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世界の片側

それまで 光ばかりを求めてきたから

わたしは 何も知らなかった 

この世界の片側を

漆黒のなかにこそ広がっていた
真の静寂も

雷鳴轟く どしゃぶり帰り道にあった
カエルたちの歓喜も

闇向かう 沈みゆく太陽は
さよならなんかじゃなく

また明日の 
おはようのための応援歌だったということも

闇という仮面をかぶり
まるで雲隠れしていた世界たち

そういうものを見逃して
いったい何を見たと言うのだろう

闇を恐れ
光ばかりを追い求めてきたから

いまやっと
ここにいて

この世界のほんとうの美しさに
ほんの少し 触れた気がした

燦燦と照らす 太陽も
色なきやさしい 真夜中も

頭上 輝く一等星も
はかなく去りゆく 流星さえも

そのすべてで かたどる

この世界を

もっと 
もっと 

味わいたい






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