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耳鳴り潰し125

 息子のアレルギーの薬が切れてからしばらく様子を見ていた。咳や鼻水はないものの、目のかゆみを訴え出したので、小児科へ。「季節的に咳は大丈夫だろうけれど、花粉が飛ぶ時期になってきたのかな。今までと違って、かゆみが出たら飲む、くらいでいいと思うよ」とのこと。帰りにスーパーでお米をゲット。帰宅後私はダウン状態に近くなり、痛み止めを飲む。

 Huluでドラえもんが観られるようになっていた。娘が久しぶりに観たいというのでいくつか視聴する。のび太が無人島で十年間過ごす話の終盤で、涙を流す息子にタオルを渡す。かつてこの話を題材にしてドラえもんの二次創作を書いたことがある。「音楽小説集(現在凍結中)」の中の「『Like a Stone』Audioslave」という話だ。一部を抜粋してみる。

 のび太は石ころ帽子を被り、すれ違う人々に認識されないまま街を歩く。帽子の下に装着したイヤホンからは、Audioslave「Like a Stone」がリピート再生されている。誰かと肩がぶつかる。誰かに足を踏まれる。誰にも認識されない中で、のび太は痛みと向き合う。家業を手伝うジャイアンが自転車を走らせている。のび太にはぶつからない。普段のび太には見せた事のない真面目な顔でジャイアンは仕事に励んでいる。トム・モレロのギターソロが終わると自然と、MVで見たクリス・コーネルと同じ微笑がのび太の顔に浮かんだ。

泥辺五郎「音楽小説集」内「「『Like a Stone』Audioslave」より

 クリス・コーネルは再結成後のSoundgardenによるアメリカツアー中に自ら死を選んだ。少年期からの薬物中毒も影響していたのだろう。のび太は薬物に手を出しているわけではないが、未来から来た猫型ロボットである、ドラえもんの出す秘密道具に耽溺していると言えるかもしれない。薬物よりずっとたちの悪い、「未来」という言葉と概念。のび太の子孫をより良い方向に向ける為に送られてきた猫型ロボットは、「変えるべき未来」として、のび太がそのまま歩めば生きる未来像を見せた。いじめっこの妹との結婚、貧乏生活、立ち上げた会社の倒産、遠い子孫にまで残る借金……。
 まだ経験していない将来を、のび太は一方的に否定された。それは確かに悲惨な未来像ではあったが、そこに生まれた子供達はどうなるのか。結局未来は収束して、生まれるはずだった命は何処かで生を受けるとしても、だ。のび太が貧乏生活の中でも味わえたはずであろう、小さな幸せの記憶はどうなるのか。
 だが小学生であるのび太に、「未来」という圧力に抗う術は、ほとんど無い。結局は秘密道具の力に頼って、孤島生活を思い出すくらいしかできない。やがて石ころ帽子を脱いで半ズボンのポケットに押し込み、家路に着く。あちこちぶつけて青アザが出来ている。スネ夫に借りた漫画を返しに行くのを忘れていた。のび太が用事も済ませず石ころに成り果てていた間も、地球は回り、人々は前に進み続けている。スネ夫はきっと新しい漫画を買っている。ジャイアンは次の届け先へと向かっている。

泥辺五郎「音楽小説集」内「「『Like a Stone』Audioslave」より

 その後自分の部屋に帰ったのび太を、BABYMETALを聴きながらヘドバンしているドラえもんが迎え入れる。ノリ過ぎて派手に転倒して大きな音を立てるドラえもんだが、階下の玉子はジューダス・プリーストを爆音で聴きながら料理をしているので気付かない、といった流れで話は進む。懐かしい。四年前に書いたものとなる。

 普段テレビを、タブレットかスマホに繋げて画面を拡大するモニタ扱いしかしていなかったせいで気付くのが遅れたが、テレビの映像を受信できなくなっていた。DVDプレイヤーも電源が入らなくなっている。何かの線が外れているだけかもいれないが、双方とも13年目くらいで、寿命だったとしてもおかしくない。

 何かで遊んでいても息子が「暇!」を連発する。あれかな、金曜日のおでかけが楽しかったせいで、これまでと変わらない日常がマイナスイメージになってしまったのか、とも思うが、病院から帰った後の私があまりノリよく遊べなかったせいでもあるらしい。公園に行こうかと誘うと、最初は渋っていたが、やがて自分から「行く」と言い出した。

 家のすぐ近くにある公園は、広大な木陰に覆われているため、この暑さの中でもぎりぎり大丈夫なくらい。それでもやはり暑さゆえに人影は少なかったしカナちゃんにも会えなかった。がらがらゆえにボール遊びもできたが、若干消化不良気味。巨大滑り台の方へと行くと、少ししてから八人ほどの集団が現れ、引率の大人が司会進行を務めての「二人一組で滑り、どちらが早いかトーナメント」が始まった。息子は何も言わなかったが、参加したかったのかもしれない。誰かと触れ合いたかったのかもしれない。

 しばらく遊んでから帰りかけたが、来る時は野球チームが使用していたグラウンドの方が空いていたので、そこでボール遊びをする。数人でラグビーの練習をしている人たちがいて、そこで使われている掛け声について息子に聞かれる。後で調べたら、ひょっとしてあれはアメフトの練習だったのかもしれない。どのみち首に衝撃が加わりそうなプレイもあるので、私には絶対にできないスポーツとなってしまっている。

「憧れの文芸部部長に手錠をかけられる話」を今週のシロクマ文芸部に投稿。題名が特に思いつかなかった。おっさん同士の絡みしか書かない文芸部部長と、彼女に憧れる男子生徒が花火大会デートに行く話。爽やかな青春ストーリー。書きあがった小説をそのまま貼って「この話のイメージ画像を描いて」とChatGPTに依頼したら、最初は部長の方が手錠をかけられている危険な絵ばかり出てきたので、かなり修正していった。

 iroha「漠然としたモヤモヤを抱える20代女性へ送る繊細さんの日常が華やぐ13のご機嫌習慣」読了。ちなみに私は20代女性ではない。「みんなのフォトギャラリー」で使用された記事を読みに行き、そのnoterさんがkindle出版しているのを知って読んだもの。先日繊細な娘の話題を出した影響もある。個人的なkindle出版をどんどんしていきたいな、という気持ちを新たにする。


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