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「採用ミスだったのかも…」コンサル会社で苦しむ私を救った「国語の授業」

こんにちは、ディスカヴァーです。
今回はいま最もホットな「思考術」のご紹介です!

つい先日、3月25日に発売開始された新刊、
『思考の質を高める 構造を読み解く力』なのですが…
実は発売前からわじわと関心を集め、
オンラインでは予約が殺到しているんです!!!

東大出身、新卒でコンサルに入社し、MBAも取得した華々しい経歴の持ち主の著者ですが、入社したての頃は大いに苦悩があったそう(!)
そんな著者がこれまでを生き抜いてくることができた秘訣は「小学校の国語の授業」で習ったとある思考法でーー。

今回は特別に本書の「はじめに」を一部改訂してお届けします。


「なんで私はここにいるんだろう。採用ミスだったんじゃないか」

新卒でコンサルティング会社に採用され、働き始めたころ、私はいつもこう思っていました。

当時、学卒新入社員の最初の仕事はメモ書きと分析。まったくの文系だった私はエクセルもパワーポイントもほぼ触ったことがなく、大量のデータを使った分析が悲惨なほどにできませんでした。新参者にとってはそこがチームへの重要な貢献ポイントだというのに……! つらくてたまりませんでした。

いつものように徹夜で仕事と格闘していたとき、ふと、インターン(当時はサマージョブと呼ばれていました)の最終日に採用担当者から言われたことを思い出しました。

「河村さんは、他社面接も忙しそうであんまり働いているように見えなかったけど、最後のプレゼンを組み立ててた。資料をまとめるだけじゃなくて、ストーリーを考えてた。それがよかった」

組み立てる、ストーリーを考える、というのは具体的に何をしていたのでしょう。

限られた期間で集めた情報や分析の結果(分析自体は、理系だったパートナーの学生がやってくれました)を机に並べて、この話を先にしたほうが話が通りやすいとか、これとこれを根拠にしてこの結論と言えるか、とか、そのようなことをああでもない、こうでもないと、自分のチーム担当のコンサルタントに相談しながら頭を悩ませていました。

そんなことが評価されるのか、とそのとき思ったものです。そういえば、入社後も分析は全然ダメだけれど、インタビューのメモはほめられることがありました。

そこに気づいたところで分析ができるようになったわけではもちろんなく、定量分析の苦労はしばらく続きましたが、自分の付加価値の付けどころとして、メモや資料のストーリーを意識できるようになったことから、仕事にいろいろな意味でメリハリをつけられるようになり、気分的に楽になってきたのです。

小学国語の文章読解で学んだ「構造を読み解く力」

 今から振り返ると、採用担当者や上司は、私の
「構造を整理してインプットする力」
「構造を組み立ててアウトプットする力」
を評価していたのだとわかります。

 たしかに、インタビューメモやレポートも「構造」を意識して整理していました。

データから読み取れる、プロジェクトにとって最も大切なポイントは何か?
読む人は誰か? 何を知りたくて読むのか?
どんな構成やストーリーにすれば、読みやすいか?

そして、これらの構造的なインプット・アウトプットを私はそれと意識せず行っていました。

実は私がこれを学んだのは、小学校の国語の読解の授業なのです。

私が三年生のとき、小学校のクラスで行われたその授業は、文章を読んで、その構造から筆者の言いたいことを理解させ、さらにそれを解釈、再構成させるものでした。そして自分が文章を書くときには、その逆で、先に構造を考えてから文章化するのです。

自分をこんなにも助けてくれている、あの授業はなんだったのか? それが知りたくて、社会人になってから恩師を訪ね、それが「構造学習」というものであったことを知りました。

「構造学習」の詳しい説明は第1章に譲りますが、私はこの学習を通じて培った力に今も多大に助けられていると感じています。コンサルティングの仕事だけでなく、大学に入学できたのも、MBA(経営学修士)を取得できたのも、このスキルのおかげと言えると思うのです。

「国語の読解力が他科目の基本」というのは、受験でよく言われています。出題者の意図を理解することが、試験においては結果を出す早道となるからです。一定の長さの文章が題材として与えられる問題は、国語だけではなく、理科や社会でもありますから、なおさらです。

海外の経営大学院の受験ではGMAT(Graduate Management Admission Test)という試験が課され、言語分野では文章の論理的な整合性を問われます。使われる言語は英語ですが、論理構造を読み解く力が直接的に問われています。

面接や交渉事では、その場で相手の質問や、話していることの意図を汲み取ることが必要です。自分の主張やアピールも大切ですが、聞かれたことに答える──これができる人が、意外に少ないのです。

仕事のための資料作成やプレゼンテーションに、このスキルが大いに生きたことは前述の通りです。

結局、ビジネスは情報を理解し、分析し、解釈し、伝えて、他者とともに行動することの繰り返しで前に進んでいきます。目から入ってくる情報にせよ、耳から入ってくる情報にせよ、それを理解するには文字通り「読み解く力」が必要なのです。そして伝える段になれば、内容をできるだけ相手にとって「読み解きやすい」かたちで伝えなければ伝わりません。ともに行動することができなくなってしまいます。

私が受けた恩恵を、社会に、あとに続く人たちにもつないでいきたい。そのような気持ちで大学に戻り、この「構造学習」という学習理論を研究することにしました。

「構造学習」ベースの「構造の読み解き」へ

「構造学習」は、戦後まもなく打ち立てられた初等教育の理論です。詳しくはあとに譲りますが、国語の読解に始まり、ほかの科目や学級経営に展開されることもありました。中学校でも実践されたことがあったようですが、基本的には小学生を対象とした学習理論です。

ほかにも読解を対象に、段落や意味のまとまりに着目した初等教育理論は多々ある中で、構造学習が特徴的なのは、次の3点と言えるでしょう。

教師主体の教授法ではなく、学習者(である子ども)主体の学習法としてまとめられていること
②文章を「構造」という観点で分析すること
③最終的に思考トレーニングとして位置づけられたこと

実践者である教員の全国組織が組成され、1970年代には会員が1000名を超えました。しかし残念ながら1980年代以降は縮小し、現在では一部の小学校で実践されているのみです。

「小学校で学びたかった」と思われた方もいるかもしれません。でも、「構造学習」は小学生でなければ実践できないものではありません。学習者主体のトレーニング学習法である「構造学習」は、その学習者が子どもであれ大人であれ、学習の場がどこであれ、実践、習得は可能です。

現に、本書に推薦を寄せてくださった高校の先輩でありコンサルの先輩でもある、篠田真貴子さんからは、「それを小学校でやっていたの? 構造をとらえるとか、抽象と具体を行き来する能力って、多くの場合は中学生からって言われているから、ちょっと早いんじゃない?」と言われたこともありました。必ずしも小学生で学ぶのが最適、というわけではなく、誰でも、これまで述べてきた読解力を身につけ、活用していくことができるはずです。

一方で、「構造学習」で扱う文章は子どもでも読める平易なもので、教科書に掲載されているものがほとんどです。また、構造学習の内容や実践について書かれた書籍は小学校の授業という場を想定しており、これまでの実践者が小学校(一部中学校)の教員と生徒であるのも事実です。

そこで、「構造学習」で培われるものを想定し、子どもだけではなく大人も、どの学校・組織に所属していてもしていなくても、読解を通じて論理や心情の構造を読み解き、自身の思考を組み立てる「構造を読み解く力(構造読解力)」を提唱しようと思うに至りました。

「構造読解力」3つのメソッド

 構造読解力は次の3つの構成で成り立っています。

① 論説的文章を読んで、論理を読み解く
② 物語、情緒的文章を読んで、人の心情を読み解く
③ 思考を組み立てて、解釈する/アウトプットする

つまり、論説文の読解で論理的思考力を鍛え、物語文の読解で人物の心を読む思考力を鍛え、自分がアウトプットするときは、それらを総合して文章やプレゼンを組み立てることが、「構造を読み解く」ということなのです。

構造の読み解きは「クリティカル・シンキング」にも通じるものがあります。クリティカル・シンキングは、文字通り「批判的な思考」というよりも「ロジカル・シンキング(論理的思考)」を意味する思考方法です。ビジネスを行う上で有効な思考方法として長らく取り上げられ、私も経営大学院や企業研修の授業を担当していました。

クリティカル・シンキングの本質は、「もれなくダブりなく論理的に検討することで他者に納得してもらい、ともに動いてもらうこと」にあると私は考えていますが、このもれのなさやダブりのなさは構造で担保されるのであり、ある意味、構造化そのものなのです。

その一方、クリティカル・シンキングはロジックツリーやフレームワークを使うことも多く、なかなか続かない、挫折してしまったという方も多いのではないでしょうか。「構造の読み解き」は、小学校の授業を舞台とする「構造学習」をベースとしていますので、無理なく、その感覚をつかみ、訓練することができると思います。

ちなみに、欧米のビジネススクールでクリティカル・シンキングを授業として取り入れる学校はあまりありません。なぜなのでしょう?

私が「構造化」を「構造化」とは知らずに小学校で学んでいたように、海外の学校では大学入学以前にリーディングやライティングを含む〝ランゲージ・アーツ〟や、幼少期における〝ショー・アンド・テル(Show and Tell)〟において、文章やプレゼンテーションの構造を読み取り理解すること、自分で組み立てて書いたり述べたりすることを訓練しています。リーディングにおいて、〝テキスト・ストラクチャー(Text Structure)〟という言葉もたびたび登場します。

科目体系は国や地域によってかなり異なりますが、言語系統の教育科目において、いわゆる思考力を鍛えている例は多々あります。

言語は思考なのです。

「構造読解力」は日頃の読解を意識することで身につけることができます。そして、その結果、こんなメリットが実感できるはずです。

● メールや文書の要点抽出の仕方がわかり、素早く理解できる
● 会議参加者や会話相手の発言意図を考える癖がつく
● わかりやすいメモや報告書が書ける
ロジカルでストーリーのあるプレゼンが組み立てられる
● ミーティングや面接で聞かれたことに的確に答えられる

本書では、構造学習理論に基づく読解の授業をご紹介しながら、身近な新聞、雑誌記事や小説を題材とした構造読解力の訓練法へとつないでいきます。

読解力とは何なのか、ということを考察し、読解力をいくつかの要素に分け、年代や所属を問わずそれらを日々の中で鍛えていく手法を提示していきたいと思います。


いかがでしたか?

「複雑な文章や物事を理解するのに時間がかかる
「わかりやすく説明したり伝えたりするのが苦手
「自分の思考やアウトプットにキレがないと感じる」
「ビジネスのフレームワークを学んだけれど、うまく使いこなせない

もしあなたがこんなお悩みを抱えているとしたら、
『構造を読み解く力』はお役に立てるはずです。

ぜひチェックしてみてくださいね!


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