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読書記録:絶対に俺をひとり占めしたい6人のメインヒロイン season1.さて、誰から振ろうか? (角川スニーカー文庫) 著 石田灯葉

【誰が自分にとって相応しいか?取捨選択の末に導き出す真実の愛】 


【あらすじ】

「荷物は少ない方がいい。物も人間関係も、だ」

人付き合いは極力、省いた人脈ミニマリストな高校生、平河真一が参加する事になった『恋愛留学』
『恋愛留学』とは、亡くなった彼の母親が遺言として残した未来の婚約者を決める熾烈な戦い。

衣食住完備で使える資金は無制限な最高の環境で6人の花嫁候補達と一緒に暮らした暁に、順番に振っていくという鬼畜なルールがあった。

花嫁候補は、アイドル、女優、ユーチューバー、幼馴染、義妹、元カノなど見目麗しい少女達。
全力でアタックしてくる個性豊かな美少女達を、誰から脱落させるのか、頭を悩ませる真一だった。

しかし、『この中にズルをしている人がいる』という謎の告発文から状況は様変わりする。

負けヒロインを決める俺。振る事を前提にした勝ち確ラブコメが始まる。

あらすじ要約
登場人物紹介


母の死が原因で、傍若無人な政治を行う父に反旗を翻す真一が、見目麗しい女子達と恋愛留学を始める物語。


この世界には古今東西、様々な恋愛バラエティがある。
そういった番組を経て、結ばれた二人がその後に、必ずしも幸せになるとは限らない。
それは後々、暗い報道で明らかになる事もある。
しかし、人々はどれだけ時代が移おうとも、そういった番組を希求する。
それが紛い物だろうと、心に訴えかける物があるからかもしれない。

荷物は出来るだけ少ない方が良い。
物も人間関係も、自分のキャパシティをオーバーする物は、行動を制限して、フットワークを重くする。
社交的に様々な人と繋がるのは、人脈を増やすようで、その選択肢の多さは迷いも生む。
義理と人情という制約が、自分にとって、重りになって枷となる。
身に余る人間関係が正しい判断を鈍らせる。
究極な断捨離を行う真一は、己の確固たる意志の元で、少女達を合理的に切り捨てる修羅場に身を投じる。

通っている中高一貫の男子校で「原因不明の苦学生ぼっち」と畏怖される真一は、亡き母親がきっかけに恐怖政治を行い、大企業グループのトップまで上り詰めた父親を追いかけて。
かつてのグループを取り戻すと言う野望の為に、勉強を重ねていた。

そんな自己研鑽の中で、彼を訪ねてきたのは母親の生前の秘書を名乗る女性、十条。
彼女が届けた母親からの遺言。
それは母親が作っていた結婚ビジネスの会社を託すという物。
その条件として、真一自身が候補者の中から婚約者を決める、「恋愛留学」に参加して欲しいという遺言だった。

野望の足掛かりとして、真一はその提案を受け入れて。
恋愛留学の為に、用意された渋谷の高層ビルに、選別された候補者達が集う。 
全国民を魅了したトップアイドル、莉亜。
類まれなる頭脳を持つ義妹、舞音。
幼馴染兼ストーカーの咲穂。
元カノであるすみれ。
日本一の女優である玲央奈。
有名youtuberであるユウ。
そんな六人の中から婚約者を選ぶべく始まる、第一ステージ。
集団デートを経て、その結果から二人きりのデートへ漕ぎ着ける、まずは一人が散り消える一世一代の舞台。

ある者は記憶の為、ある者は自分の為、またある者は彼の為に。
覚悟を秘めた少女達は、相手を出し抜こうと牽制し合って、時にライバルを蹴落とそうと火花を散らす。
そんな熾烈な戦いに囲まれながら、真一は彼女達が抱えた想いに触れる事で、母親が遺した言葉の真意に迫っていく。

何故、そのような修羅場に敢えて身を投じるのか?
それは、六人の中から一人の花嫁を選ぶ事が、亡き母親の会社を継ぐ条件として提示されたから。
誰を選ぶのか?ではなく誰を切り捨てるのか?
彼女達は何故、そこまで必死になってアプローチをしてくるのか?
その行動の裏の背景を探っていく事が、彼女達を取捨選択する見極めとなるポイント。
しかし、実際の恋愛はリアリティショーのように、劇的でロマンチックな物ではない。
うんざりするほど、くだらない理由が背景にあったり。
人間の打算目的の醜い感情が垣間見えたりする。 

そんな彼女達の黒い一面を知っても尚、自分の将来の伴侶とするなら、相応しい相手を選ぶべきだと傲慢に選んでいく真一。
一人ひとりとの真一の関係性が、丁寧に浮き彫りされていく。
彼女達のそれぞれの人生観、恋愛観、目標を尋ねていく。
普段の生活やデートの中で真一は、彼女達の間で結婚したい理由を、腹を探り合った。
しかし、関係が完成した者から順番に消えていく。
恋愛とは、完成した時点で終了であり、持続していく為には、絶えず形を変えていかなければならないから。

一見、真一が権力を握っていたかのように見えるが。
その実、どうしても真一と結婚パートナーになりたい彼女達の駆け引きに振り回されていく。
各々が思惑があって集結したヒロイン達。
あざと系アイドル莉亜の目的。
非日常系YouTuberユウの目標。
人気女優、玲央奈の迫真の演技。
ストーカー幼馴染の執着。
唯一、元カノすみれが抱く危機感。
そして、ライバルの思惑を出し抜く、頭脳明晰で冷静な義妹。

そんな彼女達の思惑を越えて、届けられたのは「ズルをしている者がいる」と言う怪文書。
ズルとは何を指し示すのか?
下手人は誰なのか?
まるで、犯人を当てるミステリーのような事態の中で、解き明かしていく、ある少女の思惑。 
誰もが自らの心の中に、激情的な想いを抱えて。
それを、真一の心に傾けようと火花を散らし、自分なりのやり方で彼へと迫っていく。

そのズルを看破してみせた真一はどこまでも、人情味があって誠実な対応をしていた。
魅力的なヒロインばかりだからこそ、定められた期間内に、一人ずつ選ぶ事を強制する状況は、彼にとって、多大なストレスがあった。
どうせなら、全員と添い遂げたい。
しかし、それは己の野望から逸脱した物だから。

ならば、せめてもの償いとして、魅力がないから振るといったマイナスな感情を動機にするのではなく。 
自分が前に進む為の、自分なりのポジティブな理由を動機にして、彼女達に指し示す事を選ぶ。
彼女達の真意を探った果てに、真一が嫌でも気付かされた事。
彼女達が賭ける理由は千差万別であったが、そこに秘められた想いは、皆同じであったという事。
普段の何気ない日常生活で、火花が散る劇場型ラブコメを共に過ごして。

真一が届けた想いを胸に抱いて。
また、自分が伝えたかった本心を彼の心に刻み込んで。
ある少女は舞台から降りて、新たなシーズンが始まっていく。
果たして、次に散る事となるのは、誰の恋となるのか?

真一は、花嫁候補に相応しい女子を選ぶ果てに、真実の愛を掴み取れるのだろうか?







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