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VFXに出会って、動き始めた僕の人生 山内拓人

こんにちは!note更新担当のたぬ子です。

映画やアニメ、CM制作で、大活躍中のVFXという視覚効果技術を知っていますか?

今回は、愛媛県宇和島市を拠点に、VFXの世界で活躍されている、VFXスーパーバイザー / CGディレクター / デジタルアーティストの山内拓人さんに、お話を伺いました。

なかなか知ることのない業界のお話や、フリーランスの覚悟と苦労など、たぬ子の「知りたい!」が赴くまま、お話しさせていただいたインタビューです!

[プロフィール]
■氏名(ふりがな)
 山内 拓人(やまうち たくと)
■ジャンル
 芸術、アニメ、その他(エンターテイメント)
 映画・テレビ・CM・PV等における3DCG/VFXを中心とした映像制作およびVFXスーパーバイズ、監督業務
■連絡先
 住所:〒798-0022 愛媛県宇和島市伊吹町532-1
 Mail:takuto.yamauchi@kradlex.co.jp takuto.yamauchi.0323@gmail.com
 Tel/Fax:0895-22-2012
■経歴
 VFXスーパーアドバイザー/CGディレクター/デジタルアーティストとして、12年のキャリアをもつ。
 実写(映画、TV、CM)、フルCG、アニメなど幅広く制作に携わり、2021年大河ドラマ『青天を衝け』のVFXスーパーバイザーを務める。
 フリーランスとして色々なスタジオで経験を積み、2021年11月11日、東京&愛媛(宇和島)を拠点とする、株式会社KRADLEXクレイドリックスを設立。
 事業内容は、フリーランス時代と同様に映画・TV・CM・PV等における3DCG/VFXを中心とした映像制作を行いつつ、企画、プリプロ、撮影など全ての工程を手がけている。
 そして、世界に向けたオリジナルコンテンツの企画・制作を目指しています。

時代と共に変化する肩書

ー VFXスーパーバイザー、CGディレクター、デジタルアーティストと様々な肩書をお持ちですが、それぞれどのような違いがあるんですか。

 最初のVFXスーパーバイザーは、先日お仕事させていただいた、NHK大河ドラマの『青天を衝け』で使っていた肩書で。
 CGディレクターは、日本人向けに使っています。日本だとVFXよりCGの方が、何の仕事をしてるのか分かりやすいみたいですね。
 最後のデジタルアーティストは、割と万国共通で。CG、デジタルを使って、何かを作る人という意味合いで使うことが多いです。

 元々、僕がこの業界に入った時は、”CGデザイナー”って世間から呼ばれてたんですけど、日本で作った肩書で世界では通じなかったんで、徐々に変わっていって、気づいたら、いろんな種類の肩書ができていたという感じです。
 なので肩書は、仕事内容やお会いする人によって、適切なものを使い分けるようにしています。

「俺にもできるかも」で、飛び込んだ世界

ー どうして、映画業界に進まれたんですか。

 元々、映画がすごく好きだったんです。
 ですけど、好きな割に何もしてなくて。
 自主映画を撮ったことも無かったですし、大学も映画とは全然関係のない学校に進学したし、「このまま、映画とは関係のない仕事に就くのかなあ」と思ってましたね。
 そんな時、『ALWAYS 三丁目の夕日』で、VFXが話題になっていて、「新しい分野だったら、俺にもできるかもしれない!」と、心機一転!
 映画の世界に飛び込みました!

ー その時、CG技術が話題になっていなかったら、この道に進まれてないですか。

 ないです。絶対ない。
 映画に携わる仕事について、積極的に業界の人に話を聞いたり、ネットで情報収集したりするタイプじゃないから、話題になってなかったら、VFXを知ることもなかったでしょうね。

ー VFXで映画に関わりたいと思ったあと、どのように動かれたんですか。

 VFXへの興味と、映画に関わりたいという思いが、日に日に積み重なり、通っていた大学を中退して、東京の専門学校に入り直しました。
 その後は、働きながら技術を教えてくれるところで、いろいろ学ばせてもらい、徐々にいろんな仕事を任せてもらえるようになりました。
 最初のうちは、映画の仕事なんてなかなか回ってこなくて、2~3年ぐらいずっとアニメばかりをやってましたね。

ー いつ頃、フリーランスになられたんですか。

 28歳の時です。

ー では、フリーランスのメリット・デメリットを教えていただけますか。

 良かったことは、自分の好きな作品や監督の仕事に、参加できる機会が増えたことですね。
 好きなものや人と仕事ができる。これが一番おっきいです。

 ダメなのは、不安定かな…。
 だいたい複数の仕事が重なるように、受けていくんですけど、2つの仕事が同時期に飛んだことがあって、あの時はさすがにヤバかったです。

ー 宇和島には、フリーランスになってすぐに帰られたんですか。

 全然です。こっちに帰ってきたのは、一昨年かな。
 子どもを田舎で育てたいと思っていたので、小学校に入学するタイミングで戻ってきたんですよ。
 それで、宇和島に軸足を置いて仕事するぞ!って思ってたんですけど、業界が東京中心に動いてるんで、なかなか軸足をこっちに移せていないです。

 ほんと、何もかも向こうなんですよ。
 クライアントも、映像に出てくれる人たちも。
 だから、うちに仕事が来ても、人が絡む作業は全部東京で。
 撮影のためだけに東京行って、終わったらとんぼ返りってこと、しょっちゅうです(笑)

ー CGってデジタルなので、地方でも問題なく仕事ができるのかと思ってました。

 僕も思ってました。
 宇和島で全然仕事できるじゃん、って。

 コロナでリモートが進んでからは、「地方とか関係なく、仕事できるようになったでしょー」って、言われることも増えましたけど。
 でも、全然そんなことなくて。
 逆に、リモートが進んだせいで、都会との格差が広がったように感じています。
 都会で企画の重要なところ決めて、作業だけ地方に任せるみたいな。
 クリエイターじゃなくて、ツールとして使われるだけの関係になるんだろうなって、危惧しています。

出さない自我、出す個性

ー 仕事を始めた頃と現在で、ご自身に変化はありますか。

 最初のころは、指示どおりに動くので精一杯だったんで、割と受け身で仕事をしてたんですけど。
 フリーランスになってからは、クライアントとの距離が近いので、より緊張感をもって仕事をしています。
 予算が少ないからと言って、クオリティの低いものを出すわけにはいかないですし、時間とアイディアで、できる限り対応したり、クリエイターとして仕事に向き合う時間が増えましたね。

ー ご自身が考えるいい作品とは、どのようなものですか。

 もちろん、僕が美しいと思うものはあるんですけど、仕事として考えるなら、クライアントが求めるものを、どれだけ提案できるかですね。
 クライアントがいいと言うものを作るのが、仕事なので。
 例えば、どんなにすごいフランス料理を作れるシェフがいても、お客さんに500円の炒飯求められたら、予算内で美味しい炒飯作るしかないじゃないですか。
 僕がしてる仕事って、そういうことだから。
 クライアントに寄りそって、しっかり意思疎通をして、相手の求めるものを作る。クライアントあっての仕事なんで。

映画は、ストーリーよりもビジュアル

ー 先ほど、映画がお好きとお聞きしましたが、映画のどこに魅力を感じますか。

 僕は、すごく単純な人間なんで、ストーリーよりも映像に惹かれるんです。
 昔から、映像に力を入れている映画を観ると、素敵だなと思うのと同時に、僕は美しいものや魅力的なものを作るのが、好きなんだろうなと思っていました。
 なので、映画に携わるとしても、脚本などの物語を紡ぐセクションではなくて、カメラや視覚効果などのビジュアル系だろうな、と考えてましたね。

 有名な作品も、話なんて全然覚えてなくて、どこが素敵な場面で、どこのカットが美しかったかってことばかり、すぐに出てきます(笑)

ー 映画の内容よりも、ビジュアルに着目されているんですね。

 映像だけで、十分伝わる映画ってたくさんあるんですよ。
 特に、海外の映画なんてすっごいセリフが少ないですし、ストーリーが伝わる映像をバッと出すから、そういうのを観ると「ええなあ」と思いますね。

新しい技術だけが、全てではない

ー 新しい技術がどんどん出てくる業界だと思いますが、常にアンテナを張って、新しいことを勉強されているんですか。

 基本は、そうですね。
 業界の流れも含めて、技術やソフトなど、すごいスピードで変わっていくので、情報収集のためのアンテナは常に張っています
 とは言え、「昔からの技術を捨てているか」と言われると、そうではなく、”持ってるものを磨きつつ、新しいものを取り入れる”というスタンスで、やっています。

ー 新しい情報や技術は、どこから取り入れるんですか。

 海外の作品は、すぐに新しい技術を取り入れるので、よくチェックしています。
 作品のサイトから、どういう技術やソフトを使ったのか調べて、「こういうツールか。まだ習得しなくていいかな」と、自分の仕事に必要か判断します。
 だいたいのソフトに体験版があるんで、「使ってみたい」と思ったら、まずそっちを触ってから、導入するか決めることが多いですね。

近い未来と、遠い未来の自分を想像する

ー CGの世界を目指している若い人たちは、都会に出るべきだと思いますか。

 (食い気味に)はい。
 地方の学校だと、都会に比べて圧倒的に業界とのパイプが無いんで。

ー それは、専門学校や大学進学の時点で都会に出るべきということですか。

 はい。
 都会の方が、就職にかなり有利だと思います。

ー CGの世界は、狭き門ですか。

 いまだに、ちょっと狭いかな。
 しかも、この業界に入ったとて、長く続けられるかというのも難しくて

 どこのスタジオも、正社員のCG担当者って少なくて、案件ごとに人を集めて、終わったら解散という仕組みなんです。
 こういう働き方って、海外では一般的なんですけど、日本ではあまり受け入れられないですよね。
 家庭もあるし、子どももいるしってなったら、余計に。

ー …と言うことは、CGの世界で働く=フリーランスということですか。

 難しいですね…。
 もちろん、正社員として企業に所属するのも、いいと思いますけど。
 こういう仕事に就きたい人って、自分の好きな作品やテイストがあって、好きな作家や監督がいて、独自の世界観を持ってることが多いんですよ。
 だから、自分の表現欲を満たしたいなら、フリーランスの方がやりやすいでしょうね。
 だけど、生活の安定という面を見れば、正社員というのはとても魅力的ですし。
 表現欲と安定、どっちを取っていくかは大きな悩みです。

 僕は、好きなことが明確にあるので、常にそれをやっていきたいし。
 仕事が無いなら無いで、繋ぎの仕事をしたり、割とフレキシブルにやっていきたいって思いがあるから、フリーでやってて。
 当然、仕事がポンっと空いて、ヤバかった時期があったんですけど(笑)
 それでも、僕にはフリーが合ってたなって思います。

ー では、CGの世界を目指している若い人たちに、アドバイスをお願いします。

 先のことまで、しっかり考えた方がいいと思います。
 この業界って、若い世代が一番多くて、僕らより上の世代がフッといなくなってるんです。
 CG技術創成期を支えてきた先輩方が、確実にいらっしゃるはずなのに、年齢層の分布図ではいないことになってる。
 これ、不思議じゃないですか?
 みんなどこ行ったのって感じで。

 だから、果たして10年後に、僕が求められているのかも、正直分からないですし。僕も含めて、先のことを真剣に考えないとだめなんですよ。

僕にしかできないことを、宇和島から発信する

ー 今後、愛媛でやっていきたいことはありますか。

 僕の会社が、次のエンターテインメントを作るきっかけになるといいな、と思います。
 会社は宇和島市にあるんですけど、地方でもエンターテインメントを作って発信してる人がいるんだって、若い子たちの活力になるといいですね。
 そのために、僕にしかできない作品を意欲的に作って、愛媛を越えて日本全国、世界へと発信していこうと思っています。

 絵しりとり 黄身 ⇒ み○○○

 CGディレクターの山内様には、デジタルでイラストを描いていただきました。とっても美味しそうですよね!


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