『SDGsがひらくビジネス新時代』×『コンヴィヴィアル・テクノロジー』×『ユートピア』
こんにちは。
2つめの記事について深掘りしたいと思います。
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A. 竹下隆一朗『SDGsがひらくビジネス新時代』ちくま新書 2021年
B. 緒方壽人『コンヴィヴィアル・テクノロジー』ビー・エヌ・エヌ 2021年
C. トマス・モア『ユートピア』中公文庫 2016改版
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それぞれのベクトルをまとめます。
A. SNS・企業・個人のつながりについて、世界の状況と日本を比較する本
B. イヴァン・イリイチ『コンヴィヴィアリティのための道具』筑摩書房1978年の内容について、現代のテクノロジーと共に考える本
C. 理想的な社会体制について問う本
これらの本をA、B、Cと略して記述いたします。
以下、私の私見を述べさせてもらいます。
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Aにおいて、SNSの普及によって個人の発信する力が大きくなり、今まで包み隠されていた企業と個人とのやり取りが、公にオープンされるようになり、企業は個人の声に傾けざるを得なくなったと述べられております。グレタトゥーンベリさんのような方がその代表格と言えるでしょう。
一方、日本においては、ジェンダー問題でよく現れるような、センシティブな広告によってTwitterで炎上するという事例が起きています。著者は、上層部の理解が足りていないという見方を示していますが、私もそう思います。
SDGsに沿った経済活動を行っていかないと、長期的には日本が世界に遅れを取ると書かれています。しかし、本書ではその具体例まで詳しく書かれていなかったため、問題意識を促すまでに留まってしまうと私は考えました。
Bにおいては、テクノロジーは今後どのように発展させていくべきか、という難解で哲学的な問題を扱っております。「コンヴィヴィアリティ」という言葉は「自立共生」と訳されています。端的に言えば、人間は道具に依存しないで、共に歩むという意味でしょう。
ところが、現代ではスマホのように「無ければ困る」といった状況が起きています。それは道具ではなく、もはや依存しているわけです。利便性が社会のシステムに浸食していき、社会システム全体が「道具」になることを、イリイチ氏は危惧しております。
しかしながら、「テクノロジー」が必ずしも悪者ではない、ことも事実であると私は考えます。欲望を満たすためにデザインされた商品は人間を堕落させます。裏を返せば、買わせることが目的ではないモノを増やし、人間を改良に導くためのデザイン設計が重要になってくると思うのです。それを担うのが「デザイン思考」「UXデザイン」などの新しい考え方です。問題は、新しいモノのコストであったり、多様性を持つ人々がどのようなレスポンスを示してくるのか、新たなステージに上がったときにどのように別の道を切り開くのかであると思いました。
Cでは理想的な社会について、1500年頃、トマス・モアという方が考えて本にしたものです。この本の優れている点は、理想的な睡眠時間を「8時間」と示したところです。それは現代の精神医学上からもベストと言える解です。さらに、理想的な労働時間を「6時間」としています。500年経った今でも難なく受け入れられる考え方であり、普遍性を感じさせられる本です。しかしながら、「机上の空論」であることも否めないと感じさせられます。
私は、理想的な社会体制を考える際に、人間の「性悪説」「性善説」を考えずにはいられません。それは「囚人のジレンマ」が示す通り、世の中は合理的にはどうしても進まないという現実が見えるからです。本書では、現実は性悪説、ユートピアにおいては人々は性善説に従って働いていると僕は解釈しました。
また、Cにおいては、「女性は奉仕せよ」といった、時代錯誤の意見も垣間見えます。
『ユートピア』はあくまでも個人の思考を促すものだと、あとがきに書いてある通り、現実は理論と実践の反復であると考えさせられます。
以上、3冊の特徴について述べてきました。SDGsには17の目標があります。個人的には、全てを達成するのは不可能に近いと思われます。しかしながら、それはより良き社会への努力を諦めさせる理由にはなり得ません。
個人単位でできることは限られている。それは昔の話であり、Aが示すように、もはや個人の力は「マクロ」ともなり得ます。
本記事では詳しく述べませんでしたが、Bでは「自由の相互承認」もテーマとして扱われてあります。重要なのは人と人との議論であり、対話であり、コミュニケーションであると考えます。
マイノリティやジェンダー問題で苦しむ人をどれだけ理解できるか、当事者目線にどれだけ立てるのか。ハッキリ言って、課題は山積みどころか、膨張しているようにも思えます。
それでも諦めない。前に進みたい。それが私の感想です。
長々と失礼いたしました。
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