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里山の恵みを届ける、こだわりのグラノーラ ー久万高原町 木村章子さん(ハニカム SWEETS FACTORY)

2022年2月の「地元を愛す。」プレゼントの賞品にセレクトしたのは、久万高原町の小さな菓子工房が地元の食材を使って作る「里山グラノーラ」。自然豊かな久万高原町旧美川村地区で夫婦でトマトを育てる傍ら、地元の道の駅などでお菓子を販売している「ハニカム SWEETS FACTORY」の木村章子さんにお話を伺いました。

久万高原町の素材にこだわったハニカム SWEETS FACTORYの里山グラノーラ。

余ったクロモジパウダーを使ってできたグラノーラの味に感動!このおいしさを伝えたい!


木村さんは2015年に結婚を機に久万高原町に移住。夫婦でトマトを育てる傍ら、もともと好きだったお菓子作りを生かして地元の道の駅などでシフォンケーキなどを販売している。本格的にグラノーラを作り始めたのは2020年の秋、久万高原町が特産化に向けて力を入れているクスノキ科の落葉低木で、“国産ハーブ”として注目を集める「クロモジ」との出会いがきっかけだったという。

国産ハーブとして注目されるクロモジは、久万高原町内にも多く自生している。

(木村章子さん)
2020年11月に町内でクロモジに関する講演会があって、その会場で販売するクロモジのシフォンケーキを焼いてほしいと頼まれたんです。その時にいただいたクロモジのパウダーがほんの少し余ってしまって、それを使ってグラノーラを焼いてみたら、これが本当においしくて。グラノーラは作り方自体はとても簡単で、いろんなアレンジができるからおもしろいと思ったんです。そこから自分でも驚くようなスピードで動いて、11月後半の3連休には、もう道の駅で販売していました(笑)

―それだけ衝撃的なおいしさだったんですね。今ではグラノーラの種類も増えていますね。

期間限定のものもありますが、今は8種類ほどあります。クロモジだけでなく、「はなこ」と呼ばれる久万高原町で昔から栽培されている地とうきびの粉やヨモギ、町内産のリンゴを主役にしたものや、町内のコーヒー屋さんの自家焙煎の豆を使ったもの、そして自分たちが育てたトマトなど、久万高原町ならではの素材を使っています。「はなこ」は、この辺りではお餅に入れたり、「はなこねり汁」という郷土料理に使われていたりして、移住してきた当初から興味があったのですが、クッキーに入れて焼いても香ばしく、食感がざっくりしておいしいです。

また、今一番人気の「自家製伊予柑ピールとチョコレート」には、私の実家が今治市菊間町で柑橘農家をしていて、そこで育てた伊予柑をピールにして使っています。干しリンゴもそうですけど、昔から何でも作ることが好きなので、作れるものはできるだけ自分の手で作りたいんです。

オートミールをベースに愛媛県産の小麦粉などの材料を混ぜ合せ、オーブンで焼く⇒ほぐすを数回繰り返す。


持ち前の“妄想力”で膨らむアイデアを形に。里山の恵みがたっぷり詰まったグラノーラを届ける


―ご実家は柑橘農家ということですが、小さいころから自分も農業やものづくりをしようと考えていたのですか?

昔から今のような生活がしたくて、というわけではないんです。私は調理師学校を出て、大阪で飲食関係の仕事をしていて、愛媛に帰ってきてからはカフェで働いたり、他業種に転職したりもしました。大阪で暮らしていた頃は「地元には何もない」と思っていたんですが、一度離れたからこそ愛媛が好きになったというか、都会にはないものがこんなにもたくさんある!と良さに気づけたと思うんです。愛媛に戻ってきてから実家で農業を手伝っていた時期が2年ほどあって、その時に自分は街に住んで田舎に遊びに行くよりも、自然の中で暮らしたいんだなと気づいたんです。農業を始めようとしている夫に出会ったのもちょうどその頃でした。

とはいえ、自然の中で暮らしたいとは思っていても、そこでものづくりをして売り出したいとまでは考えていませんでした。私はできれば陰に隠れたいタイプで、お菓子を売ってもあまり名前は出したくないと思っていたんです。以前はインスタなどのSNSも苦手で、自分から何かを発信することはなかったのですが、グラノーラを作り始めて、本当においしいと思ってからは、そんな自分の気質はどうでもよくなりました。今ではグラノーラの材料にもいろいろな背景があって、「こんな場所でこんな人たちが育てている」ということを知ってもらえたらうれしいなと思い、あれこれ発信しています。

私は調理師学校に通わせてもらって飲食業に携わったものの、接客を担当した時期が長く、「作る」技術を高めてこなかったので、お店で出せるような料理もケーキ屋さんのようなきれいなケーキも作れないことがずっとちょっとしたコンプレックスだったんです。でも、「作るのが好きで楽しい」でいいじゃないかと思えるようになって、気が楽になったというか・・・。グラノーラに関していえば、この素材を合わせたら絶対おいしい!というイメージからグラノーラを作り、もともと絵を描くのが好きだったので、こんな感じのパッケージデザインにしたい!というのを自分で考え、形にできる。高い技術力は持っていないけど、自分の持つ妄想力と創造力が活かせる。それがとてもうれしく楽しいんです。 

木村さんの工房のすぐそばにある「御三戸嶽」。夏は川遊びをする人でにぎわう。

―現在はトマト栽培とお菓子作り、さらに2歳半の男の子の子育て真っ只中ということですが、自然豊かな久万高原町での暮らしはいかがですか。 

菊間町で海の近くに住んでるときから、自分は海より「川派」だと思っていたんです。だからみんながわざわざ遊びに来るような美しい川の近くに暮らすことになってうれしかったです。冬の寒さはレベルが違うなと思いましたが、だいぶ慣れましたし、雪が積もると今でもワクワクします。工房のすぐ近くにある御三戸嶽の川原も大好きで、子どもとよく遊んでいます。久万高原町で暮らしていると車で走っているだけでも季節の変化を感じることができて、日常の中で季節の移ろいを実感できるのがうれしいですね。グラノーラを作るようになってから、地元の食材をたくさん使うので、季節をより意識するようになりました。

―これから作ってみたいものはありますか?

妄想はたくさんあります(笑)。近くに古代米を育てている人がいるので、古代米を粉末にしてブルーベリーと合わせた“アントシアニン推し”のグラノーラや、柚子のピールとショウガを合わせた「冬のあったかグラノーラ」とか。夫の出身が伊予市なので、特産のいりことナッツを入れた「里海グラノーラ」もいいな。いろいろ考えています。

【この記事は2022年2月にeatホームページに掲載したものです。】

ハニカム SWEETS FACTORY 木村章子さん
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