでも推しには幸せでいてほしいと思うわけで……もちろん、まひろっちの言う通り「影」とか「闇」とか併せ持ちつつも、ですが。それでも、推しには笑っていてほしい。

そんな思いを込めて、第36話もごいっしょに楽しめたら、嬉しいです。


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