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世界最高の恋愛映画『天井桟敷の人々』の4K修復版が公開されたっていうから観に行ったら『男はつらいよ』と似てる気がしたのは気のせいかしら。それと記事紹介とか。

天井桟敷の人々が4K化したらしい

ご存知の方もいるかと思いますが、現在『天井桟敷の人々』って映画の「4K 修復版」が全国で、あまり大々的ではないものの、公開されております。都内だと恵比寿のガーデンプレイス内の「恵比寿ガーデンシネマ」で特別興行の枠で見られて、わたくしは今月の頭に行ってきましたのじゃ。

映画好きの間ではむちゃんこ有名な映画なようでしたが、映画は好きでも映画通ではないわたくしは存じませんでした。が、公開されてるってことを知っ際にキャッチコピーを目にすることがありまして、そこで美輪明宏さんがこんなことを言っていたのですよ。

詩人プレヴェールによる数々の名台詞が
人間の弱さや愚かさ、愛の真実を見事に表現します
何があっても観ておくべき!
世界最高の恋愛映画 ────美輪明宏

ベタ褒めですわ。

何があっても観ておくべき!……なんて、あの、いつもおっとりとした美輪明宏さんがエクスクラメーションマークなんか付けてまで「世界最高の恋愛映画」を讃えている。。。これはね、映画通とまではいかない映画好きの身ではありますが、無視できるほど不出来な感受性はしておりませんことよ。

天井桟敷の人々って男はつらいよっぽくね?

マルセル・カルネ監督と詩人のジャック・プレヴェール脚本のタッグによる『天井桟敷の人々』は、190分オーバーの映画でしたが、観客を飽きさせてはくれない時空を超越する類いの傑作でした。(←この言い回しは「プロの映画ファン」を自称する、『天井桟敷の人々』の字幕も担当した山田宏一さんの口調を意識しております笑)

1945年に封切られたらしいこの映画は本国フランスで熱狂的なまでの人気を博したそうで(とはいえ批評家たちは当初は陳腐だとか言っていたらしいですが)、花の都パリを舞台にした恋愛映画ともあって、フランスの国民性を象徴する映画として知られるまでになったとのこと。

──と、いうことを聞いたわたくしは、「あれ、この語られ方って山田洋次監督の映画《男はつらいよシリーズ》の語られ方と似てないかしら?」と思ったのでした。

どういうことかと言うと、『天井桟敷の人々』は戦後から現代に至るまでの間にフランスの国民性を代表する傑作映画だということで、テレビ放送を何度もされたりしたようなのですね。《男はつらいよシリーズ》もある種日本の国民性を代表する映画なんじゃないかしら…と思っているのがさしあたってはこれを書いてるわたくしですので、両者とも同じく戦後に位置付けることのできる映画ということもあるし、どーにも国民の精神性を支える背骨のような映画として共通するものがあるんじゃないか、というのが弁明です。

フランスと日本の国民的映画として

『天井桟敷の人々』は恋愛悲劇として王道の悲恋を描いているものの、《男はつらいよシリーズ》はアンチロマンもいいところです。

《男はつらいよシリーズ》に関して、井上ひさしあたりがロマンの典型である貴い血筋の者が捨てられて次第に成長していくタイプの「貴種流離譚」なんかとは真逆を行っていると指摘しているように、生まれも育ちも粗悪で性格も容姿も不格好な男がろくに成長もせず、毎度恋をしてはフラれて家出を続けるといった映画なんですもの。

しかし、日本人にとっては《男はつらいよシリーズ》が刺さる──これは間違いないでしょう。現にお盆と正月に公開されて1969年から1995年までを毎年劇場を盛り立てていた作品であることは確かですし、『天井桟敷の人々』と同様に多数あるシリーズ中からテレビ放送され、国民的映画としてお茶の間を賑わせていたのは、90年代に生まれた日本人なら察するものがあるのではないでしょうか。

個人的な感想ではありますが、『天井桟敷の人々』と《男はつらいよシリーズ》の違いを通して、フランス人と日本人の国民性の比較はできるのじゃないかしら? ──なんてことを思ったりもします。

たとえば、二部作で「二度と戻れない時の移ろい」をスクリーンに映した『天井桟敷の人々』に対して、48作を超えるシリーズものとして「登場人物と共に歳を重ねる時間」を観客に観せてくれた《男はつらいよシリーズ》、といった対照で。

天井桟敷の人々についての記事

ここまでぐだぐだ書いてきましたが、実はもうすでにわたくしはある程度『天井桟敷の人々』のことを書いているのです。

下の記事では『天井桟敷の人々』に関することをワーッとまとめていますし、

次の記事では「恋愛編」と題して、美輪明宏さんの言葉を手掛かりに「恋と愛の違い」を見たりして、『天井桟敷の人々』の第一部から第二部に掛けての人間模様を図で書いてみたりしております。

図はこんなんね ↓

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次の記事は「美神編」と題しまして、『天井桟敷の人々』における美の女神あるいは悪女(ファム・ファタール)であるところのガランスと、彼女に恋する男たちの振る舞いに注目してますな。

まとめ

とまぁ、『天井桟敷の人々』は素晴らしい映画だってのは、このnote記事も含めて、わたくしに ”書かせる” だけの魅力があるということは確かです。だって、自分の感動を「おもしろかったよ!」と人に表現したくなる映画ってことですから。まだ観てない人は観てみてね〜。

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