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#エッセイ

ねこと私

ねこと私

 私は子供のころ、祖父母に子ねこをもらったことがある。大切にし、一緒に寝ていたにもかかわらず、ある日、布団からけりだし翌朝亡くなっていた。それ以来、ねこを飼ったことはない。今、冷静に考えるときちんとした寝床も与えず、飼い方も分かってなかったから、そんなに罪悪感を感じることもないけど、ひたすら、つらかった。

 実は祖父母は動物を多頭飼いしており、残酷で不潔であった。たまに我が家で鳥などを飼っても、

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民主主義はややこしい

民主主義はややこしい

 うちのような田舎の本屋さんでもベストセラーになってて、読んでいる人も多いので、今更の感想だと思うのです。まあ、今、単行本を買って読む人がものすごく減っているので話題の本ってなんだろうね。だから、今だからとも思うのです。

 「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」読んで、民主主義って、ほんとややこしいなって感じました。今、イギリスは多民族国家になっていて、社会的な格差が広がってもいて、不満

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鉄塔のある風景

鉄塔のある風景

 私のかつて住んでいた家のちかくには鉄塔があった。そのそばに二軒続きの長屋があって、しんせつな一人暮らしのおばあさんが住んでいた。お菓子をくれたり、いろいろと話しかけてくれた。そして、送電塔の下の空き地で、お花を育てていた。いつかしら、いなくなっていたけど、花園は残った。育った町では、個人のだれのものでもない空き地になにかしら、誰かが草木を植えてしまうのだ。他のちかくの鉄塔には、いちじくやら、びわ

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わたしはなんかの修行をしているらしい

わたしはなんかの修行をしているらしい

 ちょっとしたきっかけがあって、ゴダールの映画をみることにした。今まで見向きもしなかったが、発表された年代が60年代で軽くショックを受ける。古典といわれる映画が同世代なんだと思うと複雑だ。

 最初から最後まで、ずっとおしゃれで、文化のるつぼから出てきた斬新な映画だった。今からみると、多くの映画作家が彼の手法を自由自在につかっているが、ゴダールはゴダールなのだ。初めて見たひとの興奮はすごかっただろ

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美しいひと

美しいひと

 今の朝ドラは見てないのだが、ふっとのぞいたとき、女優さんたちが、職場の服として、白いブラウスのバリエーションと、カラフルなスカートを着ていて、すてきだった。そして、それが、モデルになった「暮らしの手帳」の精神なんだろうなと思った。ああ、わたしも、今のように、ものが大量になかったときのいさぎよさをわすれないようなしなくてはと思った。

 そうだ。私が生まれる前の古いフィルムとかみると、どの国のひと

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ねこやん

ねこやん

 ねこやんは、ご近所でエサをもらってだらだら生きているねこである。今の家に引っ越ししたとき、おおむね、そっと庭を横切っていった。ときには、うんこをしたが、嫌だなっと柔らかく抗議するだけだったのは、わたしがまえの家のむかいの犬、くろと折り合いが悪かったからだ。お引っ越しの直前、夫に、くろはずっと前から仲良くしたがっている、許してあげなさいと諭された。うちのちいさな息子たちに吠えかかったりしていたし、

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喫茶店 かつての日々

喫茶店 かつての日々

 私のすきなものはみんな喫茶店のメニューだと夫に言われた。昔風のホットケーキに、アイスコーヒーにナポリタン。こどものころ、日曜日の朝、父に近所の喫茶店に連れて行ってもらうのが好きだった。古い街道のなごりのあるくねった細い道のどんつきの喫茶店、わかいけど、司祭のような店長がいた。たぶん、イギリスのパブってあんな感じかな。商店街のひとびとが、ほっと一息ついて、新聞の記事やうわさ話をしていた。父もなごん

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