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【家賃からの解放】 覆面ホテル

ホテルというのは生き物である

人々の生活というものの一端を担うにも関わらず、常に人が入れ替わり立ち替わり、物凄い速度で新陳代謝を繰り返していく

一方、特異な新陳代謝がゆえ、酸素であり血液である宿泊者がいなくなると、これまた物凄い勢いで衰えていく

そういったサービスであり産業であるからこそ、ユーザーは叶うなら「一番新しい情報」が欲しいと願っている

それはどんなに格式ある 老舗ホテルであってもだ

例えば大阪のリッツカールトン
何十年も続き、コロナになろうが、安定した宿泊料金を維持しつつ、満室の日もある頑強ぶり

その しつらえやサービスは、10年ぶりに行こうと「あまり」変化はないように思える

が、それでも、やたらと重く邪魔だと感じていた「ライオンのキーホルダー付き」のルームキーや

これまたやたらと 重く分厚いバスローブが、それぞれ電子カードキーや、薄いありきたりのものに 変わっていたのは それなりにグッとくるものがあった

重く邪魔なルームキーは、きっと重く邪魔だったのだろうし

分厚いバスローブは、それを洗濯するだけで相当な経費、金食い虫だったのだろうし

その程度の変化ならいいが、経営が変わっていたり、そもそもホテルそのものが無くなってしまっていたり、新陳代謝が激しい 生き馬の目をなんちゃらな業界なのは間違いなく

思えば子供の頃から、親が転勤族で、移動するのは慣れっ子、母は旅をするのが好きで、海外転勤の折には長期のコロニーと呼ばれる「子供だけが参加するキャンプ」などに放り込まれて

よく言えば「旅好き」
悪く言えば「じっとしていられない」

2003年頃から2008年頃にかけての主な職業はゲームクリエイターだったのだが、ゲームクリエイターという仕事も様々なパートがあって成り立っており、

デスクに座っておとなしくプログラミングをするパートもあれば、僕のように企画立案やプロットやシナリオと呼ばれる、ほぼミスコピーの裏紙とペンがあれば、どこでもできる

言うなれば「アイデア勝負」なパートもある

おかげさまでヒットゲームに恵まれていたときで、生意気にも基本はホテル暮らし

オフィスのあった横浜のランドマークタワーの上がインターコンチネンタルの最上位とされる「グランドインターコンチネンタルホテル」だったのだが

オフィス利用者は、そこに割りと割安に宿泊することができる

バカは高いところが好き、そんな20代

一般論ではなく、この時の僕に正にぴったりな標語

ランドマークタワーにオフィスを構えて、その上のホテルに暮らしてる

そんなことを売りに女性を口説く…オフィス利用者で割安に泊まってるかどうか、なんてことは言わなければわからないし

言うことによって「経済観念がある人なのね」

別にデスクに座っていなくても「アイデア勝負」の どこでも出来る仕事だったから、ゲームショーなんてわかりやすい海外の催しがあれば、率先して参加する

そうでなくても、ゲームの企画のリサーチだとかなんとかコジつけアジつけ、ことあるごとに飛びまわっていた

バカは高いところが好き
その街その町で一番のホテルを泊まり歩く

バカは長く続かない

2008年の初め頃には、人も物も金のすべてを断捨離…もとい、そんないい風に言うなよ…ただただ失ってしまって

さらには、いま思えば最良であった伴侶とも離婚

次のアテもないままに途方に暮れていた僕は、あろうことか、金銭感覚まで失ったまま、とりあえず傷を癒すなどと のたまわって

あいもかわらず 高級ホテル暮らしをキメこんだ

そんな生活がこれまた長続きするわけもなく、ホテルのランクは日々下がっていき、最後はツカサのウィークリーマンションまで

それでもいま思えば「十ニ分に贅沢だろうよ」と思うのだが、そのときはそれで「落ちぶれた」だとか悲観するほどに、何かのタガが外れていた次第

そんな中でも、クリエイター時代の余波というか、そのときに企画したゲーム以外の諸々が残っていて、その中でなんとなく続いてしまっているものがいくつかあった

ゲーム関連の主要なものは、上場を目指したパートナーだった社長とともに、組織ごと壮絶に爆死して…この話はまた別の機会に

そのひとつが、いまでも残って…もはや「遺っている」と書くべきであろう「カキペディア」

ブログシステムをベースとしたオンライン牡蠣百科だ

2005年からカキ続けているものだから 相当な分量になっており「世界最大のオンライン牡蠣百科事典」という称号をもらったりもした

そもそもは「牡蠣のゲーム」をつくれないか?という話から リサーチを始めたところ、世の中の牡蠣の情報があまりに少なくて、調べた内容を「他にも知りたい人がいるだろう」と

そのとき流行り始めていた「ブログ」にカキ起こしたのが始まりだった

最終的に牡蠣のゲームは「かきクイズゲーム」として落ち着き、それもいまでもカタチを変えて遺っている

クリアすると「かきオイシスト」という資格、認定証とバッジを申請できる

その申請手数料も、いまでは「海にアマモを植える」活動の募金として割り当てられているので、よかったらチャレンジしてみてほしい☟

こんな風に何かと「ブログる」つまりは「ブログをメモ代わりに使う」習性があったものだから

「ホテル暮らし」も、泊まったホテルについてカキ起こしていたのである

その頃はまだ、どこにいるのか知られたくない、だとか「みんなお前のことなんて なんにも気にしてねーよ」なのが現実なのだけれども、そんなことを気にしているお年頃だった

がゆえに「匿名」で書いていたら、そこに仕事が舞い込んできたのである

新しく出来るホテルに宿泊して、こちらのブログに掲載してもらえないか?

「覆面調査員」と「ホテルライター」を合体したような仕事だ

厳密にいえば「覆面調査員」などというものは「ミシュラン」に代表されるように、客観的でないとユーザは価値を感じない

ホテルからお金をもらっていたのでは、宣伝であり「本当の姿を視ることはできない」と踏んでいるからだ

でも、そのブログは「匿名」で書いていて「僕が何者なのか誰も知らない、わからない」

それはホテルの人も、読者も、その依頼主も

つまりは、その依頼者が「宿泊費」などの経費だけ支払ってくれれば、あとは僕の自由演技なのである

ツカサのウィークリーマンションの一室で、僕は狂喜乱舞した…思わず屋上まで非常階段を駆け上がり、小伝馬町の街を一望しながら、変な声を出していたと思う

某牛丼チェーンの牛丼をテイクアウトで食べていたら、変な味がしたので、警察を呼んだら…毒入りだったということがあった、その翌日だったので、悦びも一潮だった気がする

変な記憶の仕方で申し訳ないが、どうしてもサプライズに紐づいてしまう

高級ホテルから、ビジネスホテル、場所も北海道から九州まで、海外もあり、幅広かったのが 功を奏したのかもしれない

ゲームクリエイター時代からの回想も含めていたので、海外や、飛びまわっていた地方のホテルの記事もあった

「一休」や「楽天トラベル」など、比較して、しかも割安に宿泊予約ができるサービスの登場で、さらにホテル需要が伸びていく中で、仕事も増えていった

時には、ほとんどの日々を「仕事」で泊まることができるまでに

特に、三越前の「マンダリンオリエンタルホテル」からの仕事は秀逸

そんなハイクラスなホテルがゆえだろうか「1ヶ月の長期滞在」の覆面調査

ツカサのウィークリーマンションのあった小伝馬町界隈で、こんなにもギャップある生活があるもんだ、と悶えた

実父の会社がプロデュースしていた映画「ハゲタカ」の舞台であったりとか、何かと思い出深い仕事でもあった

あの「天空ガラス張りトイレ」からの景色を、いまでも思い出す

そうこうしているうちに2011年3月11日の、あの震災の日が訪れる

宮城や岩手など「三陸」と呼ばれる その地が「牡蠣の名産地」であったこと

テレビで、燃えている海や町の映像をみて、僕の中で何かのスイッチが入った

このまま東北がすべて負債になるのなら「ニッポン株式会社」は倒産してしまうかもしれない

結果、日本はそこまで弱くなかったし、それまで一切「経営者マインド」がなかったのに「なんでそこだけ?」という疑問は いまでも残っているが

とにかく何かのスイッチが入り「本気」になった

現地にもすぐ飛び込んで行ったし、現地の人を軸に「復興牡蠣オーナー制度」という、いまでいうところのクラウドファンディングを速攻で立ち上げ

3億円以上が集まり、当時話題となった

その流れもあってか、フランス政府から「フランスお返しプロジェクト」の立ち上げから管理まで、エグゼクティブプロデューサーなるものに拝任いただいたりもした

フランスの現地のカキは1970年前後に絶滅してしまい、そのときに運ばれた「日本の牡蠣」を養殖、いまに至っている

その感謝の気持ちから、ジャック・アタリさんという、いまの若きフランスの大統領マクロン氏の親分さん、が発起人となり…

そのあたりの歴史は、それこそ例のカキペディアにまとめてあるので気になる方は是非みてやって欲しい。フランス語版まである☟

すべてはこの「カキペディア」をカキ続けていたことからの派生だともいえる。なんでも続けてみるもんである

という流れで、2011年から「牡蠣」にのめり込んでいくこととなる

が、この「覆面ホテルライター」という【家賃からの解放】だが、いまでもニーズはあるとおもう

というのも、YouTubeという映像を交えたSNSもあるし、何より「新陳代謝が激しい」かつ「ユーザは最新情報がほしい」産業であり業界なのは、いまでも変わっていないからだ

たとえばコロナ禍であれば「超高級貸切温泉宿」が利用客を伸ばしているという

そもそもが、一部屋、もしくは二部屋しかない宿にも関わらず、そのサービスから しつらえ、アメニティに至るまでを「こだわり抜く」

お酒も「こんな銘柄が!?」というものも含めて、豊富に取り揃え、冷蔵庫の中のものは飲み放題であるとか

当然、食事にもこだわっている

一部屋ないし、二部屋しかないことも活かされ、露天風呂も貸し切り状態となる

他の人が入っているかどうかを部屋から確認できたり、そもそも専用の露天風呂が、しかも広い露天風呂がついている場合もある

それは、もともとが部屋数のある温泉宿だったものを改造して、部屋数を減らしたシステムに切り替えたからで、複数の露天風呂が備わっていたことを活かしたりするなどしているからである

いずれにしても、部屋数を抑えて、そのこだわりとサービスで、利用客を満足させ、一泊 5万円から10万円の料金をいただくビジネスモデルだ

コロナ禍も相まって、ここ最近の傾向であった「その施設から一歩もでないで楽しむ」という楽しみ方に特化している

それこそ もう20年以上前からだろうか、団体客でバスで大挙して押しかけ、宴会をして、町で呑んで、おみやげを買って帰る、というスタイルは バブルの終焉とともにフェイドアウトしていったように思う

きっと、そのスポンサーである企業が、そんな余暇にお金を割けなくなったことや、それに託けて「付き合い」自体を嫌悪する世代というか

嫌悪することを許される時代へと突入していった

地方をまわっていると、どんなに ホテルや旅館が 満室な観光地でも、町中はシャッターアイランド、寂れているというのが 普通の景色となっている

そんな宿場町のシャッターアイランドには「リゾートワーク」や「多拠点移住スタイル」の拠点としての可能性を感じている今日この頃

ひとつ懸念があるとすれば、いくら新陳代謝が激しい業界とはいっても、これだけユーチューバー含め、みんなが情報発信している現在

コロナ禍で ホテル業界も 旅行業界も冷え込んでいるかもしれない とすると…つまりはスポンサー、原資となる予算がない可能性も

ユーザは、質よりも「最新情報」を願っているという特性を考えると「ハイクラスなホテルに1ヶ月覆面滞在」のような天国みたいな仕事はないかもしれないが

YouTubeの場合であるば、お金の出元は「再生数」であり、ホテル業界ではないわけで

例えば「アパホテルの1ヶ月サブスクを実際に利用してみた」なんかの動画は、その経費を上まわる成果を得られ【家賃からの解放】を実現できるのではないだろうか

そのあたりは、ちゃんと自分で検証してから語らないと、なんの根拠もないので これくらいにしておく

いまは「空き家」を活用したくて、実際に活用されているところを泊まり歩く…移住して廻ってているが、

高級ホテルや旅館による【家賃からの解放】は、いつかまたチャレンジしたい 解放方法であることは間違いない…叶うならそういう老後を…

老後にそれが許されるのは「文豪」だけかもしれない、とか思ってしまっているので、まずは「文豪」になります

この「家賃からの解放」は連載してましてマガジンもつくりました。いまのところこの他にすでに8本の記事を公貝…もとい公開しております☟

あとnoteでこの連載をはじめたことを機に、過去に一回だけ出した本を引っ張りだしてKindleしました。Kindle Unlimitedで無料で読めますんで

【家賃からの解放】お金編、って感じの内容…そもそもこのゲームクリエイター時代の集大成…

ちょうどそのツカサのウィークリーマンションにいたときに「記憶力ギネス記録保持者」のエラン・カッツさんの著書を手掛けた編集者さんに出会いましてね☟

海が元気な方が美味しいものが食べれる!読むだけで海に森をつくれます(Kindle Unlimitedメンバーの方は特に)よかったらご協力…ご購読よろしくお願いします☟


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