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ELPA-Radio配信後記① 教室の「場づくり」の必要性


ELPA-Radioでの配信を振り返る

ELPAでは『ELPA-Radio』という番組を配信することになりました。第一弾は、こちらです。

YouTubeポッドキャスト

Stand.fmでも配信しています。

なぜ、「場づくり」をテーマにしようと思ったのか?

あ、自己紹介が遅れました。ELPAで「開発研究室長」をしています岡田健志です。先日、「どうしてフルネームで挨拶しているのですか?」と尋ねられました。理由はカンタン。『ELPAには岡田が2人いるから』です。

さて、本論へ。
中野達也先生はELPA副理事長で、駒沢女子大学の教授として普段は教職課程の学生指導をされています。元々が学校教員ということもあり、教育現場支援を熱心にされています。

中野先生と私とで「『研修』のように肩肘張って学ぶ場所ではなく、教育現場の先生たちが気軽に毎日ちょっとずつ考える場として、何か情報発信ができないか」と話し合ったことがありました。その時に思いついたのが、『ELPA-Radio』です。

・ラジオ番組のように、何かしながらでも気軽に聴いてもらいたい
・ゆくゆくはリスナーから質問にも答えてもらいたい

というのがポイントでした。顔出しを毎回するのは服装に困るというのも本音。

その初回テーマを何にしようかと議論した時に、研修ではなかなか扱えないテーマにしよう、ということになりました。
一般的に教員研修では「指導案」「板書」「テキストの吟味」など、指導内容にまつわることがテーマになることが多いです。しかも、教科書会社からは「指導書」も提供されています。授業見学などの機会も多いです。
しかし、場づくりや人間関係に関わる事柄はどのように向き合うべきか、特に新任や若手の先生がたが悩むところだろうというのが、私たち2人の共通見解でした。

学習者が素直に努力できる「場」をつくることが大事

みなさんは「クラスの場づくり」と聴いて、どんな状態を思い浮かべますか?

「和気藹々としている」「仲良くしている」「争いごとがない」などを思い浮かべた方もおられると思います。

仲が良いクラス。本当にそれでいいのか?

ここはELPA-Radioでも今後深掘りしたいことでもあるのですが、単純に「仲が良ければ場づくりが成功している」とは限りません。というのも、「水は易きに流れるもの」であり、仲が良いことがマイナスに働くこともあるからです。

学生時代。家族よりもクラスメイトと共有する時間が長い時期です。馴れ合いが生じやすいとも言えます。

「席替え」にも意図がある

その意味で、中野先生がELPA-Radioの中で語っておられた「席替え」も重要な要素になります。人間関係の固定化を避ける意図だと私は理解しました。

目指すべき状況へ向かうために教師が行うべきアクションは?

目指すべき状況は、お互いに刺激を与え合い、学習者が学習に励むことが素直にできるような場ができることです。

その目標を実現させるためのアクションはどんなことがあるでしょうか?

その点も、ELPA-Radioでは、中野先生のエピソードを交えてお話しています。その中で重要だと再認識したのは「観察」と「対話」でした。

「日々の観察」の重要性

中野先生が昼休みや休憩時間にどんな観察をしていたのかも話してくださっていましたね。まず教師自らが観察するエリアに入っていかないと、生徒の個性や人間関係を知ることは難しいです。

「観察」の危険性

ただ、観察をしているだけでは、「見えている部分」だけで終わってしまいます。観察で怖いことは、観察した事象から観察者が勝手に解釈することです。いわゆる「思い込み」が生じ、生徒に対してある種の「レッテル」を貼ってしまうことは避けたいところです。

「対話」の必要性

そこで「対話」が必要になってきます。

対話も「さあ、話せ!」と言ってもなかなか腹を割って話せないですよね。どの生徒も気軽に話してくれたりするわけではありません。
実はその時に効力を発揮するのが「観察」だと思います。

「あの時、君はこんな発言をした。あれは良かったよ」
「休み時間でも、男女分け隔てなく誰とでも打ち解け合っていて、良いムードを作ってくれているね」

対話のきっかけになるようなネタは、観察によって得ることができます。

そして対話によって新たに引き出せた生徒の心情や個性は、その後の観察を豊かにするファクターになります。観察と対話のどちらが大事かではなく、両方が大事なのだと思います。

素材が揃ってくるとデザイン(調理)の選択肢が増える

観察と対話によって、生徒一人一人の個性が把握でき、クラス内の人間関係も把握できたとすると、教師はそれを考慮に入れながら、状況に応じてクラスのデザインを行うことができると思います。

デザインというと難しく感じるかもしれませんが、「集中するべき時に集中するように仕掛ける」「議論をするべき時にはちゃんと発言する」など、その時々で生徒たちにどのように活動してもらいたいか、どのような姿勢で学んで欲しいか、求める状況になるように仕掛けることです。

まったく生徒の個性も関係性もわからなければ、「場づくり」のデザインは非常に難しいです。オンラインセミナーで、受講者の属性が不明だったり、顔が見えないと『やりにくい』と感じる方が多いのも、根は同じだと思います。

要は、場づくりのための素材が豊富であれば、臨機応変に対応しやすくなります。そのための素材は生徒の個性であり、人間関係であり、それを揃えていくために「観察」と「対話」が必要なのです。

経験の積み重ねが対応の柔軟性を高める

中野先生がELPA-Radioの中で、「私も若い頃は悩んでいて・・・歳を重ねると自然とできるようになってきた」という旨の発言をされていました。

単に歳を取れば、特殊能力が芽生えるわけではありません。

中野先生のシンプルな発言の裏には、日々の「観察」と「対話」の積み重ねによって磨かれた「場づくり」のデザイン力・対応力の存在があるように思いました。

普段から「人」を見ていますか?

ELPA-Radioとは関係なく、プライベートなエピソードを一つしたいと思います。

ELPAには岡田が2人いる、と冒頭に書きました。もう一人は、サポートセンター業務をしている私の妻です。夫婦が同じNPOで働いているというのも珍しいかもしれません。
さて、私の妻ですが、道行く人の顔をあまり見ていません。家の近くを歩いていて、有名人とすれ違っても、私は気付きますが、妻は気付きません。

私は、つい、どんなところでも、見渡せる限りの人の顔・表情を見てしまう癖があります。
これは、私が某私塾でずっと指導をしていたからだと思います。常に生徒を観察していたからです。ちょっとした表情・仕草を見逃さないように心がけていました。

実は、中野先生とELPAのみんなで食事に行った際も、同様のことがありました。レストランで弾き語りをしていた人と駅前ですれ違った時に、中野先生はその方に『さっきの演奏、良かったですよ!』と声を掛けたのです。『先生、よく覚えておられましたね』とELPAの職員はみんな驚いていました。

ある種の職業病かもしれませんが、観察力をここまで自然に発揮できるようなるために必要なのは、日々の観察の積み重ねなのでしょう。

みなさんは、どれくらい「人」を見ておられますか?

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ELPA-note『えるぱのおと』では、ELPA-Radioを聴いてくださった方々に、配信の裏情報やまとめなどを発信していく予定です。
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