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シード期採用の選択と集中/正社員一桁から30名規模にいたるまで

Turing Advent Calendar 4日目を担当します!HRの立石です。2023年の3月に入社して、もう今年が終わろうとしています。人生は切ないほど短いものですね。私の記事ではTuringのシード期採用の振り返りについて記載します。

こういった振り返りにおいては成果が出た取り組みに焦点が当たりがちですが、今回はあえてやらなかったこととその背景から振り返っていきたいと思います。リソースが限られている中で全ての施策をパワープレイで進めるのは限界があります。そのため、これまでの経験からやるやらを冷静に吟味してシード期の採用に取り組みました。

※はじめに断っておきますが、あくまでTuringにおいての結果であり、それが自社にそのまま転用できるかは市場環境・自社や経営者の属性、認知・採用トレンドによって異なります。一つの事例として読んでください。
※また、Turingの採用はCXOをはじめ社員のみなさんの協力あったからこそ実現できました。改めてTuringのみなさんには感謝の思いを伝えたいです。いつもありがとうございます。

シード期の採用の振り返り

採用経路と人数

実はTuring、シード期(創業から2023年8月までとします)に入社した正社員23名については、採用媒体やエージェントをほぼ使うことなく集めています。おそらく採用にかかった金額は1000万円以下だったはずです。

リファラルやSNS DM、自己応募での採用が7割を占めています

また、入社者の割合のうちのML・ソフトウェアエンジニアが13名(52%)、車両開発エンジニアも含めると採用人数の約7割がエンジニアでした。

ML・ソフトウェアエンジニアを数ヶ月おきに採用できていました

採用数だけでなく、採用タイミングにもこだわった

採用においてもう一つ大事なイシューとして、採用数以上にどれくらいのスピード・タイミングで人材を組織に供給できていたかという議論があると思います。ジョイン前に正社員10名以下だった状態から、ML・ソフトウェア・コーポレートの人材の採用を進め、年明けからはほぼ毎月人が入社する形で人材を供給できました。また、車両開発エンジニアが3月、7月、8月にジョインしているのですが、車両開発機能の立ち上げと合わせて強力な人材を獲得できたことも今の事業成長に寄与できたのではないかと考えています。

シード期採用でやらないと決めたこと

では、上記の採用結果を振り返っていきます。シード期は多くのイシューを少ない人数で進めていかなければなりません。そのため全社員が採用に注げるリソースも限られています。そこでシード期の採用において大きく2つのことにはやらないと決めていました。

採用媒体・ツールを増やす
認知をいたずらに広げる

採用担当としては、早く成果をあげるためにスカウト施策や媒体運用を頑張りたくなります。スカウトメールをたくさん送付したり媒体での掲載・運用から母集団を集めたりすることに目が行きがちです。私も昔はそのようなパワープレイで母集団を集めようとしていました。

ただ、Turingはスタートアップです。スカウトメールや媒体施策を実施したとしても一般的に返信率・反応率は低く推移してしまいます。また、別の観点の話として、ツールや媒体を増やせば増やすほど採用に関わるメンバーの手間や労力もN乗に増えていきます。そういった観点からツールの増加は慎重に行い、むしろ採用管理はNotionに寄せるなどの減らす施策を実施したりもしました。

話は戻って、スカウトや媒体など攻めの採用施策に反応してくれる人は主に2パターンに分かれます。

  1. そもそもTuringの事業ドメインにアンテナが高く、たまたま自社を知っていた層

  2. スタートアップが好きで情報収集を感度高く行っている層

いたずらに施策を広げたとしても、その頑張りがうまく成果に転換してくれる可能性は低いと考えました。また、上記の状態であれば一つの策として

「Turingの発信を強化して狙った層の認知を広げれば各施策の反応率も上がっていくだろう。よし、発信強化だ!」

という意見もありますが、発信強化もやらないと決めました。いわゆるシードラウンドの会社は事業としてPMFや勝ち筋が研ぎ澄まされる途中にある段階です。この状態でいたずらに動いたとしても、実態と乖離した背伸び情報を発信してしまうことや、候補者に本当に伝えたい部分をうまく訴求できないジレンマが発生してしまう可能性があります。そのため、下記アプローチでTuringの現状整理と打ち手を決めていきました。

  1. Turingの資産・アセット、現状の認知を知る

  2. 自社の影響範囲が高そうなペルソナやターゲットについて仮説立てをし、施策を考える

Turingのアセットを分析した

自社のアセットを見極める切り口はさまざまですが大きく2つの切り口があると思います。

  1. 定性的な面として、自社のポジショニング、同業界で競合となるスタートアップの数や立ち位置、その業界の規模

  2. 定量的な面として、サイトへのアクセス数やCXO・メンバーのSNSのフォロワー数や発信

Turingのポジショニングとマーケット

まず、Turingは完全自動運転EVの量産という事業内容です。完全自動運転の実現と、EV量産メーカーの立ち上げという一つずつを切り出したしてもスタートアップの事業として成立するチャレンジであるにもかかわらず、それを両方やっている変わったプレイヤーです。

自動運転やAI、EV、モビリティーの事業を担っているプレイヤーは日本に数社存在しますし、TIER IV・WHILL・PFNさんなどディープテックやAI領域には素敵な会社もたくさんあります。彼らとは親和性はあるものの、ミクロに見ればそれぞれが独自の路線で進んでいる形です。

また、完成車メーカーを目指すスタートアップという切り口では、2010年に生まれたGLMという会社さんも存在しますが、2014年に出荷開始以降、EVというドメインで量産車開発への挑戦を続けており、自動運転にはトライしていません。つまり、Turingのポジショニングである to C・完全自動運転EVという合わせ技であれば独自性が強いと言えます。

独自性の強さはスタートアップではキラーコンテンツである一方で、どのマーケットでの独自性なのか?これは忘れがちな議論です。

スタートアップでは事業立ち上げにおいて、参入市場や足がかかり市場の議論がよくなされますが、TuringのTAMは非常に大きいです。われわれがいる自動車業界は年間自動車出荷額60兆円、就業人口550万人のマーケット。つまり、Turingの事業は大きなマーケットにおいてエッジが効いており、自動車業界からも目線を得やすい状態にあるはずと言えます。これは大きな資産であると考えました。

TAMとは、Total Addressable Marketの頭文字を取った略称です。「ある事業が獲得できる可能性のある全体の市場規模」を意味します。

TAMとは

自社アクセスやSNSでの影響力

実際に定量的な面として自社サイトのアクセス数やSNSのフォロワー数も確認しました。サイトのアクセス数については詳細な数値は出せませんが、私が過去メディアの副編集長をしていた経験から鑑みても決して低くはない数値を得ていました。キーワードやCTR、回遊率などを見る中で、Turingに訪れる人のエンゲージメントの高さがわかり、すでにTuringを認知している層に対する施策をテコ入れをすることはかなり有意義な効果を得られるかもしれないと感じることができたのは大きな収穫でした。

CTR(Click-Through Rate)は、オンライン広告やウェブコンテンツのパフォーマンスを評価するための重要な指標の1つです。CTRは、特定の広告やリンクが表示されたり表示された際にクリックされたりした割合を示します。具体的には、以下の式で計算されます:

CTR = (クリック数 / インプレッション数) * 100

Chat GPT先生より

また、SNSの影響力という観点では入社時当時はCEOの山本が3万人近くのフォロワー、青木も8000人近くおり、フォロワー1000人越えのメンバーもいました。実際にツイート→いいねをくれた人にDM→そこから面談・採用というゴールデンルートが形成されつつあり、採用チャネルとしても機能していました。創業者が採用に強くコミットしており、非常に心強く感じたことを覚えています。

打ち手の方向性と理由

振り返ると、当時のTuringにおける状況は

業界で独自のポジショニングになっており、一定エンゲージメントの高いユーザーがサイトや創業人のSNSを見ている状態でした。そのため、認知を広げる・スカウトメールを送付するといった施策よりも、すでに認知・興味関心がある層に対して彼らが応募するための導線を整備する方が成果が出るのではないか?と考えたのです。

そこで、施策の方向性を下記で進めていきました。

自社にエンゲージメントが高い層に向けて情報を整備する
候補者がTuringを認知してから応募にいたるまでの導線をきれいにする

自社サイトから応募の導線をとにかく整備した

当時のTuringのHPはディープテック感が強く、かっこいい黒色のサイトでした。We Overtake Teslaのメッセージに私自信痺れましたし今でもいいなと思います。

ミッションや会社の方向性はわかる一方で、どんな人が活躍しているのか・
どんな人を求めているか、既存メンバーはなぜTuringにジョインしたのかといった、Turingが気になった人に対する情報は少なかったです。また、創業者2名のイメージもあり応募のハードルが高かったという声を実際の面談を通してN数多く声がとれました。

当時のサイト、黒ベースでカッコよかったです

そこから、サイトをNotion Wraptusに変更し、Turingのミッション、会社のマイルストーン、創業者の思いを丁寧に言語化していきました。また、HERPの各職種情報を整え、求人票のブラッシュアップに力を入れました。ジョイン当時にエンジニアのみんなに聞き周りをしたのですが、誰一人嫌な反応をせず採用に真摯に向き合ってくれました。エンジニアとのMTGがめっちゃ楽しい会社だなと思ったのを今でも覚えています。また、このプロジェクトはCEOの山本が自ら旗を振り、強く推進してくれた点も大変心強かったです。

実は求人票の詳細化はワークしなかった

ただ、実は求人票を細かく分けて詳細に記載する動きはうまくワークしませんでした。山本と振り返りを行う中で、当時こんな会話をしていました。

山本:ユーザーの負担を極力減らそう。クリック数や画面遷移、選択の負荷をとことん減らすことで応募率はあがるはず。
立石:求人票やめて、一個にしませんか?
山本:なるほど。具体的には?
立石:例えば「スカウトを待つ」「カジュアルに話す」などの導線を作るんです。
山本:いいじゃん!GO GOでいこう!

当時の会話

ユーザーの意思決定フェーズでの選択肢が多いのではないか?今のTuringのフェーズで自分の役割がどこにハマるかを厳密に判断できる人って少ないのでは?という話になりました。応募する側の気持ちに立った時に、どの求人で応募をするのかは大きな意思決定です。Turingに興味がある人ほど、ここの選択は慎重になるはず。だからこそ、ここの選択負荷を極限まで下げるようにしました。

この意思決定はかなりワークし、スカウトを待つという求人を作った結果、単月あたりの応募数は数倍になったのです。そこから多くの人材の採用決定が生まれており、今のTuringを支えてくれています。

採用インタビューを書きまくった

HPがきれいになり、応募までのファネルがきれいになってきたタイミングで、採用インタビューを大量に書きました。今Turingでは12名の社員インタビューを記載していますが、当その全てを記載していきました。(最近書いてなくてすいませんの気持ち)

どんな人か、なぜTuringにジョインしたか、どんな人をTuringは求めているかといった情報を丁寧にまとめました。インタビューした社員のみなさんの人生がいい意味で濃すぎて元編集者・ライターとしてはポジティブな苦痛を味わうことになりました。このインタビューを見て応募した人も多く、Turingの中を覗いてもらうコンテンツとしてうまく機能したと考えています。今では採用候補者さまに面接官の情報を送付することに使っています。社員も増えているのでインタビュー記事、かいていきたい。

応募者に合わせた採用の入口を作る

HPやインタビューなど応募までの導線をきれいにした後は、採用の入口や切り口を増やしていきました。オンラインイベント、オフラインイベントを実施し、Turingの中をコアに知ってもらうコンテンツや中を見れる機会を増やしていきました。

候補者さまから見た採用の入口はHPや応募フォームだけではありません。だからこそ、彼らに適した応募の入口ってなんだろうか?という疑問を絶やさず、経営陣と話しながら手数を打っていきました。手数を打つ際に心強いなと思ったのは、山本・青木が「やってみよう」と背中を強く押してくれたことでした。TuringではGO GOというバリューがありますが、採用においてもその姿勢を貫いていました。

果たしてシード期の採用は成功だったのか?

以上がTuringのシード期の採用での選択と集中でした。

この期間の採用は成功と言えるのか?これに対する答えは「まだわからない」というスタンスが誠実だと思っています。明確に「この人とたちなら完全自動運転EVの量産を実現できるかもしれない」と言えます。

ただ、採用は入社が決定した・組織に必要な人員が集まってくれた瞬間が成果ではなく、数年後の事業にどんな貢献ができたのかが真の成果だと考えています。そこの成果を追うべくHRとして引き続き事業に貢献していきたいと思います。

またTuringの採用には、経営陣・メンバーが積極的に関わってくれています。みんなの貢献なしにシード期の採用は実現しませんでした。この場を借りて感謝をお伝えします。(大事なことなので何度でも言いたい)

100名以上のエンジニアを採用するシリーズA

現在、シリーズAに向けた採用活動をしています。Turingではこの2年で400名規模の組織への成長を目指します。2024は年間100名以上のエンジニアを採用しますし、2025年は年間200名以上の人材を採用することになるでしょう。

シードからシリーズAへと会社が進むことで、事業や開発のイシューの解像度も高まっています。その結果、採用ポジションや求人も明確になっている状態です。HRとしてはより緻密でスピーディーな施策実行が求められます。新たな開発イシュー、組織、求人が生まれており、採用に求められるスキル・キャパシティー・がこれまでとは非連続的に増えました。オペレーションを大きく変え、月間100名以上の候補者さまとの接点を作っていますが、これでも全然足りません。私と一緒に採用を強く推進してくれる仲間を求めています。もし少しでも興味がある!という人は気軽に話しましょう。採用ページ、Xなどあらゆるところからお待ちしています。


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