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「誰かのいちばん好きな人」になるのはなぜ難しいのか?|ドラマ:海のはじまり

「誰かのいちばん好きな人」になるのは難しい。

「夏くんより好きな人ができちゃった」

電話で言われ、二人は別れる。

引用:ドラマ「海のはじまり」|フジテレビ

そして8年後、その好きな人の正体が「自分と相手の間にできた子ども」であることを知る。

脚本家の生方美久さんは、孤独を灰色で描かない。青みがかったセピア色で描ける人だ。それは、前作「いちばんすきな花」でもそうだったし、前々作「silent」でもそうだった。

だから、絶望せずにみていられる。

彼女が描く涙のシーンは、いつも希望に満ちている。


「誰かのいちばん好きな人」になるのは難しい


月曜よる9時から放送中のテレビドラマ「海のはじまり」を見ている。

社会現象とも呼ばれた『silent』(2022年10月期)の脚本・生方美久さん、風間太樹監督、村瀬健プロデューサーが再び集結し、この夏、“親子の愛”をテーマにした完全オリジナル作品をお送りします!今の時代だからこそ伝えたい人と人との間に生まれる愛と、そして家族の物語を丁寧に描いていきます。

引用:ドラマ「海のはじまり」|フジテレビ

8年前に別れた恋人・南雲水季(古川琴音)の葬儀で、自分に子どもがいることを知る月岡夏(目黒蓮)。

「夏くんより好きな人ができちゃった」

水季はそう言って夏と別れ、海(泉谷星奈)を産むことを選ぶ。

いちばん好きな人は変わっていく。変わったらダメなものではないし、変わらないといけないものでもないし。好きだから別れることもあるし。

誰かのいちばん好きな人になりたい。

ついそう思ってしまうけど、それは大切なことではない。

いちばん好きな人といちばん大切な人


父と母はとても仲が良く、子どもよりもお互いを大事にする夫婦だった。

弟が病気持ちで生まれた時は、みんなが弟を見るようになった。

わたしは孤独だった。

はじめて恋人ができた時は、「誰かのいちばん好きな人」になれた気がしたけど、5年後にはいちばんではなくなった。

まぁ、そうだよね、と思った。

その後もずっと、わたしは「誰かのいちばん好きな人」になれずにいる。

誰かに座ってもらうための椅子を、ずっと準備しているにも関わらず。

30代後半、1.5回目の離婚をした時、ついにわたしはからっぽの椅子を撤去した。

「誰かのいちばん好きな人」になることをあきらめた。

からっぽの椅子があると、孤独が増幅してしまう。これから先はもう誰もわたしの隣には座れない。そんな状況を自ら作って、孤独を隠した。

でも、からっぽの椅子を撤去してみてはじめてわかった。

からっぽの椅子は、そもそもいらない椅子だ。

もう恋なんてしないとか、そういう槇原敬之的な話をしているわけじゃない。「物理的に準備する必要がない椅子」であることに、今更ながら気がついてしまったのだ。

誰かのいちばん好きな人になる時。

わたしが自分の椅子を相手の隣に持っていって座るか、相手が自分の椅子をわたしの隣に持ってきて座る。

決して、わたしが準備したからっぽの椅子に相手が座ることはないし、逆もしかり。

からっぽの椅子は、誰も座らない。

知ってた?

…わたしは知らなかった。もっと早く教えてほしかった。

からっぽの椅子に座る人がいるとしたら、今まだこの世に椅子を持たない、自分の子どもだけなのだ。

からっぽの椅子の正体は母性?


もしかしたら女の人は常に、自分の横にからっぽの椅子を準備しているのかもしれない。よくわからないまま。

そして、「誰かのいちばん好きな人」になる時、誰かが座ってくれるような気がしている。

でも、本当はそうじゃない。

***

「夏くんより好きな人ができちゃった」

そう水季は言ったけど、それは決して夏が2番目というわけじゃない。

水季にとって海は、絶対に会いたい好きな人。
自分の選択次第で会える人。

水季にとって夏は、絶対に幸せを守りたい大切な人。
幸せの邪魔をしたくないと思って、別れを選んだ。

めちゃくちゃ単純だけど、めちゃくちゃ大事なことだ。

好きな人と大切な人は、きっと違う。

そして、わたしが喉から手がでるほどほしかったのは、好きな人じゃない。

***

水季の好きな人と大切な人が、どんな関係を紡いでいくのか、今後の展開がとても楽しみ。

生方ワールド、やっぱり好きだ。




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