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読書熊録

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素敵な本に出会って得た学び、喜びを文章にまとめています
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2020年3月の記事一覧

「彼女の知らない空」は組織人の背中を押す(本の感想5)

「彼女の知らない空」は組織人の背中を押す(本の感想5)

早瀬耕さんの最新短編集「彼女の知らない空」が良かったです。面白いだけでなく、心にぽっと灯火をくれる。それは組織の中で生きる人、生きざるを得ない人に向けられた光である。本作で描かれるのは「大きな力の前で、個人としての誠実さは保てるか」ということだからです。

撃つことをやめられるか?表題作「彼女の知らない空」は憲法9条が改正された世界が舞台。主人公は空自佐官で、妻と共に千歳基地の官舎で暮らしている。

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ポケモン図鑑を参考にして本棚を整理した

ポケモン図鑑を参考にして本棚を整理した

買いすぎて増え過ぎた本を処分するのは難しい。でもスペースには制約があるわけで、いつかは減らさざるを得ない。そんな時、ポケモン図鑑(初代)の構成を参考にしたら、だいぶスッキリできたという話です。

タイプのバランスを取る草タイプだけ、炎タイプだけ、水タイプだけではポケモンは成り立たない。タイプごとのポケモンの数はバランスが取れている方が良い。SF小説(フィクション)が好きだったら、同じくらいのボリュ

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いくら引越ししても、本棚にあり続ける9冊

いくら引越ししても、本棚にあり続ける9冊

引越しのたび、買いすぎて増え過ぎた本を処分せざるをえません。でも、毎回新居で本棚を再構築すると、いつもそこにあり続ける本がある。背表紙を眺めると、パラパラと中を開くと、大切なメッセージが思い起こされる。そんな、自分にとって掛け替えのない9冊を記録してみます。

イノベーション・オブ・ライフ「イノベーションのジレンマ」で有名な故クレイトン・M・クリステンセンさんが「良い人生の送り方」を主題にした本。

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「勉強の哲学」を大学入学前の自分に読ませたい(本の感想4)

「勉強の哲学」を大学入学前の自分に読ませたい(本の感想4)

千葉雅也さんの「勉強の哲学」は素晴らしくて、過去に戻れるなら、大学入学前の自分に読ませたい。一番シビれたのは「勉強は中断するものである」ということ。中断し、再開し続けることこそ、勉強である。

中断と決断は違う中断の反対は「決断」で、千葉さんは決断を危険とすらみなします。なぜなら、決断は「絶対的」な根拠を求めてしまうから。でも、勉強の広がりは「無限」であり、たどり着けない絶対的根拠の代わりに「無根

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「死ぬ瞬間」が教えてくれたこと(本の感想3)

医師が末期患者にインタビューを重ね、人が死を受け入れるまでの過程を描いた名著「死ぬ瞬間」(エリザベス・キューブラー・ロスさん著)を読みました。「死を受容するまでの5段階」はあまりにも有名です。しかしそれ以上に大切な学びは「死よりも大事な問題を解消することで、初めて死に向き合えることがある」というものでした。

死を受容するまでの5段階それは次のようになります。

・第1段階:否認と孤立
・第2段階

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人生が辛くなったら「であすす」を読んでほしい

「もう生きたくない」と思ったら、花田菜々子さん著「出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと」を読んでみてほしい。突然不幸に見舞われた人。別れの春、願いの届かなかった春を迎えそうな人。本書を開けば、少し光が見えると思います。

大変なことは同時にやってくる花田さんは苦境に遭う。まず、夫ともう一緒に住みたくない状態になっていること(=家族)。さらに、長年勤め

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「それをお金で買いますか」は戒め

「それをお金で買いますか」は戒め

マイケル・サンデルさん著「それをお金で買いますか」には大事な戒めが書かれていました。それは「お金は腐らないが、お金が腐らせるものがある。それは道徳だ」ということ。「市場原理の腐食作用」を色んな例で学べます。

罰金を科すと遅刻が増えたイスラエルの保育園のケースが分かりやすい(173pあたり)。保育園では遅刻した親から罰金を取ることにした。すると、遅刻が減るどころか、かえって増えてしまった。なぜか。

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