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読書記録:男女の友情は成立する?(いや、しないっ!!) Flag 4. でも、わたしたち親友だよね?〈下〉 (電撃文庫) 著 七菜なな

【夢を追いかけるあなたへ、この恋心に気付いて欲しい】


【あらすじ】

運命の初恋を捧げた親友二人による、互いの夢と理想を賭けた真夏の大勝負が始まる。

とある小学生の男女が、お互い初めての恋に落ちたあの日から7年。
互いに交わした約束を遂げる為に、高校生として再会を果たした悠宇と凛音は一番の親友になる。
しかし、ただ今、二人旅の真っ最中にいた。
凛音の姉・紅葉からのいらない横槍を発端に、両者譲らぬ大喧嘩が勃発してしまう。

「ご褒美旅行を守るためなら、わたしは悪魔にもなるから!」

「……たとえ榎本さんに嫌われても、俺は自分のやるべきことをやりたい」

二人きりで夏の思い出づくりを優先したい凛音。
東京のアクセクリエイターから成長のヒントを得たい悠宇。
二人がすれ違いを重ねる中、悠宇に展覧会へのアクセ出品の誘いが舞い込んでいく。

そして小さな火が灯る。
初めてづくしな東京〈親友〉旅行の行方は、一体どうなるのか⁉

あらすじ要約

東京にそれぞれの野望を抱きながら、共に旅に出た悠宇と凛音が、想いがすれ違い、やがて決定的な恋の終焉を迎える物語。


枯れない花には価値が無く、終わらない初恋は地獄に他ならない。
理想を追いかける事は本来は美しく、素晴らしい事。
しかし、理想は幻想であるからこそ、触れる事は叶わない。
その高すぎる理想が現実の自分の枷になってしまえば、自分で自分の首を締める事になる。
だからこそ、どこかで現実を知って決別しなければならない。
初恋から親友になった凛音。
しかし、親友という言葉は男女で使うと、またたく間に残酷な意味に変わる。
それでも、その関係を大切にしたい彼女に対して、アクセ出品のチャンスが舞い込む悠宇。
そして、思い知らされる、ただ純粋に夢を追いかけ続ければ良い訳ではないジビアな問題。

アクセクリエイターをビジネスとしてやっていくなら、高品質のアクセを作るだけでなくて、販売ルートや販売手法、顧客のニーズ調査などの、いわゆるマーケティング活動を覚えていかなくてはならない。

互いの純朴な願いと軋轢を越える中で、紐解かれる切実な想い。

悠宇にずっと親友だからと言われ続けた凛音。
それでも、彼の特別になりたいと鋼の精神で耐えてきた。
いつか、この我慢が報われる日が訪れる筈だと。
一心に恋心を温め続けてきた。
しかし、東京で紅葉の元でデザイナー見習いとして切磋琢磨する元アイドルや元ダンスグループメンバーで今はアクセサリーを作っているクリエイターの天馬と早苗に悠宇が出会った事で。
悠宇の狭かった世界が拡がり始めて、彼が見せる自分の知らない顔に、凛音の恋心は軋み始める。

悠宇が熱意を注げる事に、一番に共感する事が出来ない。
そんな無力さをまざまざと悟ってしまった。
恋と夢、友情に揺れ惑いながら、仮初めの平穏は音を立てて崩れ落ちる。

何かを選択するという事は何かを切り捨てる事でもあり、その痛みと苦しみを抱いて前に進むしかない。
自分の信じた物を正解にしていくしかない。
その振りかざした信念が、誰かを傷付けてしまうのを恐れてしまう葛藤も当然ある。
常に自分の選択に自問自答しながらも、悠宇は青くて苦い青春を紡いでいく。

この東京旅行は、悠宇のクリエイター人生としての転換期でもあるし、悠宇と凛音の今までの関係性に変化を与える物でもあった。
何かを得れば何かを失うという現実。
クリエイターとしての成長に時間を取ったことで凛音とは関係が悪化する悠宇。
自分の心血を注いだアクセサリーが、お客さんの手に渡って、明確な利益として自分に返ってくるやり甲斐を確かに手にした悠宇。

前に進む悠宇とは裏腹に、いつまでも過去に因われ続ける凛音。
思い出を大切にする事は良い事。
しかし、過去を美化しすぎてこだわる事で、今や未来を疎かにしてしまうのは良くない。

そもそも、何故、凛音は悠宇に恋をしたのか?
夢をまっすぐ捉え続ける彼の瞳に惹かれたのではないか?
しかし、今は彼がまっすぐに夢に向かっていく程に二人の時間は奪われていく。
そんな皮肉なすれ違いをようやく認識した凛音は、己の初恋に終幕を告げる。
どんな時でも動じずに、完全無欠を貫いた自分は無意識下に、姉である紅葉の身代わりを求めていた。

自分よりも夢を優先した悠宇との関係性を見直していく。
もう何も知らなかった無敵な少女時代に戻る事は出来ない。
過去と今と未来の狭間で、全てを掴み取る事は出来ないと理解出来たのは、彼女にとって成長なのだろうか、それとも悲劇なのだろうか?

ある意味でそれに気付かせる為に、凛音達を東京の舞台に招いた紅葉のしたたかな計らいだと勘ぐれば、恋に浮かれる妹に成長して欲しいという姉の優しさとして受け止める事も出来る。

初恋に囚われて「思い出の箱庭」から出られなかった凛音と、自分のやりたいことに向き合って、前に進んだ悠宇。
未来を見る悠宇、過去を見る凜音。
見据える先が互いに違う彼らが、軋む運命の歯車の先で、各々の試練に立ち向かっていく。

残酷な初恋の決着を迎えて、停滞から脱した凛音が新たに固めた決意とは?
次なる舞台である文化祭で見つめ直したその想いはどのように花開くのか?

神の与えた試練を、彼らはそれぞれの夢と恋を、どのように守って掴んでいくのだろうか?



男女の友情は成立する?(いや、しないっ!!) Flag 4. 




















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