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青春と入院は似ている いつか出ていく場所

中学一年生の頃、精神的におかしくなって3ヶ月間入院したことがある。入院生活中は、毎日決まった時間に起こされ、看護師さんが運んできた食事を食べて、消灯の時間が来ると薬を飲んで眠りについた。残りの時間は、検査や心理療法を受けたり、本や漫画などを読んだりして過ごしていた。

僕がいた病棟には、子供から青年ぐらいの年齢の人たちがいて、彼らは各々の病気を抱えていた。僕はそこでの記憶のおおかたを失ってしまったが、何となく現実から乖離したような、独特の緩い雰囲気だけはずっと心に残っている。僕は、病棟を出て現実の荒々しい世界に戻ることが嫌だった。その夢みたいな世界にずっと浸っていたかった。一方で、いつかはその場所を出て行かなければならないことを、何となく理解してもいた。

話は変わるが、思春期というのはある種の病気だと思う。親離れの時期を迎え、自己を過大評価する一面、自身が社会の中ではまだ未熟であるという矛盾を感じており、そこに性欲も加わって欲求不満に苦しめられ、精神は極めて不安定になる。こういった病的な状態に対する治療の場としてモラトリアムが与えられ、そのモラトリアムを人々は青春と呼ぶのだと思う。そして、青春は若者に夢を見せる。それは多くの場合、厳しい現実の世界から乖離しており、往々にして挫かれるものだ。若者はモラトリアムをいつか出ていく場所だと心の奥底で理解しており、自己治療を終えた人から順番に青春を終わらせていく。

病弱な季節が尽きたとき、人々は病院を出て大人になる。そういった、いつか出ていく場所という意味で、青春と入院生活は似ていると思うのだ。

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