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【体験記】メンズメイク教わったから「宣材写真撮影ごっこ」してきた【写真無し】

早いもので間もなく2023年も3月に入ろうとしています。
時期こそ1ヵ月程前に遡りますが、今回はどこにでもいる特別でも何でもない一般人・ド素人の僕が「宣材写真ごっこ」という、奇怪とも言える遊びをしてきました。

これだけでは意味がさっぱり分からないこととお思いですから、本記事では、なぜどうしてそんな事を?という理由に始まり、この一連の出来事が僕にどのような影響をもたらし、最終的にどのような気付きを得たのかという部分まで詳らかに記し、体験記として残すこととします。


起:そもそものきっかけ―「anan」の水川かたまり

メンズメイク、という概念自体が日本の若~青年層に認知され始めたのはここ数年くらいでしょうか。BTSを始めとした韓流ブーム(n度目)と、ジェンダー多様性LGBT……etcの風潮が重なるようにして、男性のスキンケアや脱毛、メイク等の美容意識の高まりがネットやSNSなんかを見ていても感じられるようになっていた気がします。

そういう訳でメンズメイクという存在は理解していましたし、今までの男性の身嗜みの延長線、くらいな感じでその概念にも特に抵抗はありませんでしたが、この時点ではまだ他人事でした。

さて、その意識がぶっ壊れ、自分事として向き合うきっかけとなったのは
『anan』2021年10月6日号「Makeup」企画に登場したお笑い芸人・空気階段の水川かたまりと出会った時でした。これが僕の人生において「メンズメイク」という言葉がより一層の解像度を持って現れ始めた瞬間だったわけです。

だって、普段のかたまりはこんな感じなのに

この時点で既に顔立ちが整っており、イケメンの片鱗が見える

ananだとこう。

ビジュ爆発……!面白くて格好良くて雰囲気◎ってそんなのアリかお前



かたまりに資質を見出してメイクしてみようと思いついた方のセンスも神がかり的なのですが、これは誇張抜きで「人間美」に相応しい……。

女性誌ということもあり一般のメンズメイクとは若干フォーマットが違いますが、門外漢の僕でも分かりました。これこそが旧来の男性像とは一線を画する令和のメンズスタイルであり、一つの到達点であると

ということで、雛鳥が殻を破って最初に見た物体を親だと思い込む「すりこみ」と同じように、僕の頭の中には目指すべき理想像として「水川かたまり」がいつからかすりこまれたのでした。

この、メンズメイク=かたまりに近づく、という短絡的な方程式は、文章にして既に破綻しています。僕が水川かたまりになることは、できません。
しかしその衝動は、この非論理性を打ち破って余りあるほどのものであり、僕自身にアクションを起こさせる動機としては、十二分なものでした。

それと折角メイクに手を出すなら、何かしらの目標を設定して、一旦のゴールをはっきりさせて取り組もう、と思ったわけです。そのゴールが彼だった、という話ですね。

「自分とは無縁」が「やってみたい」に変わってはや1年強、詳しい部分こそ割愛しますが紆余曲折、いくつか教わる機会を得て、昨年の終わり頃にやっとスタートを切ることとなります。

承:メンズメイク実践―気付き

申し訳程度の身嗜み要素として持っていたBBクリームだけでは水川かたまりに対抗(?)できません。教わる機会を取り付けたことで、手始めに+αで揃えたのは
・コンシーラー
・アイシャドウ
・リップ
これです。コンシーラをクリーム(ファンデーション)と置き換えれば、顔全体、目元、口元……と、化粧と言われて思い浮かぶ三種の神器と言ったところでしょうか。化粧品売り場に入るのは若干気が引けましたが、アイテムを買い揃えた時のワクワク感(?)は案外悪くないんですね。

さて初めに驚くのは、その費用(初期投資&ランニングコスト)の高さです。

手のひらに収まる小さなケースに入った化粧品が、安いもので800円、物次第では2000円くらいします。これが初期費用で考えれば安いのですが、ここに自分の好みだとか、はたまた自分に合う色だとか、アイテムの機能性とかが入ると、まあ見つからない。

そもそも何が正解かが分からない。知らない料理をレシピ無しで作るのと同じように、使ったことがないからどれが自分に合うのか分からないし、並べられた色見本を見てもピンとこない。

最後の方には全部同じ色に見えてきたりする始末で、一つ一つ上達していこう、試していこうとすると必然的にやはり費用がかかるわけです。
振り返ってみると余計な買い物が多かったなと思うのだけれども、そもそも買う前にそんなことを知る術がないのでまずもってお金を使わなければどうしようもできない
早々にしてメイクの奥深さと覚悟の浅さを学ぶこととなります。

揃えたらいよいよ実践。ねるねるねるねの1の粉、2の粉的な感じで、あれを塗るこれを塗る。シャドウのチップ?アイホール?目のキワ?グラデーション?ティッシュでオフするって何?

といった具合に右も左も分からないのですが、教わる通りに進めてみると確かに少しずつ、自分の顔が「できあがっていく」……。
隠すべき部分は隠して、強調したい部分は濃く。気が付くと色白になっているし何だか目がパッチリしている。

そして意外なことに、これが結構時間がかかって面倒なのに、何かが面白い。今までお洒落と言えばファッションや髪型、匂い位だったわけですが、新たなベクトルへの伸びしろを感じた瞬間でした。

一通り教わり終えると、それと同時に、ある可能性が自分の中に芽生えます。再びの「かたまり」です。

メイクをするだけではかたまりになれないことに気付いてしまったのです。メイクをした上で、その僕自身をカメラに収めてもらわなければゴールにならない、という結論に至りました。

毎日やらないと覚えない、というアドバイスを胸に翌日、今度はメイク道具に留まらず、街中の撮影スタジオを片っ端から回ります。

かたまりへと近づいて行くためのアクションのエンジンの掛かり方はあまりにも急過ぎるように思えますが、楽しいと思える物事に打ち込むこの感覚は久しぶりであったように思います。

転:撮影日決定―特訓

かくして場面は、物語で言えばメンズメイク編から撮影編へと移り変わりました。しかし、先に紹介した水川かたまりのショットの難しいところは、形態が「モデル撮影」だという点にあります。

僕の住む田舎町ではそういった撮影形態のスタジオなどほとんどありません。大抵の写真館は七五三、成人式、結婚式……と言ったような、どちらかというと文字通りの「記念写真」向けのスタジオであり、ひとくくりに撮影と言ってもそのベクトルは大きく異なります。実際「努力はするがその写真の雰囲気通りになるかは難しい」と九割がた首を横に振られました。

創業70年の老舗……多分ダメ。車で1時間……ダメ。小さな町で候補となったスタジオはとうとう最後の一件。電話をかけアポを取ります。

結果はOK。しかもそういった写真をメインにしたスタジオであるというのです。写真の説明を進めていくと驚くことに、昔ananで仕事をしていたので任せてほしい、懐かしい、というアンサー。あまりに出来過ぎた展開とキャラクターの出現はさながら少年ジャンプを読んでいるかのようです。

話し合いの結果、撮影予定日は約一ヵ月半後。料金形態と、撮影する写真の詳細についてヒアリングを行うと、いよいよ次は「自分自身の力だけでメイクをする」という関門が立ちはだかります。

誰と会わずとも、どこへ行かずとも、洗顔前にメイク練習を重ねます。メイク動画や化粧品のレビューを見ながら特訓していくと、今度は段々と自分の好みの色や道具の性能差などが分かってきます

反省点が見える度に、道具を変えたり買い足したり。
格好良く言えば、はじめは分からなかったメイクに、自分の意志が宿るようになっていった気がします。

繰り返すうち、目を変えたら眉は?眉も変えたのなら眼の色(カラコン)は?顔が変わったら、それに合う髪型は?それに合う服装は?どんな格好で、どんな表情で写真に映りたいのか?……というように、
組み合わせの解像度が広がるにつれ奥深さは指数関数的に増加していきます。ヘルス&ビューティーの醍醐味を垣間見た気がしました。

さて試行錯誤の末、撮影日はすぐやって来ました。新年を迎え、受験勉強に向かうが如くの緊張感で、しかし足取りは軽くスタジオへ。

いつの間にか「かたまり」そっちのけで自分との信念を懸けた戦いみたいになってきている気がしますが、一旦置いておくこととします。

結:撮影本番―自分でない自分がいるような

撮影はすぐに始まりました。見せた写真通りの角度で立ち、その通りの顔をするだけ、と言うは易しですが、どの写真を見ても、自分がこんな顔をしているはず、という顔になっていない。

撮られ慣れておらず気持ちと表情が硬いせいなのですが、「頭で思い描いている自分の表情」と「実際に表出している自分の表情」が違うのです。

何よりも、(今思えば当たり前ですが)水川かたまりのような映りになっている予定だったのに、全く彼に近づいていない、というのがショッキングでした。撮って頂いた方の腕が悪いとかではなくて、被写体の僕が被写体足り得ていなかったのです。

「実物は優しくて可愛らしい表情なのに、写真に映るとその印象がズレる(?)」みたいなコメントがカメラマンぽくて記憶に残りました。

結論としては、ここまでの盛り上がりとは裏腹に、撮影自体は「まあこんなもんか」的な感想に留まりました。体験とエピソードトーク代という感じでしょうか。

おわりに 自己を客観で見つめることの大切さ

番組「ロンドンハーツ」の「奇跡の一枚企画」のような出来上がりを期待していたものの、人様に自信満々に披露できるものでもなく。しかしこの体験は、僕にメンズメイクの面白さと新たな身嗜みの深さを与えてくれたという点で大きな意味があったと言えます。

特に意識させられたのは、身嗜みと写真映りという二つの意味で「自分が周りからどう見えているか」を捉え直すことができた点です。

服装・髪型・言葉遣い・表情・立ち居振る舞いetc……これらは人間いち個人の深層心理をよく表しているわけですが、化粧も全く同じで、美意識だけでなくその人らしさ(身嗜み、拘り、性格、思想、品性……)が良く表れる部分だと思います。

そして、他人の顔を見ない人なんていませんから、印象付けのためにも人様にお見せできるような顔面(どういう語彙だ)にしておくに越したことは無いのではないでしょうか。あと普通に気分上がります。

この令和の時代において、いえ、よくよく考えてもみれば、女性がしている身嗜みを男性はしなくてもよい、という最もな理由などないのでしょう。

良い印象を与えたかったり、お洒落の楽しみ方の方向性に行き詰ったり、更に磨きをかけてみたかったり……。そんな方は、是非メンズメイクを試してみてはいかがでしょうか?目指すのは勿論、水川かたまりですよね?

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