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一人旅に出かけた。もう一度前を向こうと思えた。

あぁ、なんだか疲れちゃったな。

最近はこんなことばかり考えてしまっていた。

AppleWatchの振動で起きる時も、
仕事終わりに電車に揺られる時も、
茶色ばかりの夕ご飯を箸で口へ運ぶ時も。


別に仕事にも恋人にも友人にも不満があるわけではない。

でも、間違いなくこの前までの僕は、日常というものに疲弊していた。

大都会とベッドタウンの往復の生活に嫌気が差していた。


さすがにこのままでは病んでしまうと思い、月曜日に一人旅に出ることにした。

今日はそんな旅のお話をちょっとさせてほしい。


①豊川 街と人の温かさを知る

僕は今、愛知県名古屋市に在住している。

午前8時、そんな大都会を離れ、ずっと行ってみたかった愛知県豊川市へ向かった。

目的地は、日本三大稲荷の一つ豊川稲荷。

駅から参道に入ると、昭和レトロな情緒が漂う空間が広がっていた。

どのようにして経営を成り立たせているのかわからないような本屋や写真屋が並ぶ。

足をゆっくり進めながら、平成生まれなのに、昭和っぽいものを見ると懐かしいと感じるのは不思議だなと思う。

豊川稲荷の中には多くの狐がいた。

彼らに見守られながら賽銭に5円玉を投げ入れる。

少し風が吹き、僕の頬を撫でてくれた気がした。

冷たいのにどこか温かかった。

参拝を終えて駅へ向かう途中、名物のいなり寿司を食べた。

食べ歩きをしようと思っていたところ、店員さんがお茶を出すからと言って店の中へ入れてくださった。

温かいお茶を飲みながら、田舎で暮らしていたころの温かい人付き合いを少し思い出した。

久しぶりに僕の心に色味がついた。


②浜松 心の落ち着きを知る

豊川市を後にして、静岡県浜松市へ向かう。

その目的は、静岡のご当地レストランさわやかのハンバーグ。

大学時代からSNS上で話題になっていて気になっていたお店だった。

再び電車に乗って隣県へ向かう。

ちなみにこの日の旅のお供は、朝井リョウさんの『正欲』。

途中の豊橋駅で見つけ、前から気になっていたというのもあって購入した。

普段僕は文庫化した本しか買わない。

しかし、旅行中だからというよくわからない理由で、文庫本の3倍くらいの値段がする単行本を気兼ねなく買えてしまった。

そうして浜松に到着し、1時間待って食べた念願のハンバーグ。

間違いなく美味しかった。

でも美味しさ以上に、食べ物を目的にして遠くまで移動するという贅沢な行動をしていることに嬉しさを感じた。

その後はもちろん観光もした。

素敵な街だった。


そんな浜松で一番印象的だったのは人。

人口80万人を抱える都会なのに、いい意味で人が都会らしくなかった。

ボサボサの髪で全力で自転車を漕ぐ男子高校生。
化粧や制服のスカートを折ることとは無縁の女子高生。
有線のイヤホンで音楽を聴きながら電車に乗る20代の男性。

田舎出身の僕は、彼らに地元の人たちを重ねて懐かしさを感じていた。

心が落ち着いた気がした。


③岡崎 暮らしたい街の基準を知る

とあるラーメン屋に行きたくて、帰路に着く途中で愛知県岡崎市へ向かうことにした。

その乗り換えのために降りた豊橋では、最近はあまり行かなくなったスタバでフラペチーノを購入してみた。

一年ぶりくらいに飲んだ気がする。

新作が出たら飲みに行き、写真を撮ってインスタのストーリーに載せていた大学1年生の頃を思い出す。

今や写真を撮っていないことに後で気づき、飲みかけのカップを持って写真を撮っている自分に気づいて笑ってしまう。


岡崎にはまだ明るい時間帯に到着した。

夕飯までは時間があったので散歩をしてみた。

すると、すごく素敵な光景に出会えた。

京都の鴨川近くで生活していた大学時代を思い出し、涙がこぼれそうになった。

ベッドタウンに住んでいる今、日常の中で素敵な光景を見る機会がめっきり減ってしまった。

そしてそれが心を蝕んでいる一つの原因だと気づけた。

僕はこういう非日常的な日常を味わえる街で暮らしたいんだな。

そんなことを考えながら河川敷に座ってぽけーっとしていた時間は幸せだった。


街が暗闇に包まれ始めた頃、お目当てのラーメン屋へ向かう。

すると、なんと100人くらいが行列を作っていた。

さすがに心が折れて諦めたわけだけれど、素敵な光景を見れたのでまぁよしとした。


④名古屋 まだ戦いたいという気持ちを知る

そうこうして大都会名古屋へ帰ってきた。

名古屋駅では忙しなく人が行き交い、早くも都会の息苦しさを再認識する。

でも、根拠はないけどきっと今の僕なら大丈夫だと思えていた。

ご飯を済ませて入ったカラオケ店。

きのこ帝国やpeople1、PKshampooなど、誰かと行った時には歌えなさそうなマイナーな曲を惜しげもなく予約して歌った。

というより叫んだ。

溜まっていた感情を全て吐き出せた気がした。


その後の帰り道は、僕の拙い語彙力では表現できないほど気持ちいい時間だった。

イヤホンから流れていた雨のパレードの曲がこの上なく似合う夜だった。

こうして僕の一人旅は終わりを告げた。


僕には叶えたい未来がある。

でもそこにたどり着くには努力が必要で、その過程はどうしても辛いものになる。

一人で大都会とベッドタウンを往復する生活に嫌気が差す時期は何度も訪れる。

もともと心が強くない僕にとって、それはとてつもなく大きな壁となる。


でもまだここで頑張りたい。

そして遠くない未来で、今日出会ったような温かい人たちと落ち着いた心で、暮らしたい街で暮らしたい。


大丈夫、きっと大丈夫。

頭の中を旅で見た光景で埋めた夜、自信をもってこう思えた。

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