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ゲーム屋人生へのレクイエム 5話

前回までのあらすじ。知人の子供にゲームクリエーターになるにはどうすればいいのか尋ねられた元ゲームクリエーターが自分の過去を語る。自衛隊に入ると言っておきながら企業への就職、しかも大手ゲーム企業の入社試験を受けようとする身の程知らずのおはなし。

「その2社ってどこですか?」


「大人の事情で社名をここでは言えない。仮にA、Oと言っておこう。どっちの会社も業界では老舗でね。ゲーセンに行けば必ずこの2社のゲームがあった。家庭用でもどっちも有名で、名作、迷作を出してた」


「ゲーム会社を選ぶという事はやっぱりゲーム好きだったんですね」


「好きだったね。好きなら仕事にしてもいいんじゃないかって思ってゲーム会社を選んだのよ。 

それで募集してる職種がAは営業のみ。Oは技術、技能、一般、営業を募集してた。営業という職種が何をするのか具体的にはわからなかったけど何かを売るんだろうという事は想像できた。一般というのは事務職の事ね。けど技術と技能の違いがわからなくてね。今なら技術が開発系で技能は製造系ってわかるけどね。それで営業は自分は向いてないだろうって思ってたから、営業のみのAは入社したら営業確定なので、営業以外に配属される可能性のあるOを志望することにしたのよ」


「入社する気満々じゃないですか。自衛隊はどうなったんですか?」


「どうせ入社試験は落ちるだろうから、それで自衛隊に行きゃいいやって思ってたのよね。でも、ひょっとしたら受かるかもという気持ちもあった」


「はっきりしませんね」


「優柔不断なのよ。それでね、先生にここ受けますって言ってそれからあれこれ手続きして、しばらくしたら入社試験の案内が届いて、指定された場所へ行って試験を受けることになったのよ。

結構遠い試験会場でさ、日帰りできない距離だったから前乗りで入って、試験翌日戻り、二泊三日の旅だったよ。

そんで、ホテル泊ってさ、そこで試験受けて、まず筆記試験。英語、数学、国語と作文だった。マジで何も勉強してなかったからさ、英語と数学はほぼ白紙で終わった。国語と作文はそれなりだったと思うよ。

そのあとの面接試験で、ゲームのプログラムの質問されてさ、ゲームの開発用の言語は何だと思いますかって、それでわかりませんって答えて、ああ、これで試験落ちたって思ったよ。まあ旅費全額支給のタダ旅行できたからいいいやってふっきれてさ、試験終わったらその街で観光してうまいもの食って旅を満喫して帰ったのよ」


「勉強しなかったからですよ」


「そのとおりなんだよねえ」

続く
*この物語はフィクションです。実在する人物、企業、団体とは一切関係ありません。

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