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小説: サキと咲かない花 1

毎年咲いていたはず椿の花が、今年は未だに咲かない。

なぜ急に 私はよく分からなかった。

この椿の木は次女のサキが生まれた時に記念に植えたもので、彼女と同じ早13年もの年月をこの世界で過ごしている。

なぜ咲かないのか 水が足りないのか。 土壌が悪いのか 日が当たらないのか 周りの木に栄養を取られてしまっているのか。 

時期を同じくして

サキは今年中学に上がった途端、急に学校に行きたくないと言い出した。

母として何をすべきか 何と声をかければいいのか 私にはよく分からなかった。

何もしたくないと 人に会いたくないと ソファーの上でずっと相棒のヌー(彼女が生まれる前からいる柴犬)と一緒にうずくまっている。

彼女にとって楽しいと感じる時間が少なくなってしまったのか。私たち家族の責任か。 彼女は中学校で居場所を見つけられなかったのだろうか。周りの子が輝いて見えて、自分自身劣等感を感じているのか。そんなこと決して必要ないのに

なぜなのか。 私にはまだよく分からない。13年間も一緒にいるのに 母親なのに

彼女は、とても優秀で優しい子だった。 小学校の担任の先生からはいつもほめられていた。 習い事のピアノも水泳も何もかも順調だった。

友達だって何人もいた。 姉のトワとも仲良くやっていた。

なのになぜ なぜ急に 何が彼女を変えてしまったのだろうか。

でも、思い返せば自分もそうだった。ふっとちょうどサキと同じくらいの歳のころに、全てがどうでもよくなって、友人も、趣味も、学校も全部投げ捨てたいと思った時があった。

ちょっと振り返ってみる必要があるかもしれない。何か見つかるかもしれないから。


1/10 小説: 「サキと咲かない花」


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